No. 3

完璧な地球エネルギーの奔流

パーフェクト・ストーム
The Perfect Storm





「パーフェクトストーム特別版」DVD ワーナー・ホーム・ビデオ)


 日本の気象庁にあたる米国気象局(NWS)は米国海洋大気庁(NOAA)の部局だが、そのNOAAは米国商務省に属する(気象庁は国土交通省)。海洋・気象関連データや研究は経済のインフラだという米国式発想か。

 NWSが発信する気象情報は米国漁業関係者にとって命綱だ。大西洋は豊かな漁場で、北東部(マサチューセッツ州やメイン州)には古い漁港が多い。
  1991年10月、ボストン郊外の港グロスターを漁船アンドレア・ゲイル号が出港した。この70フィート級漁船と6名の乗組員が百年に一度という大嵐に遭遇した。

 実際に起こったこのイベント(災害)をセバスチャン・ユンガーが小説化、その映画化が「パーフェクト・ストーム」だ。
  「パーフェクト・ストーム」は大嵐の気象学的な用語でも口承的な呼び名でもない。ユンガーが取材した気象学者がたまたま口走った絶妙な“命名”だった。

 この嵐は、北東部沿岸に10億ドルの被害と12人の死者をもたらしたが、大西洋沖合で発達したため公式な命名はなく、“91年ハロウィーン大嵐”と記録される。
  当時、米国・カナダ国境あたりに陣取った寒冷前線とカナダ南東部の非常に強い高気圧、そしてカリブ海で発生し発達しながら大西洋を北上したハリケーン・グレースが合流、巨大な嵐“パーフェクト・ストーム”を生んだ。

 映画の主題となる大いなる自然と人間の葛藤、愛・欲望は「白鯨」や「老人と海」を彷彿させる。だが、この映画の見どころは、嵐の海そのものだ。
  VFX(視覚効果技術)がつくりあげた大波はそれこそ山体崩壊のように圧倒的で、地球エネルギーが海のうねりに共振する観がある。

  映画鑑賞画面の大小にかかわらず、波高30mのすさまじさへの想像力はいやでも刺激されて……船酔い要注意!