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安保政策研究会
















最新論文!

[4324] なぜ? 負け急ぎ解散。 Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/11/12(水) 12:12 
正気の沙汰でない「負け急ぎ解散」
安保研理事長・元内閣官房副長官   浅野勝人

衆議院解散・総選挙のリークは、消費税再引き上げ先送りへの抵抗をけん制するためのブラフと思っていました。週刊誌や駅売り夕刊紙の売らんかなの「総選挙、急浮上」の大見出しは、時に見せつけられるいつもの手口程度に受け取っていました。ところが、毎日新聞や朝日新聞が一面トップで取り上げ、社説まで大真面目で俎上にのせています。一面トップで勝負したら、誤報でしたとは言い訳できません。安倍サイドのそれなりの確認なしにここまでは踏み切れまい。このところただ事ではない様相を呈しています。

大方の有権者は「衆議院選挙を弄(もてあそ)んでけしからん」と思っています。何のために総選挙をするのかさっぱりわからないからです。いったん決めた消費税再引き上げを先送りするなら、その理由をはっきり示して政策転換すればいい。なにも問題ありません。むしろ有権者は、当たり前の政策選択と思っています。異論ありとすれば、国際公約に反し、国家百年の計を誤ると主張する財務省と財務省シンパの一部政治家だけです。

そもそも一つの内閣で同じ税を短期間に二度引き上げる天を恐れぬ所業を見たことがありません。それを避けたいと考える安倍首相の姿勢に間違いはありません。
正気の沙汰ではないと申しあげるのは、「だがら衆議院選挙をする」という思考の結びつきです。総選挙の思惑の背景に「方針を転換して再引き上げを思い止まってやるから有難く心得よ」という思いが潜んでいるとしたら、それこそ思い上がりも甚だしい。多くの有権者は、今、2か月も政治空白をつくって、経済政策の推進を等閑(なおざり)にすることが許されるものかどうか考えてごらんなさいと思っています。アベノミクス、「ク」の字が欠けたらアベノミスになるかどうかの瀬戸際だと案じています。従って、いま総選挙に踏み切ったら、とんでもない計算違いをする結果になるのは必至です。
民主党のミステイクでせっかく獲得した294議席を急いで減らそうとする理由が理解できません。私たち安保研の仲間、杉浦正章が「ネット:今朝のニュース解説」で自民党は20〜30議席は減ると分析していますが、ホントにそんな程度の目減りでおさまりますかねえ。安倍さん、甘くありませんか。



[4319] ウェルサイユ便り Name:安保研常務理事:寺田輝介 NEW! Date:2014/11/10(月) 12:13 
安保政策研究会常務理事  
元メキシコ駐在大使  元韓国駐在大使    寺田輝介

「ヴェルサイユ便り」
筆者は今夏二ヵ月余りをパリ近郊ヴェルサイユ市で過ごした。
ヴェルサイユ市と言うと誰もがヴェルサイユ宮殿を連想するが、ヴェルサイユ市自体は、宮殿を中核に残存する王朝時代の建造物を巧みに取り入れた街並みを持つ、パリのベットタウンの性格が強い地方都市である。
 ここにお届けする「ヴェルサイユ便り」は、筆者が夏の間毎日読み続けた「ル・モンド」紙そしてテレビ・ラジオのニュースを通して把握したフランス外交と国内政治に関するレポートである。

―フランス外交の注目点― @
  夏に入り当国メデイアが競って報じていたのが、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエル軍とパレスチナ・ハマスとの軍事衝突であった。イスラエル軍の砲撃等により血を流している多数の婦女子のシ―ンがテレビ等に頻繁に報じられた結果、フランスではガザ地域住民に対する同情心が高まっていることが直に感じられた。暫く様子を見ていると、当国アラブ系住民がパレスチナ・シンパのフランス人を巻き込みパレスチナ連帯デモを始めたが、同時併行的にイスラエル支持デモも行われ、両者の激突の場面が見られた。欧州各地でもパレスチナ連帯デモが行われていたが、イスラエル支持デモが催されたのは当国のみであった。パレスチナ問題は、フランスのユダヤ系社会とアラブ系社会を直接刺激し国内問題化する為、フランス外交にとり舵取りが難しい問題であることを具体的に示す事例であった。

 夏を通して欧州国民に深刻なインパクトを与え続けてきたのは、悪化の一路を辿るウクライナ情勢であった。プーチン政権がクリミア半島を奪取した時欧州国民は一様に反撥したが、いざ欧州連合(EU)が制裁を課する段階になると、EU内で制裁実施をめぐり温度差がかなり大きいことが明らかになった。あくまでロシアと「対話」を求める独、仏、伊等に対し、ロシアと国境を接している上、嘗て旧ソ連邦の支配下にあったポーランド、バルト三ヵ国は強く反撥し、対ロシア「強硬路線」を求めた。EUの足並みが乱れていた時に起きたのが、7月17日のマレイシア航空機撃墜事件であった。撃墜事件の衝撃の大きさから、EUのロシアに対する制裁は当然一本に纏まると思われたが、具体的制裁措置を検討するEU外相会議がいざ開かれてみると(7月22日)、当初コンセンサスを妨げたのが「フランス問題」であった。フランスのサルコジ政権時代に成約したロシア向け大型強襲揚陸艦二隻の取り扱いが障害となったのである。あくまで引き渡しの凍結を求めるEU各国に対し、フランスは国内の雇用悪化を口実に、今回の制裁措置実施前に契約し完工した一隻分は例外とし、建造中の二隻目を制裁の対象とすることを主張した。国民もこれを支持した。最終的にはフランスの言い分が通ったが、筆者の目にはフランス外交の粘り勝ちと映ると同時に、改めてフランスのしたたかな外交力を感じさせられた。しかしながら、8月に入るとウクライナ東部の親ロシア派武装集団にプーチン政権が密かに兵員、武器、弾薬等の援助を継続していることが偵察衛星の写真等で明らかになり、フランスの外交的勝利とも言える艦艇売却問題が大きく影響を受けることになる。フランス外交の動きをよく見ていると、フランス政府は9月上旬に開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でウクライナ問題が最重要議題になり、艦艇売却問題が俎上に載せられると予想していたようで、首脳会議の直前(9月3日)、大統領府は「(ロシアのウクライナ介入は)欧州の安定を脅かしている。(大型強襲揚陸艦の)引き渡し条件は整っていない」と発表した。絶妙なタイミングでなされた政府声明は、フランスは経済的利益を犠牲にしてまでもEUの「共同益」を守る意思を示したとして、先の外相会議の場における不評を払拭し、EU各国の高い評価を勝ち取った。ここにも機を見るに敏なフランス外交の柔軟性が感じられた。
 
一方制裁を受けたプーチン政権は、8月に入るとEU等に対し農産物の輸入制限で対抗してきた。ロシアの対抗措置は、EUの中でもポーランド、ドイツ及びフランスにかなりの打撃を与えており、フランスの場合損失は約10億ドルに及ぶとされ、直撃を受け苦悩する農民の姿を報ずる記事が多く見られるようになった。
 ウクライナ問題は、制裁措置をめぐって当初EU内の足並み乱れを曝け出したが、プーチン政権の飽くなきウクライナ干渉がEUの結束を促進する一助となった。しかし夏が終わり、冬を迎える時期になれば、EUに対する天然ガス供給問題が浮上してくる。そうなるとロシアのガスに依存している国と非依存国との間に対ロシア政策をめぐり不協和音が生じるであろう。非依存国のフランスは如何なる態度をとるであろうか。この様な状況をプーチン政権が見逃す筈がない。硬軟取り混ぜた外交攻勢を仕掛け、EUの分断を図るのではないか。遠く離れた日本も目を離せない状況が続く。そしてウクライナ問題は混迷の度合いを一段と深めて行く。(2014/9月8日 記)


―フランス外交注目点― A
 当地でフランス外交を見守っていて気が付いたことは、フランスがドイツに並々ならぬ注意と関心を払っている姿である。ヴェルサイユ滞在中筆者が読み続けた「ル・モンド」紙を例にとっても、ドイツについてはよく記事がでるものの、英国或いはイタリア、スペイン等に関する記事は少ない。同紙を通しても、フランスはドイツに「経済大国」の地位を不承不承認めつつも、EU内では「外交大国」、「軍事大国」の座を死守するとのメセージが伝わってくる。
7月22日付「ル・モンド」が報じたEU委の主要ポストをめぐる仏独の利害対立を報じた記事は興味深いものであった。簡単に紹介すると、フランス政府がEU委員長の交代に伴い、モスコヴィチ元蔵相をEU委経済金融委員に推薦し、EU内の地歩を固めようとしたところ、ドイツ政府がオランド政権の蔵相として「GDP比3%」への財政赤字圧縮目標を達成で出来なかった政治家にEUの経済・金融を任せられるかと、強硬に反対していると報じた記事であった。

さて、フランスが「外交巧者」であることは、既に見てきたところであるが、「軍事大国」ぶりは何処で見られるのであろうか。
7月17日から19日までオランド大統領は駆け足で象牙海岸、ニジェール、チャドの三ヵ国を訪問した。日本では話題にのぼらなかった訪問であったと思われるが、この訪問は、実はフランスのアフリカにおける戦略的展開、具体的には、アフリカ・サハラ以南の五カ国を中核とし、イスラム過激派の南下を阻止することを目的とする集団安保体制の構築を目指すものであった
アフリカの地図を広げてみると、北アフリカのアルジェリア、リビアの南部からサハラ砂漠が拡がり、旧仏領モーリタニア、マリ、ニジェール、チャドに繋がっていることが分かる。リビアのカダフィ独裁政権の崩壊後、南部リビアからサハラ砂漠を抜け、大西洋に向かう「砂漠ハイウエー」が出現、武器、麻薬、不法移民、イスラム過激派の通り道になったと言われている。オランド政権は、イスラム過激派がこの「砂漠ハイウエー」を使い、旧フランス領アフリカに浸透することを防ぐため、サハラ以南の旧仏領五ヵ国(モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナ・ファソ)を取り込み、フランスも総兵員3,000名のテロ対策部隊を現地に分散常駐せしめ、以てアフリカ版「マジノ・ライン」とも称すべきサハラ以南防衛線の構築を決定したのである。この決定の背景には、旧植民地に埋蔵されている地下鉱物資源、特にウラニウムをフランスのために確保するとの思惑が秘められていることは言うまでもない。
フランスの対アフリカ戦略的展開は、EUの「経済大国」を自任するドイツが到底執りえない戦略であるが、フランスの軍事力には国力から見て物理的限界がある。7月14日付「フィガロ」紙が、陸軍参謀長は「国軍は120%の能力を出し切っている」旨発言したと報じていることは、フランスの「軍事大国」の限界を示す一例である。
(2014/9月8日 記)

 −混迷するフランスの内政―
久方振りにフランスに来て驚かされたことは、会うフランス人が異口同音にオランド大統領の悪口を言うことであった。大統領の不人気の最大の理由はフランス経済の不振である。具体的数字を見てみよう。2014年に入って、第1、第2四半期とも経済成長率はゼロ、失業率は10%を超え、失業者は12万人の増、民間投資はマイナス0.8%。まさに経済は八方塞がりである。フランス人に言わせると、大統領は口先ばかりで信用できない。就任以来2年も経ったのに、具体的成果を何も出していないと言うことに尽きるようである。

今年の夏は冷夏であったが、政治的には予想外の「熱い夏」であった。本年4月オランド大統領は、不人気を挽回すべく、前内閣で内務大臣として国民的人気があったマヌエル・バルスを首相に任命した。バルス首相は4月の施政方針演説で、法人税の減税に加え、来年以降3年間で500億ユーロ(約7兆円)の歳出削減を公約し、経済再建の方途を国民に示した。しかし経済再建策をめぐって与党社会党の中でかねてより路線の対立があった。然るにモントブール経済・生産力再建相は、8月24日の「ル・モンド」紙とのインタヴユーの中で、バルスの再建策はドイツ、EU委の意向を受けた財政緊縮策であるとして見直しを求め、公然と叛旗を翻した。モントブールは社会党左派に属するが、彼の見方によればユーロ・ゾーンの財政赤字削減を柱とする「耐乏政策」では経済成長を確保できぬ、政策変更をしないと、有権者は右翼政党「国民戦線」に走ると言う。モントブール発言はバカンス中の政界に強烈な衝撃を与えた。バルスの受けた衝撃が如何に大きなものであったかは、翌25日に大統領に内閣総辞職を申し出たことからも明らかである。しかしホランド大統領はバルスに新たな組閣を命じ、財政再建路線を堅持する方針を示した。組閣は急ピッチで進み、第ニ次バルス内閣は早くも26日には誕生した。新内閣はオランド・バルス路線の支持者のみで固められた。

第二次バルス内閣の前途は多難である。社会党内の強力な左派がモントブールを先頭に、オランド・バルス路線に強く反対していることから、下院で総議席のうち過半数を1議席上回る290議席しか有しない社会党にとり、議会運営は一段と厳しくなる。
国民のバルス政権を見る目も次第に厳しくなりつつある。第一次内閣発足時41%あった世論の支持率も、9月上旬には31%にまで下った。オランド大統領の不人気は目を覆いたくなる程である。2012年5月の大統領当選時58%を得た支持率が、本年9月上旬には13%にまで低落した。経済の不調に加え、大統領の前パートナーの女性の書いた私生活暴露本が支持率激落に追い打ちをかけたことは間違いない。フランスの大統領制度の下では、大統領は任期を全うするまで職に留まることが出来る。しかし第二次バルス内閣が短期間で経済面での成果を出せない場合、オランド大統領の執れるオプションは限られている。議会解散か内閣改造である。政局の混迷は必至である。フランスはこれから「厳寒の冬」を迎えることになる。



――9月に入るとヴェルサイユ市の表情もすっかり変ってきた。バカンス中の閑静な街が、子供達であふれ、活気を取り戻してきた。そろそろヴェルサイユ市に暇を告げる時が来たようである。――ヴェルサイユにて。2014・9・8記。



         
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安保政策研究会常務理事  
元メキシコ駐在大使  元韓国駐在大使    寺田輝介

「ヴェルサイユ便り」
筆者は今夏二ヵ月余りをパリ近郊ヴェルサイユ市で過ごした。
ヴェルサイユ市と言うと誰もがヴェルサイユ宮殿を連想するが、ヴェルサイユ市自体は、宮殿を中核に残存する王朝時代の建造物を巧みに取り入れた街並みを持つ、パリのベットタウンの性格が強い地方都市である。
 ここにお届けする「ヴェルサイユ便り」は、筆者が夏の間毎日読み続けた「ル・モンド」紙そしてテレビ・ラジオのニュースを通して把握したフランス外交と国内政治に関するレポートである。

―フランス外交の注目点― @
  夏に入り当国メデイアが競って報じていたのが、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエル軍とパレスチナ・ハマスとの軍事衝突であった。イスラエル軍の砲撃等により血を流している多数の婦女子のシ―ンがテレビ等に頻繁に報じられた結果、フランスではガザ地域住民に対する同情心が高まっていることが直に感じられた。暫く様子を見ていると、当国アラブ系住民がパレスチナ・シンパのフランス人を巻き込みパレスチナ連帯デモを始めたが、同時併行的にイスラエル支持デモも行われ、両者の激突の場面が見られた。欧州各地でもパレスチナ連帯デモが行われていたが、イスラエル支持デモが催されたのは当国のみであった。パレスチナ問題は、フランスのユダヤ系社会とアラブ系社会を直接刺激し国内問題化する為、フランス外交にとり舵取りが難しい問題であることを具体的に示す事例であった。

 夏を通して欧州国民に深刻なインパクトを与え続けてきたのは、悪化の一路を辿るウクライナ情勢であった。プーチン政権がクリミア半島を奪取した時欧州国民は一様に反撥したが、いざ欧州連合(EU)が制裁を課する段階になると、EU内で制裁実施をめぐり温度差がかなり大きいことが明らかになった。あくまでロシアと「対話」を求める独、仏、伊等に対し、ロシアと国境を接している上、嘗て旧ソ連邦の支配下にあったポーランド、バルト三ヵ国は強く反撥し、対ロシア「強硬路線」を求めた。EUの足並みが乱れていた時に起きたのが、7月17日のマレイシア航空機撃墜事件であった。撃墜事件の衝撃の大きさから、EUのロシアに対する制裁は当然一本に纏まると思われたが、具体的制裁措置を検討するEU外相会議がいざ開かれてみると(7月22日)、当初コンセンサスを妨げたのが「フランス問題」であった。フランスのサルコジ政権時代に成約したロシア向け大型強襲揚陸艦二隻の取り扱いが障害となったのである。あくまで引き渡しの凍結を求めるEU各国に対し、フランスは国内の雇用悪化を口実に、今回の制裁措置実施前に契約し完工した一隻分は例外とし、建造中の二隻目を制裁の対象とすることを主張した。国民もこれを支持した。最終的にはフランスの言い分が通ったが、筆者の目にはフランス外交の粘り勝ちと映ると同時に、改めてフランスのしたたかな外交力を感じさせられた。しかしながら、8月に入るとウクライナ東部の親ロシア派武装集団にプーチン政権が密かに兵員、武器、弾薬等の援助を継続していることが偵察衛星の写真等で明らかになり、フランスの外交的勝利とも言える艦艇売却問題が大きく影響を受けることになる。フランス外交の動きをよく見ていると、フランス政府は9月上旬に開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でウクライナ問題が最重要議題になり、艦艇売却問題が俎上に載せられると予想していたようで、首脳会議の直前(9月3日)、大統領府は「(ロシアのウクライナ介入は)欧州の安定を脅かしている。(大型強襲揚陸艦の)引き渡し条件は整っていない」と発表した。絶妙なタイミングでなされた政府声明は、フランスは経済的利益を犠牲にしてまでもEUの「共同益」を守る意思を示したとして、先の外相会議の場における不評を払拭し、EU各国の高い評価を勝ち取った。ここにも機を見るに敏なフランス外交の柔軟性が感じられた。
 
一方制裁を受けたプーチン政権は、8月に入るとEU等に対し農産物の輸入制限で対抗してきた。ロシアの対抗措置は、EUの中でもポーランド、ドイツ及びフランスにかなりの打撃を与えており、フランスの場合損失は約10億ドルに及ぶとされ、直撃を受け苦悩する農民の姿を報ずる記事が多く見られるようになった。
 ウクライナ問題は、制裁措置をめぐって当初EU内の足並み乱れを曝け出したが、プーチン政権の飽くなきウクライナ干渉がEUの結束を促進する一助となった。しかし夏が終わり、冬を迎える時期になれば、EUに対する天然ガス供給問題が浮上してくる。そうなるとロシアのガスに依存している国と非依存国との間に対ロシア政策をめぐり不協和音が生じるであろう。非依存国のフランスは如何なる態度をとるであろうか。この様な状況をプーチン政権が見逃す筈がない。硬軟取り混ぜた外交攻勢を仕掛け、EUの分断を図るのではないか。遠く離れた日本も目を離せない状況が続く。そしてウクライナ問題は混迷の度合いを一段と深めて行く。(2014/9月8日 記)


―フランス外交注目点― A
 当地でフランス外交を見守っていて気が付いたことは、フランスがドイツに並々ならぬ注意と関心を払っている姿である。ヴェルサイユ滞在中筆者が読み続けた「ル・モンド」紙を例にとっても、ドイツについてはよく記事がでるものの、英国或いはイタリア、スペイン等に関する記事は少ない。同紙を通しても、フランスはドイツに「経済大国」の地位を不承不承認めつつも、EU内では「外交大国」、「軍事大国」の座を死守するとのメセージが伝わってくる。
7月22日付「ル・モンド」が報じたEU委の主要ポストをめぐる仏独の利害対立を報じた記事は興味深いものであった。簡単に紹介すると、フランス政府がEU委員長の交代に伴い、モスコヴィチ元蔵相をEU委経済金融委員に推薦し、EU内の地歩を固めようとしたところ、ドイツ政府がオランド政権の蔵相として「GDP比3%」への財政赤字圧縮目標を達成で出来なかった政治家にEUの経済・金融を任せられるかと、強硬に反対していると報じた記事であった。

さて、フランスが「外交巧者」であることは、既に見てきたところであるが、「軍事大国」ぶりは何処で見られるのであろうか。
7月17日から19日までオランド大統領は駆け足で象牙海岸、ニジェール、チャドの三ヵ国を訪問した。日本では話題にのぼらなかった訪問であったと思われるが、この訪問は、実はフランスのアフリカにおける戦略的展開、具体的には、アフリカ・サハラ以南の五カ国を中核とし、イスラム過激派の南下を阻止することを目的とする集団安保体制の構築を目指すものであった
アフリカの地図を広げてみると、北アフリカのアルジェリア、リビアの南部からサハラ砂漠が拡がり、旧仏領モーリタニア、マリ、ニジェール、チャドに繋がっていることが分かる。リビアのカダフィ独裁政権の崩壊後、南部リビアからサハラ砂漠を抜け、大西洋に向かう「砂漠ハイウエー」が出現、武器、麻薬、不法移民、イスラム過激派の通り道になったと言われている。オランド政権は、イスラム過激派がこの「砂漠ハイウエー」を使い、旧フランス領アフリカに浸透することを防ぐため、サハラ以南の旧仏領五ヵ国(モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナ・ファソ)を取り込み、フランスも総兵員3,000名のテロ対策部隊を現地に分散常駐せしめ、以てアフリカ版「マジノ・ライン」とも称すべきサハラ以南防衛線の構築を決定したのである。この決定の背景には、旧植民地に埋蔵されている地下鉱物資源、特にウラニウムをフランスのために確保するとの思惑が秘められていることは言うまでもない。
フランスの対アフリカ戦略的展開は、EUの「経済大国」を自任するドイツが到底執りえない戦略であるが、フランスの軍事力には国力から見て物理的限界がある。7月14日付「フィガロ」紙が、陸軍参謀長は「国軍は120%の能力を出し切っている」旨発言したと報じていることは、フランスの「軍事大国」の限界を示す一例である。
(2014/9月8日 記)

 −混迷するフランスの内政―
久方振りにフランスに来て驚かされたことは、会うフランス人が異口同音にオランド大統領の悪口を言うことであった。大統領の不人気の最大の理由はフランス経済の不振である。具体的数字を見てみよう。2014年に入って、第1、第2四半期とも経済成長率はゼロ、失業率は10%を超え、失業者は12万人の増、民間投資はマイナス0.8%。まさに経済は八方塞がりである。フランス人に言わせると、大統領は口先ばかりで信用できない。就任以来2年も経ったのに、具体的成果を何も出していないと言うことに尽きるようである。

今年の夏は冷夏であったが、政治的には予想外の「熱い夏」であった。本年4月オランド大統領は、不人気を挽回すべく、前内閣で内務大臣として国民的人気があったマヌエル・バルスを首相に任命した。バルス首相は4月の施政方針演説で、法人税の減税に加え、来年以降3年間で500億ユーロ(約7兆円)の歳出削減を公約し、経済再建の方途を国民に示した。しかし経済再建策をめぐって与党社会党の中でかねてより路線の対立があった。然るにモントブール経済・生産力再建相は、8月24日の「ル・モンド」紙とのインタヴユーの中で、バルスの再建策はドイツ、EU委の意向を受けた財政緊縮策であるとして見直しを求め、公然と叛旗を翻した。モントブールは社会党左派に属するが、彼の見方によればユーロ・ゾーンの財政赤字削減を柱とする「耐乏政策」では経済成長を確保できぬ、政策変更をしないと、有権者は右翼政党「国民戦線」に走ると言う。モントブール発言はバカンス中の政界に強烈な衝撃を与えた。バルスの受けた衝撃が如何に大きなものであったかは、翌25日に大統領に内閣総辞職を申し出たことからも明らかである。しかしホランド大統領はバルスに新たな組閣を命じ、財政再建路線を堅持する方針を示した。組閣は急ピッチで進み、第ニ次バルス内閣は早くも26日には誕生した。新内閣はオランド・バルス路線の支持者のみで固められた。

第二次バルス内閣の前途は多難である。社会党内の強力な左派がモントブールを先頭に、オランド・バルス路線に強く反対していることから、下院で総議席のうち過半数を1議席上回る290議席しか有しない社会党にとり、議会運営は一段と厳しくなる。
国民のバルス政権を見る目も次第に厳しくなりつつある。第一次内閣発足時41%あった世論の支持率も、9月上旬には31%にまで下った。オランド大統領の不人気は目を覆いたくなる程である。2012年5月の大統領当選時58%を得た支持率が、本年9月上旬には13%にまで低落した。経済の不調に加え、大統領の前パートナーの女性の書いた私生活暴露本が支持率激落に追い打ちをかけたことは間違いない。フランスの大統領制度の下では、大統領は任期を全うするまで職に留まることが出来る。しかし第二次バルス内閣が短期間で経済面での成果を出せない場合、オランド大統領の執れるオプションは限られている。議会解散か内閣改造である。政局の混迷は必至である。フランスはこれから「厳寒の冬」を迎えることになる。



――9月に入るとヴェルサイユ市の表情もすっかり変ってきた。バカンス中の閑静な街が、子供達であふれ、活気を取り戻してきた。そろそろヴェルサイユ市に暇を告げる時が来たようである。――ヴェルサイユにて。2014・9・8記。



日中合意文書!
 Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/11/08(土) 16:30 
閑話休題:友とのメール、その後
遠路はるばる来ましたねえ!

朝刊で日中首脳会談に伴う合意文書をみました。アレっと思ったのは、過日、貴兄が送ってくれた北京大学講義録の内容と似通っているように思ったからです。確か9月の中旬だったと記憶していましたのでmailを探して見付けました。読み返してみて、基本理念が同じでした。表現まで似ています。「日中首脳は、相互の見解の相違を認め合って率直に話し合うべきだ」と講義で述べた思考が、まるで合意文書に踏襲されているような錯覚を覚えました。これは、貴君の予測が的中したということですか。それとも、長期のにらみ合いに区切りをつけるためには、「コレしかない」ということですか。

私は、APECに各国首脳を北京に呼んでおいて、あの人とは会うが、この人とは会わないというような非礼な振る舞いは避けるはずだと思っていました。ですから、日中首脳会談はやるにはやるが、どんな形式で、どの程度まで双方の問題意識に触れるか、水面下の事前折衝が気がかりでした。合意文書は満点ではないかもしれませんが、今の時点としては極めて常識的な線に落ち着いた的確な内容と評価します。いかがでしょう。
それにしても、ここまで来るのにすいぶんと手間暇のかかるものですねえ。時間の浪費をもっと改善出来ないものかとイライラします。相互不信感のなせる業(わざ)でしょうから、それを思うとこの先どうなることやら案じられます。   (2014/11月8日、吉川英明)




相変わらず冴えていますねえ!
 

私が言ったら自慢話に聞こえてしまいそうでまずい事柄をズバリと指摘していただきました。相変わらず冴えていますねえ。確かに大好きな競馬の3連単馬券を一点買いで当てたみたいないい気分ですが、それは違います。あなたの見解通り、今の時点で日中首脳会談をやるとしたらコレしかなかったからだと思います。
 

かねて、私は「尖閣列島に領有権問題は存在しない」という政府の方針に逆らって、「見解の相違を認めよ」と右翼から中国の代弁者と糾弾される主張を繰り返し指摘してまいりました。その理由は中国側の動機が何であれ、現に言い分が食い違っている以上、それを認めたうえで問題を解決する方策を探るしかないと考えたからです。そのためには「日中検討委員会」を設置して相違点の話し合いから始めないと、最後は武力に訴えて解決する以外に途がなくなってしまいます。力による喧嘩は嫌だから“世の中の常識”を説いただけのことです。幸い、APECというタイムリミットがありましたから、日中の国家指導者は国内世論を説得する好機ととらえるのに好都合でした。政治家ならこれも常識です。
 

だから、9月の北京大学の講義で「日中間には重要な四つの政治文書がありますが、なかでも日中平和友好条約の原点に立ち返る必要を感じます。今こそ、不幸な歴史に終止符を打ち、未来に向かって友好善隣を誓約した36年前の昭和天皇と?小平の会見に思いを深くする時です。日中両首脳は、相互の見解の相違を認め合って率直に語り合うべきです。APECは、二人がアジア・太平洋地域の真のリーダーであることを示すうってつけの機会です」と述べた際、学生たちから熱烈な拍手を受けました。北京大学の学生のレベルは高い。
 

合意文書に対して、大騒ぎしてこんな程度かと言われるかもしれませんが、この時期の合意としては極めて重要です。これによって、さまざまな問題を抱える各分野の日中協力の話し合いが再出発できるからです。
 事前交渉の黒子は、谷内正太郎国家安全保障局長です。私が外務副大臣の折の事務次官でした。彼は、奇を衒(てら)わない、基本に忠実な外交官で、信頼出来る人物です。
 APECがはじまると、北京はオバマ一色になりますが、気にすることはありません。 ( 同日、浅野勝人 )

<註> 吉川英明氏は、文豪・吉川英治の長男。吉川英治記念館館長。浅野と吉川は、半世紀前、NHKで同期の記者。



サハリン慕情 Name:浅野勝人 誤報は歴史の全てを消してはくれない! Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/09/15(月) 00:45 
安保政策研究会  理事長・浅野勝人

「宝塚山中に伊藤律氏―本社記者が会見  無精ヒゲ、鋭い眼光 
“潜伏の目的は言えぬ”」1950年9月27日、朝日新聞朝刊、三面中央に掲載された伊藤律の顔写真、会見場所の地図入りの記事です。

 記事は「目隠しをされて乗せられた車は、石ころの多い山道を約二十分登って停車。宝塚山中の茂った松林に月光が流れる。下から人の登ってくる気配がした。月明りはその男の顔をまともに照らしている。無精ヒゲをはやしほおは疲れて落ち込んでいるが眼光は鋭い。幾分四角の顔つき、確かに伊藤律氏だ。時刻は午前三時半である。」と臨場感あふれる「神戸発」の会見記は一問一答が続きます。
 
 これは、レッドパージ(共産党幹部の追放)に伴って逮捕状が出されたため、地下に潜った日本共産党幹部の一人、伊藤律と会見した特ダネ記事です。捜査当局が血眼になって追及して捕まらない人物との単独会見記ですから「伊藤氏現るの報に当局、緊急手配」の記事が続きます。

 ところが、なんとも架空の捏造、神戸支局記者の作文でした。誤報というよりまるっきりインチキの虚報。朝日新聞は、三日後に社告で謝罪して記事を取り消しました。捏造記事を書いた記者は特ダネが欲しかったと心の内を明かしました。縮刷版を見ると、関連記事を含めて7段白く塗りつぶし、「(お断り)ここに掲載された伊藤律氏との会見記は事実無根と判明したので全文を削除しました」とあります。
 
 
 
 慰安婦狩りをしたとウソを述べた「吉田清治証言」を丸呑みした戦時慰安婦問題に関する誤報。命令に違反して撤退と断じた東京電力福島第一原発事故に関わる「吉田所長調書」をめぐる誤報。自分でサンゴを傷付けて捏造報道した「サンゴ落書き虚報」は、「まぼろしの伊藤律会見記」を含めて、いずれも朝日新聞の専売特許です。朝日には欠落している何かがあるのではないかと思ってしまいます。私の知る朝日の記者は、A君もB君もC君もみんな早稲田や東大の秀才ですが、社会人として礼儀をわきまえた常識人ばかりです。しかし、思えば、誤ったエリート臭ぷんぷんの鼻持ちならない記者も朝日に圧倒的に多かったように記憶します。自分は誰よりも頭が良くて、自分の見解は絶対に正しい。だから他社に優る特ダネを書くのは自分しかいないという思い上がった朝日特有の傲慢(ごうまん)さが産み落とした誤報、虚報ではないでしょうか。
 
 
 報道の自由は、不偏不党をかざして中立公正を求め、是々非々の立場で「権力と対峙」するから認められている権利です。その際、忘れてはならことは、強い責任感と高い倫理観を担保に保証されているという点です。この必要にして絶対条件をないがしろにした報道は、ジャーナリズムであることの放棄を意味します。これは、NHK政治記者、解説委員として20年、国会議員、政府高官として20年、取材する側と取材される側両方の体験から学んだ真理です。
 
 
 記者会見で「政府が右と言っていることを左とは言えない」と言ったNHK会長の発言は、誤報、虚報とは次元の異なる報道機関とは何かを理解していない別の問題です。
 
 
 迷惑千万なのは、両吉田誤報の騒ぎによって、戦時下の慰安婦問題、原発の再稼働可否をめぐるエネルギー問題に別の視点、いわば格好の議論のタネを提供してしまい、本質論を見失しなわせてしまう情況を生んだことです。

 朝日が犯した大罪は、自らの体質を改める血のにじむ努力を伴うのは当然の義務です。合わせて、誤報が戦時慰安婦問題に与えた影響について、今後、世界に十分間違いを認識してもらう努力は欠かせません。但し、もっと重要な視点は、誤報に委縮して自信を失い、人道問題から目を逸(そ)らす要因にすることを許したら世界の信頼を改めて失うことになります。これは朝日に百叩きの刑を科することとは別の問題です。だから、私は監視の意味を込めて、朝日新聞の購読を続けます。

 
 翻って、戦時下の慰安婦問題が再燃したのは、旧日本軍が強制、管理に関与したかどうかを調査すべきだという指摘に端を発しています。反語として、軍の関与はなかったから、関与を前提にしている「河野談話」(1993年8月4日、戦時慰安婦に対して反省とお詫びを表明した宮沢内閣河野洋平官房長官談話)の根幹に誤認があると示唆しています。主として、自民党右派と維新の会の主張です。朝日の「慰安婦狩り」記事撤回で鬼の首でも取ったかのようで、案の定、それみたことかの合唱です。
 
 
 そもそも、慰安所の設置や慰安婦の扱いについて、当時、強制連行・管理した詳細を記録に残す軍人ないしは軍属がいたとは到底思われません。そんな事実が判明したら軍の権威は失墜し、後々に計り知れない汚点を残す結果となります。もし、仮に正直に記録していた軍関係者がいたとしても、敗戦が色濃くなった状況下では、秘密書類の中でも真っ先に焼却・処分して撤退するのが軍の常識です。一番知られたくない文書だからです。従って、戦後70年経った現在、改めて調査してみたところで証拠となる文書を見つけるのは困難でしょう。

 
 「河野談話」をまとめる段階で、韓国側とすり合わせをしたかどうかを問題視する感覚についてです。
 およそ外交文書、外交上の重要文書を関係当事国同士が水面下で折衝を繰り返してまとめあげるのは常識です。共同声明作りが、下準備の事務レベル交渉の段階で決裂して発表されなかった例は幾らもあります。「河野談話」は日本政府の声明ですから、確かに韓国側と事前折衝をする類の文書にはなじまないという指摘が的はずれだとは決めつけられません。しかし、問題を解決して沈静化させるための声明ですから、発表して事態が却ってこじれてしまったのでは声明の意味がありません。仮に、内々、韓国側の了解を求めた経緯があったとしても当然の外交的思慮と言って差支えないと考えます。

 
 過日、日中戦争の発端となった北京市郊外の盧溝橋に足をのばし、合わせて「中国人民抗日戦争記念館」を見学してきました。日本軍の残虐行為を嫌と言うほど見せつけられるものと覚悟して入館しましたが、赤軍(中国共産党軍)の膨大な資料に埋め尽くされていて、日本軍の関係にはわずかなスペースを割いているだけでした。ただ、数枚の写真のなかに慰安所を見回る日本軍人、慰安所の設置や慰安婦の扱いに批判があるので慎重にするよう注意を促す日本軍の内部文書が展示されていました。分りやすく言うと軍の関与を示唆する公文書です。ちょうど夏休みで、バスを連ねて大勢の小学生が見学に来ていましたので、余計に気になったのは、南京事件で百人斬りを競った二人の軍人が日本刀をかざして得意満面で立っている大きな特ダネ写真を掲載した東京日日新聞の報道でした。
 
 
 
 もう、アジア基金によって、償い事業の終了したことですから、改めて引き合いに出したくありませんが、日本軍占領下のインドネシアで起きた「白馬事件」があります。17才から28才のオランダ人女性35人を民間人抑留所からスマラン市内の四か所の慰安所に強制連行した事件です。戦後、連合国によるB、C級軍事法廷で裁かれ、責任者の陸軍少佐は死刑。軍人、軍属11人が有罪になっています。罪名は強制連行、強制売春、強姦罪です。白馬の意味をここで書く勇気は、私には 到底 ありません。1994年のオランダ政府の報告書には、200〜300人のオランダ女性がインドネシア各地の慰安所に連行されたとあります。

 
 誠に残念ですが、オランダ人女性の尊厳を踏みにじった強制的行為が、中国やその他の地域ではなかったとは考えにくい。誤報は、朝日新聞の権威を失墜させましたが、歴史の事実を塗り替えることにはなりません。
滋賀県知事選挙! Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/07/14(月) 22:46 
実(げ)に恐ろしきは有権者!
安保政策研究会 理事長  浅野勝人

見渡せば 鷹ばかり住む 寒い朝

去年(2013年)元旦、安倍内閣最初の元日。元自民党国会議員、元内閣官房副長官として長期安定政権を願う立場から、政権がいわゆる右寄り政策に前のめりするのを懸念して詠んだ句です。
滋賀県の知事選挙。予想を超える有権者のしっぺ返しの速さに驚きました。いや、驚いてはいけません。予想通りの有権者の反応と受け止めた方が妥当と理解すべきです。

特定秘密保護法、消費税増税、公共料金・保険料実質値上げ、それに伴う巧妙な便乗値上げ、極めつけは集団的自衛権の強権的決定と続くと、自民党に投票した人が「こんなつもりで信任投票したんじゃない」と考え込んでしまうのも無理からぬ思いがいたします。
それにも拘わらず、これまで安部内閣の支持率がさほど落ちなかった理由(わけ)はふたつあります。ひとつは中国と韓国の反日政策。もうひとつは政権の受け皿がない事。私は「野党の不在に安住するな」とたびたび指摘してきましたが、行き過ぎた中国封じ込め外交政策の主導と強権的政治手法に有権者がイエローカードを突きつけたのが滋賀の結果でしょう。放置するとレッドカードに変質します。

特に集団的自衛権については、私は個人の見解として、かねてから政府案と似た縛りの厳しい限定的容認論「日本型集団的自衛権」構想を明らかにしてまいりました。政府案は「浅野式元祖限定論」の特許侵害です。従って、安倍首相と同じ立場の見解です。ただ、決定的な違いは、憲法改正を当然の前提としていました。憲法で「出来ない」と明言してきたことを「出来る」とコペルニクス的転換をするのですから、憲法の規定(96条)に従って、改正案を国民投票か、総選挙に明示して、審判を受けるのが議会制民主主義のノーマルな手順だと思っていました。それを無視して閣議で決めたから新しい憲法解釈に従いなさいという手法は、国民の目には「危険極まりない独善」と映ります。

安部首相が、戦後のアンジャンレジュームからの脱却を真剣に思ったのなら、はじめから「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と決めつけた9条2項を「自衛権を尊重する」という趣旨のソフトな規定にあらためて、正面から信を問う姿勢を貫いておれば、過半数の国民の支持を得られたのではないでしょうか。拙速は、せっかくの安定勢力を危うくしかねないことに気付くべきです。

世界で初めて「政党論」( POLITICAL PARTIES )を発表したフランスの政治学者、モールス・デュベルジェ教授は「右寄りの政権の政策は左にぶれ、左寄りの政権は右にぶれる。これが政党政治の最大の利点」といっています。
デュベルジェ教授の正論を無視して、右寄りの政権がいっそう右に振れるのを止める政治勢力が存在しない現状を誰が是正するのか。有権者なのか、政権自らか、滋賀県知事選挙は本質的命題を最初に突き付けました。(2014/7・14)
実(げ)に恐ろしきは有権者!
―岡目八目― いでよ10代の天才選手!
安保研理事長    浅野勝人

政局の見通しについて、知り抜いているはずの政治評論家よりもエコノミストの発言が的中することがよくあります。逆に経済動向の予測について経済専門家よりも政治評論家の感が的中するケースが少なくありません。

自分の経験でいいますと、国会議員だった2000年に「そんなに遠くなく日中貿易が日米貿易を凌駕する」と述べて、経済専門家の失笑をかいました。理由を問われて「直感です」と述べたことにもよります。ところが、2004年にその通り実現してしまったら、4兆円の香港貿易が加算されているので正確ではないと指摘されました。2007年に香港を除いて日中の総額が日米を追い抜いたら誰も何も言いませんでした。
これを昔から「岡目八目」と言います。シロウトの目は様々入り組んだ専門知識にとらわれない率直な視線で捉えますから意外に鋭い。社会経験豊かなシロウトの意見を軽くみると痛い目にあいます。

外交安保通の財政素人の予測を一席申しあげます。
アベノミクス!「ク」の字が欠けたらアベノミスとは某紙の川柳選集の一句です。だから、素人の目は怖いと申しあげたのです。当たる懸念があるからです。
アベノミクスの成否は株価で測られます。分りやすいからです。
企業業績はたいへん好調なのに株価はいっこうにパットしません。黒田節を幾ら唸っても釣られて踊る人はいません。
理由は明快です。株式の投資益、投資信託を含む配当への課税が高すぎるため、内外の投資家の日本株への投資意欲が湧かないからです。今年1月1日から税率を10%あげて20%にしました。税を取る側は、もともと20%だった税率を市場活性化のため10%おまけして半分にしてやった暫定措置を元に戻しただけと説明します。説明に誤りはありません。ところが、取られる側は、10%の税率を2倍の20%に引き上げられたと受け取ります。税金をわずかな差益の1/5も取られては、もはやマーケットに魅力はないと感じて尻込みします。特に海外の投資家は、プレミアムに20%も課税されるのなら、税率0%(ゼロ)のバンコックのマーケットに投資した方が手取り額の率は大きいと計算します。これが、去年の秋、せっかく勢い図いて上昇した株価が年明けとともにぼしゃった理由(わけ)です。
ですから、東京マーケットを活気付かせてアベノミクスの勢いを示すのは簡単です。「10を20にしたのはミスジャッジだった。税率を10%に引き下げる。この判断は恒久措置だ」と述べて、明日から実施する決断が官邸にできるかどうかです。
日本の株式投資人口は1%に過ぎません。わずか1%の裕福の人たちのために税率を下げる金持ち優遇措置と考えるか、マーケットを活発にして日本経済全体を勢いづける措置と考えるか、プロが判断して下さい。


ワールド・カップは、残念ながら私の予想通りでした。正確に言うと3位で予選落ちと思っていました。最下位だったのはいささかショックでした。サッカーの専門だけでなくスポーツ評論家で「決勝には残れないかもしれない」と発言した人を知りません。
私の予想が当たった理由は、実力相応の結果を予測したからです。そして、その通りの結果に終わりました。

日本代表チームは、世界レベルからみて、「中(レベル)の中の実力」の選手4〜5人が中心のチームです。本田、長友、香川、岡崎といった人たちです。本場・ヨーロッパの二流チームでは活躍していますが、一流チームでは通用しません。だから、日本代表チームは、世界レベルでは中くらいの普通のチームです。世界各地から選り優りの一流チームが揃うワールド・カップでは下位になってしまいます。
ブラジルのネイマール、アルゼンチンのメッシ、故障していない時のポルトガルのロナウド、オランダのロッペン、ドイツのクローゼら超一流の実力をそなえた「上(レベル)の上」の選手が一人いると、そのチームは世界一流の実力をそなえたチームに昇華します。

ですから、男子日本代表チームは「なでしこジャパン」とは全く異なります。なでしこは世界一級の実力をそなえています。理由は簡単です。なでしこは「宮間あや」のチームだからです。
宮間選手は、世界一のキッカーです。世界一どころではありません。宮間選手のキックの技量は世界の中で飛び抜けています。宮間選手が蹴るフリーキックのチャンスが3〜4回あると1点は得点できるとピッチのなでしこはみんな確信しています。そして、その通りの結果になります。宮間とともにチームの力量が世界一に昇華している証拠です。

シュート力でもドリブルの突破力でも何でもかまいません。願わくばサッカー選手としての総合力がネイマールよりも勝(すぐ)れた「世界レベルの上の上」の素質に恵まれた10代の天才選手の出現を希(こいねが)います。
生き生きと闘っているJリーグのすそ野の中から現れると信じています。(元内閣官房副長官)
余計なお節介! Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/05/27(火) 00:53 
中国社会、発展のキーワード 
『報道の自由と知る権利』

安保政策研究会理事長  浅野勝人

中国共産党・政府の建国以来の統治の苦心は、現在なお並大抵のことではあるまいと察せられます。14億人の国民の統治に成功した政治体制は、過去の世界史に例がありません。日本の26倍の地域に14倍の人が暮らしている途方もない人口と国土のせいだけではありません。

総人口の9割近くを占める漢族以外に政府が公認している少数民族が55あります。しかも国土の2/3を占める5つの民族自治区が、国境沿いに帯状に連なり国境線を独占しています。この国境沿いの広大な地域にイスラム教徒のトルコ系ウイグル族や独特の仏教を信仰するチベット族が、増え続ける漢族と雑居しています。そして、いずれの少数民族も漢族とは異なる歴史観と風習、独自の文化を保持しながら、自らの生きがいを求めて暮らしています。これが新疆ウイグル自治区やチベット自治区で多数の死傷者を伴う衝突事件が頻繁に起きる背景です。

最近、頓(とみ)にウイグル族による暴動テロが自治区内外で頻繁に発生しています。簡単には解決できない深淵で複雑な背景の存在は理解しますが、だからといって、少数民族の不満や反発を「力」で抑え込もうとするのは間違いです。物理的にもネット市民が4億人に達し、フェイス・ブックに代わって微信(wei xin)の携帯ネットを通じて6億人が情報交換している社会現象を無視して、権力が力づくで事柄を押さえて、他所(よそ)に知られないように蓋をするのはもはや不可能です。

従って、中国共産党の支持基盤を安定させ、いっそう強固にする近道は、憲法の枠内での報道の自由を認め、公民(国民)の知る権利に応える政治姿勢に踏み切ること以外にはないと私は確信しています。

中国の憲法は第1条で「いかなる組織または個人も中国共産党が統率する社会主義制度を破壊することを禁ずる」と規定しています。
これは、中国共産党の正統性を批判、否認して国家転覆を目論む明らかな言動については徹底的に取り締まる決意の表明です。けだし、国家としての当然の意思であり、措置です。例えば、習近平政権が、中国からの分離・独立を目指すウイグル族の「東トリキスタン・イスラム組織(ETIM)」のテロ活動を公権力で厳しく取り締まるのは国家としての重要な任務だからです。
 
同時に、中国の憲法は、◎ 国家は、人権を尊重し、保証する(33条) ◎ 言論、出版、集会、結社、行進、示威の自由(35条) ◎ 宗教信仰の自由(36条)◎ 通信の自由と通信の秘密の保護(40条)を保証しています。確かに、中華人民共和国の建国綱領として臨時憲法の役割を果たした「共同綱領」(1949/9・29)にあった「真実のニュースを報道する自由の保護」(49条)の規定は、その後の憲法で削除されていますが、報道の自由は基本的人権を保証する上で欠かせない根幹的権利です。

ですから、私が指摘する「憲法の枠内の自由」とは、中国共産党の正統性を否認し、または外交の基本方針に反対して、国家の分裂、破壊、転覆を目論む明らかな言動以外の自由は、原則として認めることを意味します。「体制内民主化の推進」といった方が分りやすいかもしれません。

 具体的には中国共産党に対する国民の不信感を払しょくするため、
▼政府の政策全般について、予算措置を含めて情報公開の対象とし、政治の透明性を高める。
▼地方政府の役人の権限を制限、縮小して裁量権を大幅に削減する。
 これを達成するため、党中央は反腐敗闘争の責任者、王岐山・中央規律検査委員長を全面支援して「腐敗ゼロ容認」を実行することにより、貧富の格差是正を求める人々の不満に応えることがなにより重要です。
 そして、それを支え、可能にするエネルギーが報道の自由によって啓発される国民の協力です。

 一昨年(2012年)小さな漁村の広東省烏坎(うかん)村の村民が結束して村の独裁者となって村民を苦しめていた共産党支部書記を追放して、選挙によって村人の中から村長を選びました。烏坎村の改革が成功したのは二つの理由によります。ひとつは日本をはじめとするメディアの取材が禁止されなかったことです。選挙の立会演説の生き生きとした模様がTVのドキュメンタリーでキャリーされて世界を感動させました。もう一つは、村民デモの先頭に「わたしたちは中央政府を支持します」というひと際大きなプラカードが掲げられていたことです。「党中央支持」を前提に党村支部の腐敗を糾弾する姿勢を鮮明にした村人の英知の勝利でした。まさに憲法の枠内で自由を求めた村人の要求に胡錦濤政権がYESといった瞬間でした。
 
 胡錦濤政権を引き継いだ習近平政権は、体制内民主化に踏み出すかに見えた政治姿勢を後戻りさせているように見受けられるのが残念至極です。恐らく他所からでは計り知れない複雑多岐におよぶ内部事情があるからに違いありませんが、進む方向を見失わないでほしいと念願します。

 国家の命運を決める困難な政治的判断を貫くには、国民の理解と協力が必要です。それを支えるのが報道の自由です。人々の知る権利に応えようとする報道の自由を許容することは、党・政府にとって知られたくない情報の漏えいを伴い、不都合が発生する懸念は多分にあります。それにもかかわらず、人々が不正や不条理を克服しようと苦労する政府の方針を理解した時、真の愛国心が芽生えます。

 憲法の枠内の報道の自由に象徴される「体制内民主化の推進」こそが中国共産党の支持基盤を安定させていっそう強固にする唯一の近道だと私が確信する理由です。

中国の方々から余計なお節介といわれるのを承知で申しあげるのは、14億人の安定的統治をめざす中国共産党の歴史への挑戦を成功させてほしいと願うからです。
( 北京大学特任講師、元内閣官房副長官、元外務副大臣 )
ひとまずホッとしました。

安保政策研究会  理事長・浅野勝人

オバマ大統領が、安倍首相との首脳会談で「尖閣」の固有名詞を挙げて、日米安保条約の適用範囲と明言しました。
日米安保条約の適用範囲は、フィリピン以北の日本周辺ですから、もともと尖閣諸島は対象地域です。オバマ大統領が記者会見で「なにも新しいことではない」と繰り返している通り、条約の規定を確認しただけのことではありますが、日中間でこれだけ大きな問題になっている情況の中で、ことさら固有名詞を名指しでアメリカの防衛義務を明示した意味は小さくありません。
 
安倍首相の就任以来の一連の発言は、首相周辺側近のきわどい右派発言と重なって、ワシントンでの安倍評価が民族主義的危険思想と思われがちでした。その懸念を払しょくするためにも、節度ある日米同盟の信頼関係の再確認となった両首脳の東京会談は、極めて有意義な出会いでした。もともと尖閣をめぐって日中武力紛争の可能性を予測する向きは存在しませんでしたが、オバマ発言によって偶発的・突発的な衝突の懸念もなくなったと判断していいと考えます。

冷静にみれば、尖閣に対する日米安保条約の適用は、条約上の義務として当然の事柄が指摘されたに過ぎませんが、もし言及を避けていたら日米同盟は存在意義を失います。だから、逆説的に言えば、アメリカは日中間で武力紛争が発生したら、条約に従って日本を助ける義務を負っていることを公言することによって、一方で米中協調を発展させるため中国との敵対関係は何としても避けたいアメリカを困難な立場に追い込まないよう中国に求めたアメリカの本音の表れです。従って、日本か、中国か、どちらか一方の選択をアメリカに迫るような愚かな軍事的行動は絶対に避けよというメッセージを日中双方に向かって発出したと読むのが正解でしょう。

首脳会談の中で、オバマ大統領が、尖閣問題を日中間の対話によって平和的に解決することを安倍首相に2度にわたって求めたと念には念を押して記者会見で言及していることがそのことを如実に示しています。

もちろん、中国政府が、中国の領土に対するアメリカの口出しは絶対に認められないと強く抗議するのは当然です。立場を置き変えてみればわかることですから、日本政府は「オバマ発言」の真意を十分理解して下手な言動は慎むべき大事な時期です。むしろ、オバマが日本の立場に100%答える態度を鮮明にしたことによって、安倍はオバマに対して中国、韓国との関係改善の政治的責務を負ったと受け取るのが妥当でしょう。

特に、オバマが皇室の尊厳を最大限に尊重し、その上、明治神宮に参拝した意味を重視する必要があります。国務長官、国防長官、駐日大使の千鳥ヶ淵墓参と合わせて日本政府首脳の靖国参拝に待ったをかける強烈なメッセージです。「先の大戦で国家の為に犠牲となった尊い御霊に手を合わせるのは各国リーダーの当然の振る舞い」という点に異論はないけれども、それならば310万人の尊い命を犠牲にしたアジア・太平洋戦争を決断・推進した国家指導者の戦争責任をどう考えるかという視点が決定的に欠落していることをアメリカ政府首脳たちは指摘していると受け止めるべきです。そして、中韓両国への配慮だけから政府首脳の靖国参拝自重、村山談話・河野談話の継承を求めているのではなくて、日本が欧米社会から国粋主義の疑念を持たれないよう気遣う同盟国・アメリカの忠告と私は理解しています。

強固な日米同盟を背景に米中の絆を強化する動きに劣らない日中関係の再構築へ向けて踏み出すきっかけとなればオバマ来日は歴史的意義を深める結果となります。( 2014/4月25日記 )


◎「北朝鮮ウオッチング」−金正恩政権の「対話攻勢」を検討する
               元韓国駐在日本大使   寺田輝介
  金正恩の義理の叔父として政権中枢に地盤を築いてきた張成沢国防委員会副委員長が昨年12月13日に処刑されたことは、金正恩政権の恐怖政治の一端を示したことになり、国際社会に大きな衝撃を与えた。また2月17日に公表された国連北朝鮮人権調査委員会最終報告書は、北朝鮮の広範囲に及ぶ人権侵害を白日の下に晒し、国際社会の関心そして懸念を呼び起こした。北朝鮮にとり極めて厳しい国際環境の中で、金正恩政権は本年初め「対決姿勢」から「対話姿勢」に舵を切り、現在「対日対話」に注力しているが、その前途は不透明である。本稿では主として金正恩政権の「対話攻勢」を中心に同政権の対外関係の現状を検討する。
1. 金正恩政権の「対話攻勢」の始動
(1)。金正恩政権の「対話攻勢」の狙いと背景
(@)本年初めより金正恩政権は先ず韓国、次に日本に対し「対話攻勢」を仕掛けてきた。北朝鮮の「対話攻勢」の背景には、米朝関係がほぼ凍結状態にあること、加えて張成沢の処刑の結果、中朝関係が停滞しているとの要因がある。オバマ政権は、2012年2月の米朝合意が北朝鮮のミサイル実験強行により反故にされて以来、北朝鮮が非核化の具体的措置を示さぬ限り、対話に応じぬとの立場を堅持しており、差し当たりこの立場が修正される可能性はない。中国は、北朝鮮が第三次核実験を強行した結果、金融制裁を実施している上、中朝経済関係のパイプ役を務めていた張成沢を失ったことから、当面北朝鮮関係を動かし難い状況にある。この為、北朝鮮は中・米関係をめぐる戦略環境の改善を目指すと共に、経済の再建を図る為にも、日韓をターゲットとし、「対話攻勢」に出て来たと言えよう。特に来年、朝鮮労働党創建70周年を迎えることからも、国民に経済的果実を与える必要があり、「対話」の成果として日韓よりの経済的見返りを狙っていると見られる。
(A)日・韓に対する「対話攻勢」の主導者はいずれも当初は北朝鮮赤十字会であり、人道問題を「対話」の梃子に使った。韓国に対しては、離散家族の再会事業の復活を使い、日本に対しては、日本人の遺骨返還と墓参の実現を「対話」再開の誘い水に使ったのが特徴である。
(2)。南北対話の再開と挫折
(@)金正恩第一書記が1月元旦に発表した「新年の辞」で、南北関係改善に言及したのを受け、1月16日には国防委員会は「重大提案」を発表、その中で南北和解を訴えつつ、敵対行為中止などの提案が実現されれば、韓国側が求める離散家族再会など「南北間の全ての問題が解決される」とする「対話戦略」を打ち出した。1月29日には、在北京の池在竜・北朝鮮大使が外国メディアを招いて記者会見を催し、南北関係の改善を訴えるなど一段と韓国への対話攻勢を強めた。この様な流れの中で北朝鮮赤十字会が、1月6日の朴槿恵大統領の年頭会見における提案に応える形で、南北離散家族の再会事業の呼びかけを行い、紆余曲折を経て、2月20日から25日まで3年4ヵ月ぶりに北朝鮮の金剛山で再開事業を実現した。
(A)金正恩政権は、昨年3回目の核実験を強行(2月12日)、これに対する国
際社会の非難が高まると、朝鮮戦争停戦協定を「白紙化し」、「ソウル、ワシントンを火の海に」と恫喝、さらには開城工業団地を閉鎖するなど、韓国と周辺に対する恫喝、挑発を続けた。然るに本年は2月下旬から始まった米韓合同軍事演習をめぐり、短距離ミサイル、ロケツトを立て続けに発射するなど揺さぶりをかけたものの、昨年の如き過激な挑発的行動を取ることはなかったことから、南北対話路線が一応定着したかと見られたところ、3月26日北朝鮮軍は中距離弾道ミサイル「ノドン」を発射した。27日国連安保理が「ノドン」発射を非難する「報道機関向け談話」を出すと、北朝鮮外務省は30日、この談話について、「核抑止力を更に強化するための新たな形態の核実験も排除できないであろう」と非難声明を発表した他、翌31日には北朝鮮軍が黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線の近くで海上砲撃訓練を集中的に実施し、これに対し韓国軍が対抗射撃で応じた結果、南北対話は中断された。
(B)北朝鮮が年初南北対話を求めた背景には、北朝鮮経済の苦境を物語る経済的動機があったことは言を俟たない。離散家族の再会が金剛山で行われたことも、現金収入をもたらす金剛山観光プロジェクトの復活を強く期待する北朝鮮の思惑が秘められていたと言えるが、朴槿恵政権が金剛山観光の再開や経済協力に応じる姿勢を示さなかったこと、更には3月26日の日米韓首脳会談で韓国が日米と対北朝鮮非核化問題等で共同歩調をとったことに対し、累次の軍事的示威行動によって反撥し、南北対話を中断させたと言える。
(3)対日対話攻勢
北朝鮮は目下「対話攻勢」の対象を日本に絞り込んで来た様相を呈している。この攻勢には中・韓に当面反撥する北朝鮮の戦略的思惑が含まれている。(@)北朝鮮は、過般訪朝した猪木参院議員に日本の国会議員らの訪朝を呼びかけていたが、本年1月及び2月にハノイ、香港でそれぞれ行われた日朝秘密協議は、金正恩政権が既存の飯島内閣参与―朝鮮総連のチャンネルを使うことなく、直接対日対話に乗り出す決意を固めたことを示している。3月2日付「産経」は、外務省アジア大洋州局長が1月、ハノイで北朝鮮の国家安全保衛部当局者と極秘に会談したと報じているが、この会談は嘗て第一次小泉訪朝を実現させた田中―ミスターXとの秘密交渉の進め方を彷彿させるところがある。北朝鮮は、安倍首相が「拉致問題は、私の内閣で解決に向け全力を尽くす」と繰り返し言明していることを捉え、安倍政権の安定度を見た上で日本政府と直接交渉する機が熟したと判断したのであろう。明らかに2回に及んだ秘密会談の結果、日朝赤十字実務会談を北朝鮮で死亡した日本人の遺骨返還や墓参を議題と
して開き、併せて日朝外務省課長級非公式協議を行うこと、更には横田夫妻が孫娘とモンゴルで会うことが合意されたと見られる。
(A)以上の経緯から見れば、朝鮮赤十字会からの協議要請を受け、3月3日日朝赤十字会談そして外務省課長級政府間協議が開かれたのは自然の流れであった。更に第二回日朝赤十字会談が3月19、20日、非公式政府協議と併せて開かれ、同政府協議で日朝局長級協議開催が合意されたことは、北朝鮮が如何に日朝対話の進展に関心を有しているかを示すものである。
(B)3月17日行われた記者会見で横田めぐみさんの両親が3月10日から14日にかけて第三国のモンゴルで孫娘と面会したことが明らかにされ、本邦各紙のトップニュースとして大きく報じられたが、今次面会の実現は、従来固執していた北朝鮮における面会から譲歩した、北朝鮮側の政治的「善意」を示すものとして対日世論の懐柔を狙って巧みに演出されたと見做し得よう。もっとも日本側としても拉致問題の解決を安倍政権の重要政治課題としている以上、この面会には異議がなかったのであろう。しかし面会が実現されたことにより、日本国民の拉致問題解決を求める声が一段と強くなり、日朝局長級協議に対する期待感が高まったことは否めない。
(C)今後北朝鮮は日朝赤十字間のチャンネルと日朝局長級協議開催の双方を巧みに利用していくであろう。前者については、遺骨返還事業がまとまれば、米国の先例に照らし(225人の遺体を発掘し、2800万ドルを支払ったー2013年11月号「東亜」参照)、多額の財政的負担を要することになる。まさに外貨収入を渇望する北朝鮮にとってうってつけのプロジェクトである。政府間協議については、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」としてきた従来の姿勢を改め、解決に向けた再調査を約束するか否かが差し当たり北朝鮮の対日対話攻勢の真剣度を測るリトマス試験紙となろう。
 (4)凍結した米朝関係
2月19日付「朝日」によれば、2月10〜14日に訪朝した米国のグレッグ元駐韓大使に対し、6者協議の首席代表を務める李容浩外務次官が「金正恩第一書記は長期政権になる。米国のオバマ大統領が対話に応じなければ、我々は次期大統領まで待つ」旨発言したとされているが、同次官の発言は必ずしも金正恩政権の立場を代弁しているとは思われず、因みに3月26日未明に発射された中距離弾道ミサイル「ノドン」のタイミングが意図的に日米韓首脳会談中であったことから、「脅威を見せつけて揺さぶり、米朝協議などへの対応を迫る狙いがある」と見られる(3月27日付「朝日」)他、3月30日の北朝鮮外務省声明が「新形態の核実験」実施の可能性についての言及したことも引き続き北朝鮮が対米交渉再開を断念していないことを示すものと考えられる。しかしながらオ
バマ政権は、中東,ウクライナ情勢の対応で手が一杯であり、到底北朝鮮に対応できる状況にはないと見られる。
(5)中朝関係
張成沢粛清の結果、中朝経済関係は滞ったままであり、差し当たり改善の見通しはない。外交面では武大偉朝鮮半島問題特別代表が3月17日訪朝したが、特に成果はなかったと見られる(3月25日付電子版「東亜日報」)。他方朴槿恵政権成立以来、中韓関係が特に緊密化しており、朴大統領と習主席が1年余りの間に4回も首脳会談を行ったことは、中国を唯一の後ろ楯としている北朝鮮にとつては対韓国戦略的敗北を意味するものであった。この様に不利な戦略的環境にあれば、金正恩政権が中国を牽制する観点から軍事行動を含め対韓対決姿勢を意図的に強めることは過去の事例から見てあり得ることである。従って、中国としては、朝鮮半島の不安定化を避ける為にも、対北朝鮮アプローチを再検討せざるを得ず、この為等距離外交の原点に戻り、習国家主席の韓国訪問に合わせて、未だに訪中の機会がない金正恩を中国に公式招待する等の地政学的バランスの回復を目指すであろう。
2.「対話路線」のゆくえ
本年始動した金正恩政権の「対話路線」は、南北対話が挫折した現在、日本が唯一の対話対象国になり、「日朝関係は、米朝関係、南北関係が低迷している時に動きだすことが多い」(安保研リポート  2013・12.27)との北朝鮮の伝統的対外行動パターンが再現されているが、この対外行動の行方には多くの問題点が内包されている。以下特に注目すべき諸点を取り上げる。
(@)最近金正恩政権の朴大統領に対する反撥は日々に強まっている。訪独中の朴槿恵大統領が3月28日行ったドレスデン演説の数日後、北朝鮮軍が黄海上の北方限界線で海上射撃訓練を実施したことは、金正恩政権の同演説に対する反撥を示していると言えるが、特に同演説の中で、朴大統領が交流・協力を通じて「統一」を築くとした点を、韓国が北朝鮮の「体制変革」を意図していると受け止め激しく反撥したと見られる。
(A)南北対話が中断する一方で、対日対話攻勢は加速されている。焦点は日朝局長級協議の場で、一度反故にされた2008年6月合意(拉致問題の再調査)が如何なる見返り条件の下に復活されるか否かであるが、拉致問題の再調査実施で日朝合意が成立したとしても、今後の日朝対話は核・ミサイル問題を抜きに進める訳には行かず、日本側の対応は難しくなろう。また北朝鮮の過去の行動パターンから見ると、北朝鮮が満足すべき利益を得られないと判断した場合、直ちに対日対話を打ち切るであろう。
(B)現時点で特に注意を払うべき点は、金正恩政権がどの程度真剣に対米対話の再開を考えているかである。北朝鮮外務省が3月30日、「核抑止力を強化するため、新たな形態の核実験も排除しない」との声明を発表したことは、北朝鮮が真剣に対米対話を求めたにも拘わらず、米国がこれに応じない場合の最悪のケースを示唆したと考えられる。現在北朝鮮が核実験の準備を行っている兆候はないが、米国の北朝鮮専門ウェブサイト「38  ノース」は、北朝鮮は4週間から6週間ほどあれば核実験の準備を完了させることができると見積もっており、注意を要するところである。
(C)今後注目すべき点は、ロシアのクリミア併合が朝鮮半島情勢にどのような影響を及ぼすかである。北朝鮮は、米国の対ロシア制裁の限界を見て、深まる一方の対中依存に対する軌道修正を図るべく、「ロシア」カードの使用を考えるであろう。これに対するロシアは旧ソ連時代に占めた地位を復活することはまず無理としても、北朝鮮との経済関係を深めつつ、朝鮮半島への政治的影響力拡大の方途を探るであろう。
(D)日本外しを進める中国は目下日朝対話の行方を凝視していると見られる。先般のオランダにおける米中首脳会談で習近平主席がオバマ大統領に強く6ヵ国協議の再開を求めたと報じられている通り(3月26日付電子版「中央日報」)、中国は6者協議の再開に重点を置いていることから、日本としては、北朝鮮が現在日本に対してのみ維持している「対話」の中で6者協議の再開を呼びかけるなど中国の関心を念頭に外交的ジェスャーを示し、日中外交関係改善の一助とすることがこの際考えられよう。
18:05 
木を見て森を見ない典型! Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/03/11(火) 16:01 
菅 長官は自らの信念を貫け!
安保政策研究会理事長 浅野勝人

「合格を待ちて逝きたる孫思い 泥にまみれし写真を洗う」
石巻市の阿部敬子さんの歌と毎日新聞の「余録」が紹介しています。
今朝の各紙は、どの記事も涙して文字が曇ります。もう、丸3年なのですねぇ。

菅 内閣官房長官は記者会見で、「河野談話の見直しはしない」と明言しました。木を見て森を見ない議論のなかから抜け出そうとする当然の政府方針です。その一方で作成経過を検証する作業はする方針を示しています。安倍総理の理念ファンに対する配慮でしょう。
政局に配慮した二律背反的整合性の追求は、諸外国からは理解されません。もっと正確に言えば、外国人には理解できないでしょう。
ですから、そんなことは先刻承知の菅 長官の腹は「見直すつもりはない」が真意に違いありません。菅 長官の信条に賛同します。そして、菅長官は国益を利すると判断した自らの信念を貫くべきだと考えます。

 翻って、戦時下の慰安婦問題が再燃したのは、旧軍が強制、管理に関与したかどうかを調査すべきだという指摘に端を発しています。反語として、軍の関与はなかったから「河野談話」は根幹に誤認があると示唆しています。
 そもそも、慰安婦の扱いについて、当時、強制・管理したことを記録に残す軍人ないしは軍属がいたはずがありません。そんな事実が判明したら軍の権威は失墜し、後々に計り知れない汚点を残す結果となります。もし、仮に記録していた正直者に〇〇のつく軍人がいたとしても、敗戦が濃くなった状況下では、秘密書類の中でも真っ先に焼却して撤退するのが軍の常識です。一番知られたくない文書だからです。従って、戦後70年経った現在、調査してみたところで証拠となる文書が見つかるはずがありません。ヒョッコリ見つかろうものなら、改めて、公式に旧日本軍の恥を世界にさらすだけです。
軍の関与を再調査せよという人の神経が私には理解できません。

 「河野談話」をまとめる段階で、韓国側とすり合わせをしたかどうかを問題視する感覚についてです。
 事実関係は知る由もありませんが、およそ外交文書、外交上の重要文書を関係国同士が水面下で折衝を繰り返してまとめあげるのは常識です。共同声明作りが、下準備の交渉で決裂して発表されなかった例は幾らもあります。「河野談話」は日本政府の声明ですから、確かに韓国側と事前折衝をする類の文書にはなじみません。しかし、問題を解決するための声明ですから、発表して事態を却ってこじれせたのでは声明の意味がありません。仮に内々韓国側の了解を求めた経緯があったとしてもむしろ当然の外交的配慮でしょう。国会の答弁で、なにかまずいことをしたような印象を与えた石原元官房副長官は、問題を蒸し返すことが歴史に対して重大なマイナスになる認識に欠けています。

 作成の過程を調査するには、韓国や中国、オランダの元慰安婦にさせられた方々の事情聴取は避けられません。残り少なくなった高齢の婦人に、今更、昔の痛みを根ほり葉ほり聞き質して、堪えがたい苦痛を改めて与えるつもりですか。 この人たち十数人が、かつて、恥を忍んでソウルの日本大使館の前で「証拠ならここにいる」と叫ぶ姿が世界にキャリーされたことを私は忘れていません。
 第一次安倍内閣の外務副大臣だった折、民主党の女性議員二人が付き添って、韓国人の戦時慰安婦だった方を外務省に連れて来られました。厳しい抗議を受ける覚悟はしていましたが、日本政府の植民地下で旧軍の行った全ての行動について、現在の日本政府及び日本人にも道義的責任が伴うこと。お詫びして許されることではないけれども、先輩たちの犯した罪については我が事として改めて謝罪させていただきたい旨を心の底から申しあげました。その高齢の韓国婦人はうっすらと涙を浮かべたあと、私の目を見て微笑んでくれました。
だから「どこの国でもやっていたではないか」というNHK会長の発言は世界のもの笑いです。自国の歴史に対する評価に値しないからです。

 もともと河野談話や村山談話、A級戦犯を祀った神社への政府首脳の参拝自重は、近隣諸国との歴史認識をめぐる反目の繰り返しを断ち切るための高度の政治判断だったはずです。
愛国心とは、自らの国を大切に育み、他国から侵略を受けたら、命を賭して戦う決意です。その場合、4月で76才の私は鉄砲を担いで戦います。おそらく何方の決意にも負けることはありません。とても大切なことは、愛国心の中には自国の犯した過ちを率直に認める勇気が重い位置を占めている点です。だから、河野談話や村山談話がアメリカやヨーロッパの国々で至極当然な日本の歴史認識として受け止められているのでしょう。

菅 長官は迷わず、真っ直ぐに己の信念を貫くべきです。国益に沿う判断だからです。
河野談話や村山談話の見直し、破棄。天皇陛下も自重しておいでの靖国参拝を総理に強いる自民党や維新の会の国会議員の皆さん、木の枝ぶりだけにこだわらず、森全体を眺める努力をしていただきたいと念じます。(元内閣官房副長官、元外務副大臣)
中曽根康弘会見記(2014/3/4)

●大勲位への書簡
本日は、30分余の長時間にわたって面談の機会をたまわり、誠に有難く光栄に存じました。同道するよう誘って下さった中野清先生に感謝申しあげております。
内閣総理大臣を4年間全うし、間もなく96才におなりの長寿・元老のお立場にありながら、私どもに対して片言隻句に謙虚な思いやりが忍ばれ、感銘を刻みました。人間は、ここまで達することができるのかと眩く映りました。遠く及ばぬことは申すまでもございませんが、余生の目標をいただきました。ご教導、まことに有難うございました。
ご自愛を切に祈念申しあげます。
         2014/3/5      浅野勝人   

●経 緯(いきさつ)
現役時代の議員仲間で、中曽根教の信者、元衆議院議員・中野清さんが、私の著書、北京大学講義録「日中 反目の連鎖を断とう」を読んで感ずるところがあり、それに関連して大勲位(中曽根康弘)に会うので著者のオマエも同道せよというのが面談に至った経緯です。
中野清さんは、今も川越菓匠くらづくり本舗会長で、埼玉県内に和菓子の店舗を数十店構える大店(おおだな)の主です。現役の頃、中野議員が商店街活性化をめざす「町おこし議員連盟」を立ち上げる際、協力を求められたのが付き合いのきっかけでした。
対外政策については、中野議員は一貫していわゆるタカ派の立ち位置を堅持しておいでだったこともあって、外交・安保政策をめぐって議論した記憶はありませんから妙な組み合わせの弥次喜多道中です。

●面談の中から2題
私の講義を聞いた北京大学の学生の感想文(著書に掲載)の中から、国際関係学部の女子学生のレポートの一部、
「憎しみと誤解を抱えていては相互理解には至らない。相手の立場に立って配慮することや相手を許すことも出来ないままでは、共に発展することはできないと悟りました。これは今後の中日関係を律するうえで最も重視されるべき点だと気づかせていただき、今日の講義の最大の収穫でした」(鴻雁錦書の東来=東の方<日本>からの便り)

もうひとつ、物理学部の男子学生のレポートの一部、
「浅野先生の北京大学での講義が一年ぶりに再会されると知りました。この機会に講義に参加しましたが、私にとっては日本人の話に耳を傾ける初めての経験でした。
まず、穏やかな教室の様子に驚きました。この信頼感に満ちた雰囲気は、日頃、中日関係に関する報道やネット発信からは微塵も感じられない不思議な安らぎでした。中日関係に隔たりを作ってしまうのは、もしかしたら幅の狭い海峡やいくつかの島の存在ではなく、お互いに知ることを怠り、寛容の精神に欠けていることから来る心の障碍ではないかと思わず考えてしまいました」(相互理解の実践)
2編を読み上げて、聞いていただきました。
 
中曽根先生は驚きの表情を浮かべて、「あなたの講義を聴いた学生の感想ですか。いい経験をしましたね。たいへん大切なことをやっておいでだと思います。しかも、後世に記録を残したことはまことに貴重です」とおっしゃって褒めて下さり、週末にじっくり読んでみたいと約束してくれました。

 席上、「私はこの著書について、かなりの部分は賛同していますが、納得しかねる問題点がいくつかあります。例えば、尖閣問題の扱いをめぐって領有権論争を棚上げ・先送りして話し合い解決を求めるトウ小平の提案は、今の時代の人々には入れられません」
中野さんらしい主張をして見解を質しました。

「話し合い以外に解決する方策があるでしょうか。日中双方が50年でも100年でもかけて根気よく話し合うことが肝要でしょう。
いま、その雰囲気にないことは理解しますが、話し合い解決の環境づくりをするのが政治に求められる重要な役割だと思います」

私がNHK政治記者だったあの頃の中曽根康弘とはおよそ異なる穏やかな語り口ですが、まるで遺言のような確かな響きが感じられました。そして、私の方を向いて黙って所感を求められました。

「領土問題をめぐる解決策は二つしかありません。戦争をして結着をつけるか、話し合いで折り合いをつけるかです。戦さを選ぶのは愚かな選択です。北京大学の講義では、中国の若者たちにそのように語っています」と申しますと、中曽根先生はうなずかれましたがコメントはありませんでした。

感動の35分間でした。(元NHK解説委員、元内閣官房副長官)

[402NHK会長に退陣を求めます。 Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/02/27(木) 01:44 
 籾井さん
 もはやこれまで! お引き取りください。
        安保政策研究会理事長  浅野勝人


2月17日の安保研ネットに「ジャーナリズムとは何か」について所感を掲載いたしました。その際、ジャーナリズムは不偏不党をかざして中立公正を求め、「権力と対峙」するのが使命と申しました。
ジャーナリズムを支える報道の自由は、高い倫理観と重い責任感を担保に保証されており、その欠落はジャーナリズムであることの放棄を意味すると申しました。

 これは、NHK政治記者、解説委員として20年、国会議員、政府高官として20年、取材する側と取材される側の体験から学んだ真理です。それぞれの立場で積み重ねられた失敗と悔恨の中から生まれた帰結といった方が正直です。
どの報道機関もジャーナリズムを大切にする多くの人材の努力を積み重ねて維持・発展してまいりました。NHKも1925年に放送を開始してから90年間、膨大な職員の艱難辛苦が実って、世界一の文化集団、世界有数の報道機関に成長して参りました。この間、毎日新聞会長・阿部眞之助、朝日新聞代表取締役・野村秀雄、NHK解説委員・前田義徳ら、日本を代表するジャーナリストがNHK会長として真のジャーナリズムの確立に努め、その積み重ねが今日のNHKの骨格をなしています。

確かに中立公正とは何かを見定めることほど難しい判断はありません。そんな中で、世界的規模のネットワークの放送メディアに限ってみれば、NHKやイギリスのBBCは不偏不党の立場を守ろうとする姿勢が鮮明です。少なくとも、NHKが中立公正なニュースや番組を提供しようと懸命に努力している姿を認めている人は少なくありません。そうでなければ、TVを視聴する世帯のおおむね80%がNHKの受信料を払うはずがありません。

籾井さん。NHKの放送内容が左寄りだから、ナットを締め直してまともな姿に戻すのが自分の仕事と思ったようですが、とんだ間違いです。真ん中に立って見れば中道に見えるものが、あなたが右に偏った地点から見ているので真ん中のものが左寄りに映っただけです。ですから、籾井さんは自らナットを締め直して放送法を順守するまともな位置にご自分を置き変えれば問題はおきませんでした。
そもそもジャーナリズムほど個々の個性、個人の能力に支えられて成り立っている業種はありません。例えば、経営陣と取材記者、カメラマン、プロデゥサー、ディレクター、アナウンサー、映像編集者、技術者、その他多彩な職種の職員との相互信頼が失われたら放送メディアは崩壊します。ですから放送内容の軸位置を大きく変えさせようとしたら、籾井さん、あなたのかざす思想、哲学、理念に東京の放送センターだけでなく、全国の放送局に勤務する1万人の職員が心服して納得しないかぎり達成できません。

世界一の文化集団、世界トップ級の報道機関にはどんな使命があり、どれほど多くの貴重な個性が存在するか、あなたにはまるで理解できていません。分っていないから、放送人としての見識と能力を備えた10人の理事全員に、会長就任と同時に日付を空白にした「辞職届」を出させたのでしょう。こんな非常識な振る舞いは、現職の理事に対する冒涜に止まらず、受信料を払って今日のNHKを築いてきた視聴者をはじめ、OBや関係者全員に対する侮辱以外のなにものでもありません。
籾井さん、もはやこれまで! お引き取りください。
       (元NHK解説委員、元内閣官房副長官)
これがジャーナリズムです! Name:浅野勝人 NEW! Date:2014/02/17(月) 15:40 
為政者にとって「思想友達」は無益というより危険だ!
          安保政策研究会理事長 浅野勝人

 ジャーナリズムは不偏不党をかざして中立公正を求め、「権力と対峙」するのが使命です。そして、ジャーナリズムを支える報道の自由は、高い倫理観と重い責任感を担保に保証されています。その欠落はジャーナリズムであることの放棄を意味します。同時に権力は、何より大切な健全な批判、諫言に耳を傾ける機会を失います。

 利潤の追求が美徳であり、権力に寄り添うことによって利潤を得る環境に育った中小IT企業の経営者に、突然、ジャーナリズムを理解せよというのは無理な相談です。
NHKは世界一の文化集団です。世界有数の報道機関です。長い歴史の中で、昼夜をいとわぬ修練の積み重ねが、それに恥じない実績を残してきました。ですから、新会長が「ボルトを締め直す」必要があると思ったのはNHKの職員に対してではなくて、実は「自分自身」に対して必要な作業だったのです。知らないのだから無理もないと同情すると同時に知らないということほど恐ろしいことはないとガックリきます。

 思想信条の自由は憲法が保証しています。ですから、誰がどんな思想をどんな言葉で公に表明しようが自由です。しかし、不偏不党を旨とする報道機関の諮問、監視役が、自分が応援する以外の都知事選挙の候補者を「人間のクズ」呼ばわりしたり、右翼団体幹部の言動を礼賛するのは論外です。
 こうゆう自由人は、個人として自由闊達に発言したり、書いたりできる立場に戻って、言論の自由を満喫してはいかがでしょうか。

 第一次安倍内閣の人事では「仲良し政治家グループ」の極端な登用が裏目にでました。その教訓から第二次安倍内閣の人事では、内閣、党ともに安倍色を薄めて成功しました。ところが、政府・自民党以外のポストを気楽に考えたのか、思想友達の登用に気を許してしまいました。
 安倍首相は、安倍政権にひたすらおべんちゃらするマスメディアよりも、中立公正と真剣に向かい合いながら安倍政権を批判、諫言するメディアの方が、実は、自らにプラスになる存在だということに気づくべきです。
 取材する側と取材される側の両方をたっぷり体験して苦しんだ私が言うのですから間違いありません。

 思想友達の安易な人選は、国民の目には「有力野党の不在が、これほど政権の横暴を許すのかと日々驚きを新たにする」(毎日新聞、読者投書欄)と映ります。
長期安定政権を期待する立場からみますと、次の国政選挙を見通しながらゾッとする反応です。但し、市井の人々の率直な感想です。
 安倍さん、バタバタ慌てず、もっと、どっしり構えたら如何でしょう。                        (元NHK解説委員、元内閣官房副長官)
積木細工の安保政策! Name:浅野勝人 Date:2014/02/11(火) 17:34 
苦心惨憺を重ねた「モザイク仕立ての積木細工」です。
         安保政策研究会理事長 浅野勝人

提案=「日本型集団的自衛権」をネットで読んで、歯止め策が明確でない、用語の意味合いがあいまいで理解しにくいなどの指摘をいただきました。ご尤もです。とりわけ、日本在住20年の知識人とは申せ、中国の方(この人は男性)には理解し難いと思います。但し、理解できる、できないという意味がちょっと異なります。

日本の安保論議は、半世紀の余、不幸な特殊な歴史を引きずってきました。そもそも世界8位の軍事力を保持していながら軍隊は保有していないことにしてまいりました。憲法9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明言しています。ですから、軍隊の存在は憲法違反という世界に類のない奇妙な宿命を負ってきました。従って、自衛隊は専守防衛のためにあって、他国を攻撃するための軍隊ではないという当然の帰結になります。

例えば、もっとも能力の高い迎撃用戦闘機F15は主力戦闘機として保有・拡充しましたが、中国や北朝鮮を攻撃して戻って来られる足の長い攻撃用戦闘機F16は保持していません。もっとも自衛隊に代わって在日米軍が装備しています。いろんな理屈をこね合わせて安保政策の合法性を組み立ててきましたが、子どもたちに自衛隊の実態を見せて「あれは軍隊ではない」と言っても理解できないでしょう。

つまり、安保政策をめぐるあらゆる問題点について、いささか無理のある理屈も含めて巧みに積み上げて作った「モザイク仕立ての積木細工」なんです。モザイクのどこか一本折れると全体が崩壊しかねない危うさと隣り合わせで、はれ物に触るような思いでしのいできたのが日本の安保政策です。その意味で、外国の方々には理解し難いのではないかと申しあげたのです。

ご指摘の「急迫不正」とは、どのような状況を指すのか、「必要最小限度」とは、どのくらいの程度と量を言うのか、「日本周辺」とは、地理の上でどこまでか。それらの点があいまいのままでは責任ある安保政策と言えないのではないかという疑念の提示です。
これらの問題点は、国会であーでもない、こーでもないと繰り返し、蒸し返し質疑を重ねて、結論が出せないのが結論という結果も含めて、すべて一応の答えが出されています。従って、日本型集団的自衛権の内容及び用語については、いずれも論議の経緯と背景、その結果を伴ったものであることを申し添えます。

日本社会党時代と言いますと、昔話になりますが、石橋正嗣、岡田春夫、楢崎弥之助、大出 俊といった安保論客が自民党政府との論戦に一歩も引かない論陣をはり、政府は、その都度、薄氷を踏む思いで懸命に辻褄を合わせてきました。その膨大な質疑が、日本の安保政策の骨格となり、その後も安保論議は積み重ねられて今日に引き継がれている意義は極めて重要です。

近年、安保政策の脆弱性を指摘して論議を深める理念と能力を備えた政治勢力がなくなって、みんなイケイケどんどんになってしまっていますから、政府は楽をしています。その意味でも日本型集団的自衛権のあり方をめぐって大いに議論をしていただけたら有難いと存じます。

(元防衛政務次官、元外務副大臣、元内閣官房副長官)


[4003] もう一度!「日本型集団的自衛権」を考える。 Name:浅野勝人 Date:2014/02/08(土) 01:45 
提案 =『 日本型集団的自衛権 』
安保政策研究会理事長  浅野勝人

私は、以前、集団的自衛権の行使は、我が国の平和憲法の下では認めるべきではないと考えていました。この確信的な理念が揺らぎ始めたのは、主としてアジア・太平洋地域の安全保障環境の変化とアメリカのプレゼンスの低下によります。アジア・太平洋地域には大規模な軍事力をもつ複数の核兵器保有国が存在する一方、安全保障の地域協力枠組みが十分に制度化されていません。具体的には、中国、インドの軍事力強化に伴い国家間のパワーバランスが崩れ、特に中国は国際社会において存在感を増大させています。これに対して、強大だったアメリカの力は相対的に弱まっており、世界の統治構造に少なからぬ影響を及ぼしています。従来通り、アメリカの核の傘による抑止力があれば、日本は安泰とばかり言ってはおられない変化に私たちは直面しています。日本は、国際社会の主要なプレーヤーとして、国際協調主義に基づく平和主義の立場から、日本の安全およびアジア・太平洋地域の平和と繁栄を確保するため、これまで以上に積極的な役割を果たしていくことが求められる状況にあります。
従って、集団的自衛権の行使を許容する態様について、戦後一貫して平和主義を貫いてきた日本にふさわしい「日本型集団的自衛権」の姿を考察してみる必要に迫られています。
従来から、我が国の平和憲法は、@ 日本に対する急迫不正の侵害があること。A これを排除するために他の適当な手段がないこと。B 必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当すれば、個別的自衛権の発動として武力の行使を許容しています。これは、日本が武力攻撃を受けた「日本有事」を想定した要件です。一方、集団的自衛権に関する国際法上の要件である「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃」が発生した事態には到底あてはまりません。従って、現行憲法の下では集団的自衛権の行使は認められないと解されてきました。こうした情況の中で、日本の安全およびアジア・太平洋地域の平和と繁栄に寄与する立場を貫くためには、平和憲法の理念を具現化した「日本型集団的自衛権」が必要となります。
この場合、平和憲法の理念に沿った歯止めとして、周辺事態安全確保法の規定に基き「日本の周辺地域において、そのまま放置すれば日本が、直接、武力攻撃されるおそれがあって、日本の平和と安全が脅かされ、重要な影響を受ける事態」(同法1条の趣旨)いわゆる「周辺事態」の発生を「日本型集団的自衛権」の要件に加えることを提案したいと存じます。
これによって、日本と密接な関係にある外国が武力攻撃を受け、「周辺事態」が発生すれば、自衛隊は後方支援活動から一歩踏み出して「日本型集団的自衛権」に基づく武力の行使が可能となります。要約すると、「日本の周辺地域において、日本と密接な関係にある外国に対する武力攻撃が発生し、そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれがあって、日本の平和と安全が脅かされる事態」が「日本型集団的自衛権」の行使の対象となります。
これを要件とすれば、集団的自衛権は厳格な歯止めに縛られ、日本の平和と安全に力点をおいた「日本有事優先思考」の平和憲法を重視した「日本型集団的自衛権」となります。

ところで、周辺事態安全確保法では、「周辺事態」とは地理的概念ではないとされていますから、理論的には地球の裏側も対象にしています。「日本型集団的自衛権」の対象も「周辺事態」であることから、理論的には地球の裏側も対象となります。しかしながら、日本の平和と安全を直接脅かすような「周辺事態」が地球の裏側で発生することは考えにくいとみるのが妥当な判断でしょう。現に周辺事態安全確保法をめぐって行われた国会の審議の折にも、政府は「周辺事態が生起する地域にはおのずと限界があり、例えば中東やインド洋で生起することは現実の問題として想定されない」と答弁してきました。
この要件に準じて「日本型集団的自衛権」が発動される具体的な事態を想定しますと、
例えば、A国(日本と同盟関係にある米国だけでなく日本と密接な関係にある国も対象)ないしはA国の艦船に対してX国が武力攻撃を行ったと想定します。その場合、X国の軍艦が引き続き日本周辺海域を航行して、日本に対する武力攻撃の明白な危険を生じさせ、日本の平和と安全を脅かす重要な影響を与える「周辺事態」が発生した時には、「日本型集団的自衛権」が発動されて武力の行使が可能となります。このような状況に至れば、必要に応じてインド洋や中東海域を航行する日本及びA国のタンカーをX国の攻撃から護衛するため、海上自衛隊の護衛艦を派遣することが可能となります。
また、自衛隊がB国と共同してPKOあるいはPKF活動を実施している際、近くにいるB国が第3国から攻撃を受けた場合、B国救助のための武力行使は可能と考えます。
さらに、第3国が日本の同盟国あるいは日本と密接な関係にある特定の国に向けて発射したミサイルが日本上空を通過する場合には、撃墜可能かどうかの技術論と離れて、迎撃・撃墜できるものとみなします。
このほか、日本型集団的自衛権の行使と関連してグレーゾーンのケースにある事態については、個別に可否を判断して国会の承認を得ることといたします。

以上の考えを整理しますと「日本型集団的自衛権」の発動要件は、
@日本または日本と密接な関係にある外国に対する急迫不正の侵害があること。
Aこれを排除するために他に適当な手段がないこと。
B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。
C日本周辺の地域において、そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれがあって日本の平和と安全が脅かされて重要な影響を受ける事態(周辺事態)が発生すること。
となります。
もともと、国際法上の集団的自衛権とは、アメリカが武力攻撃を受けた場合にアメリカの要請があれば、自衛隊も地球の裏側まで行って、米軍と一緒に戦うことを意味しています。これに対して、日本国憲法の平和主義の理念を踏まえた「日本型集団的自衛権」なら、歯止めが明確となっており、多くの国民の理解が得られるのではないかと思われます。                (元内閣官房副長官、元外務副大臣、元防衛政務次官)
提案】  『 日本型集団的自衛権 』
安保政策研究会理事長  浅野勝人

 以前、集団的自衛権の行使は、平和憲法の下では認めるべきではないと考えていました。この確信的な理念が揺らぎ始めたのは、アジア・太平洋地域の安全保障環境の変化によります。複数の核兵器保有国を含む大規模な軍事力をもつ国が存在する一方、安全保障の地域協力枠組みは十分に制度化されていません。具体的には、中国、インドの軍事力強化に伴い国家間のパワーバランスが崩れ、特に中国は国際社会において存在感を増大させています。これに対して、強大だったアメリカの力は相対的に弱まっており、世界の統治構造に少なからぬ影響を及ぼしています。従来通り、アメリカの核の傘による抑止力があれば、日本は安泰とばかり言ってはおられない変化に私たちは直面しています。日本は、国際社会の主要なプレーヤーとして、国際協調主義に基づく平和主義の立場から、日本の安全およびアジアの平和と繁栄を確保するため、これまで以上に積極的な役割を果たしていくことが求められる状況にあります。
 従って、戦後一貫して平和主義を貫いてきた日本にふさわしい「日本型集団的自衛権」とはどんな姿なのか考えてみる必要に迫られています。

 従来から、我が国の平和憲法の下では、@ 日本に対する急迫不正の侵害があること。A これを排除するために他の適当な手段がないこと。B 必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当すれば、個別的自衛権の発動として武力の行使が許容されています。この要件は、日本が武力攻撃を受けた「日本有事」ないしはそれに準じた状況を想定していると考えられますが、集団的自衛権に関する国際法上の「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃」が発生した事態には到底あてはまりませんから、集団的自衛権の行使は許容されないと解されてきました。一方、この要件を踏まえながら、日本の安全およびアジア・太平洋地域の平和と繁栄に寄与する立場に立てば、やみくもに集団的自衛権の行使を否定するだけではなく、我が国の平和憲法の理念を具現化した集団的自衛権のあり方を探求する時期に来たと思われます。
 この場合、平和憲法の理念に沿った歯止めとして、周辺事態安全確保法の規定に基き「日本の周辺において、そのまま放置すれば日本に対する直接の武力行使に至るおそれがあって日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」(同法1条)を集団的自衛権の行使の許容要件に加えることを提案したいと存じます。
 これによって、周辺事態安全確保法が適用される状況下では後方支援活動を一歩踏み出して集団的自衛権に基づく武力の行使が可能となります。従って、日本周辺で「日本と密接な関係のある外国に対する武力攻撃が発生し、そのまま放置すると日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれが生じる事態」が「日本型集団的自衛権」の行使を想定する状況となり得ます。
 これならば、厳格な歯止め要件に縛られ、日本の平和と安全に力点をおいた「日本有事優先思考」のいわゆる平和憲法重視の「日本型集団的自衛権」の形態が構成されると申せます。

 ところで、周辺事態安全確保法では、日本周辺とは地理的概念ではないことを明確にしていますから、理論的には地球の裏側も対象になります。従って、「日本型集団的自衛権」行使の対象となる地理的限界をどの様に考えるべきかは極めて重要な要素となります。
「日本型集団的自衛権」の対象範囲は、確かに地理的な制約はうけませんが、「そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃の恐れがあって、日本の平和と安全に重要な影響をあたえる場合」が対象要件として優先されますから、そのような事態が地球の裏側で発生することは考えにくいとみるのが妥当な判断でしょう。現に周辺事態安全確保法をめぐって行われた議論の折にも「周辺事態は地理的概念ではないといっても、おのずと限界があり、例えば中東やインド洋で発生することは現実の問題として想定されない」とされてきました。
 但し、例えば、国際情勢の混乱に関連して、インド洋や中東海域を航行する日本のタンカーを護衛するため、海上自衛隊の護衛艦が派遣されるケースが想定されます。そして、混乱に乗じて他国から武力攻撃を受けた場合の対処については、日本の艦船が攻撃されたら、個別的自衛権を行使して応戦、反撃するのは当然の権利です。第3国の協力を得て共同オペレーションを展開していた折に、第3国が他国から攻撃された場合は、そのまま放置したら日本の艦船も武力攻撃の対象となる恐れは明白ですから、「日本型集団的自衛権」を適用して武力行使が可能となります。

 以上の考えを整理しますと「日本型集団的自衛権」の発動要件は、
@日本または日本と密接な関係にある外国に対する急迫不正の侵害があること。
Aこれを排除するために他に適当な手段がないこと。
B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。
C日本周辺において、そのまま放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれがあって、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態。
となります。
もともと、国際法上の集団的自衛権とは、アメリカが武力攻撃を受けた場合に要請があれば、自衛隊も地球の裏側まで行って、米軍と一緒に戦うことを意味しています。これに対して、日本国憲法の平和主義の理念を踏まえ、歯止めが明確な「日本型集団的自衛権」なら多くの国民の理解が得られるのではないかと考えます。                  (元内閣官房副長官)

◎ 王莽の幣制と鋳銭について
元外務相報道科 石井 満
 王莽は字を巨君と云い、父の蔓は漢帝国十代皇帝である元帝の皇后(王成君)の弟にあたる。王一族は皇后の血族と云うことでそれぞれ国政の中枢にあたり、華麗な生 活を送っていたが、王莽の家は父、蔓が早世したため一族から取り残され生活も貧し かった。不遇のうちに育った莽は、専ら家に在り儒教の聖典である「五教」の一つ「礼記」を学び知識を広め、母の考養に勤めていたが、やがて莽にも出世の機会がめ ぐってくる。叔父の大将軍王鳳が病床にあった時、寝食を忘れ看病したことなどが王
皇太后に認められ、黄門朗(侍従職)に登用された。これが王莽の政界進出の第一歩となり、次第に昇進していくのである。
 王莽三十歳の時には新都候となり、領地千五百戸、侍中に任じられ皇帝の側近とし て仕えるまでになった。宮廷の宿衛勤務にも精励し、節操堅く謙虚で、余財を賓客に散じ余すところなく、時の名士とも親交して知遇を得、ますます名声と人望を高めて いった。
 綏和元年(西暦前八年)成帝時代に叔父の王根が病に倒れ大司馬(最高の役職)を辞することとなり、王根は王莽を推薦し、ついに王莽は大司馬となる。時に王莽三十 八歳である。同二年(前七年)三月に成帝が崩じ、哀帝が即位したため王莽は大司馬を辞して故郷へ帰る。莽が去ったのち王皇太后は「太皇太后」の号を称した。
元寿二年(前二年)に哀帝が崩じ、平帝が即位し、王莽は再び大司馬として迎えられる。平帝は幼少であるため太皇太后が朝議に臨み天子に代わって政令を行い、王莽に万 事政事を委任した。ここにおいて百官及び宮中の兵みな王莽のおさめるところとなっ た。
 元始五年(西暦五年)平帝が崩じ、ここに元帝の子孫が絶えた。そこで王莽は漢帝 国九代宣帝の玄孫にあたる広戚候の子嬰(二歳)を連れてきて皇太子(孺子嬰)とし た。そして自らは孺子嬰を摂政する摂皇帝と名乗り、本格的に政事を行なうことと なった。このため王莽は周の制度による儒教の原理を尊重し、それを政治の運用のた めに取り入れた。
それから三年、初始元年(西暦八年)王莽は五十三歳にして禅譲という方式にて皇帝となり、「新」を建国した。こうして劉邦以来二百年間続いた漢帝国の天下を簒奪した。
 建国にあたり王莽は、理想的な国家建設を目指し、直ちに改革に取り組んだ。儒教 徒であった王莽の理想としたのは周公の制定した制度であり、その周制にならい「周礼」や「礼記」等儒教の経典に合わせて、中央官庁の官職名を改称し、地方の行政機構を再編成するなど、また、新しい貨幣を鋳造し、塩、鉄、酒を専売にして物価を安 定させようとしたが、新貨幣を二十八種類も発行したため経済混乱を招くこととなってしまった。
 また、土地制度や奴隷制度を改革するため豪族の土地私有化を廃すべく、土地を国有とした公田制を定め、個人の所有は一定に限定し、奴婢の売買を禁じた。しかし地主の勢力は強く、かえって混乱し、理想とはうらはらにこの制度も三年で止めることとなってしまった。結局この制度は、農民からも地主からも反感をかうものになった。
 これに加え、匈奴などの四夷との外交に失敗してしまう。特に匈奴の王・単于には王位を降格し、候としてしまい「降奴服于」の称号をおしつけようとしたので、単于は怒り「莽は宣帝の子孫にあらず」と言って完全に離反し、他の諸夷も反し、辺境を再び侵すようになった。
 これに対し王莽は再三大軍を発して攻撃するが、その侵攻を抑えることが出来なかった。前漢の末ごろから農民の蜂起、暴動は各地にたえなかったが、外征による軍費の増大と相まって苛酷な徴発は農民をますます苦しめ、役人の不正腐敗、軍兵の規律の乱れ などから農民は土地を捨てて流亡し、盗賊になる者も多かった。また、連年の旱害と飢饉は王莽政府に対する反感を一層駆り立て、武装蜂起となって現れ暴動は全国に波及した。
 ここに王莽の新政策はことごとく失敗に終わり、儒教理念に基づく復古調主義は夢とかした。天鳳四年(西暦十七年)南方の湖北・緑林山に農民が緑林の兵として蜂起し、翌 年、山東の青州では眉を赤く染めて赤眉軍と称した農民軍が大挙して反旗をかかげ た。
 また、その後、南陽には平林の兵が立って緑林、赤眉の軍に呼応した。同じ年、景
帝六世の孫にあたる劉演と弟の劉秀(後の光武帝)が共に故郷で挙兵した。劉秀は各 地の反軍を合わせて王莽の軍を攻めたてた。王莽も大軍を動員して戦かった。しかし地皇四年(西暦二十三年)十月王莽はついに反軍によって長安城未央宮殿に包囲され、斬り殺された。 時に王莽六十八歳、皇帝と称すること十五年にして「新」は一代で亡びた。

   ◎ 王莽の幣制と鋳銭について

 王莽は官制の改革と共に貨幣制度についても四次に亘って改革し、独自の銭貨を発行した。
一、第一次の改革
 王莽は居摂二年(西暦七年)皇帝と称する前年、一刀平五千、契刀五百、大泉五十を造った。この幣制では、一応旧習にそって前代の五銖銭との兼用を認めている。新たに発行した銭貨は、記重銭を改め、記値    銭として銭貨の比較を明確にしている。ま た、銭貨に内郭がつけられるようになったのも、形体上の新しい大きな特徴であっ た。
二、第二次の改革
 始建国元年(西暦九年)新たに小泉直一を造った。一刀平五千、契刀五百及び五銖 銭の使用を禁止し、専ら大泉五十と小泉直一の行用とした。
三、第三次の改革
 始建国二年(西暦十年)王莽は宝貨制を実施し、五物、六名、二十八品の貨幣を造った。
五物とは金、銀、亀の甲、貝、銅の材を云い、六名とは金貨、銀貨、亀貨、貝貨、銅貨、布貨を云う。二十八品とは小泉直一、幺泉一十、幼泉二十、中泉三十、壮泉四十、大泉五十までの銭貨六品。小布一百、幺布二百、幼布三百、序布四百、差布五百、中布六百、壮布七
百、第布八百、次布九百、大布黄千までの布貨十品。それに加えて金貨一品、銀貨二品、亀貨四品、貝貨五品の計二十八品である。
この二十八種の貨幣は計算が複雑で、庶民は使用を好まず、従来の五銖銭の方が便利
であるとして密かに五銖銭を使用することが行なわれた。その結果、いくばくもなくして小泉直一と大泉五十のみの通用とし、亀、貝、布(十布)等の行用は中止することになった。
四、第四次の改革
 天鳳元年(西暦十四年)、金、銀貨、亀貨、貝貨等の価値を調整する。
 新たに貨布、貨泉を造り、大泉五十と三品を平行使用させた。但し、大泉五十は貨泉と同価とするが、なお民間では所持しているものがあるであろうから、六年間の期限付きで行用するのを認めることとした。
この第四次の鋳銭は、第三次の複雑な宝貨制に比べ改善はされたが、しかし本来一個の貨布は重さ二十五銖、一枚の貨泉は重さ五銖、換当は貨布一に対して貨泉五である
べきであるのに、王莽は一枚の貨布を二十五の貨泉に値させると云う不合理を強制した。また、大泉五十を貨泉と等価にしたことも、それによって民間各層は多大な損失を蒙ることになったのである。
五、その他
 以上のほか王莽の銭貨として「布泉」が存在している。
布泉については文献に記載はないが、書体、製作から見て王莽期の銭貨と認められて おり、最近の研究によると、王莽末期の製作であると推定されている。
 なお、王莽銭の使用が中止されたのは建武十六年(西暦四十年)とされており、王
莽が死んでから十七年間も王莽銭が使用されていたこととなる。
      平成25年8月1日                               満泉堂 石井 満

安倍政権と集団的自衛権
 Name:柳沢協二 NEW! Date:2013/03/16(土) 20:41
最新北朝鮮レポート Name:寺田輝介 Date:2013/06/25(火) 20:47 
北朝鮮ウオッチング・レポート(2013/6・24)
最新「北」情勢の分析
元韓国駐在日本大使   寺田輝介
                     
北朝鮮は2月12日の第三回核実験に対する国連安保理の制裁決議、3月11日より開始された米韓合同軍事演習に激しく反撥し、同演習が終了した4月30日に至るまでの間、米国に「核の先制攻撃」などをちらつかせ、継続的に米韓に対し挑発的言動を行って来た。然るに5月24日突然崔竜海朝鮮人民軍総政治局長を金正恩特使として訪中せしめると共に、6月6日に南北当局者会談の開催、6月16日には米朝高官会談を提案するなど二ヵ月余りに及んだ強烈な揺すぶりから一転して「対話」を求める姿勢を演出し始めた。北朝鮮の狙いは何か、最近の北朝鮮の行動を検証すると共に、北朝鮮情勢の行方を探る。
1.強硬政策の狙い
国連安保理制裁決議、米韓合同軍事演習に対し異常とも言うべき激烈な反撥を示した金正恩政権の強硬策には対外的狙いと対内的狙いの双方が見られた。先ず対外的狙いであるが、開戦寸前と思わせるが如き高度の緊張状況を演出して、米国に対して緊張緩和のための二国間交渉を求める、韓国に対しては朴槿恵新政権の対北政策の緩和を求めることであった。就中、米国に対しては朝鮮半島に休戦状態が続く限り緊張状況が常時生起するとし、この状態を完全に解消するためには朝鮮戦争休戦協定を平和協定に転換する以外方途がないことを米国に認めさせた上で、米朝直接交渉を求め、米朝関係正常化を実現することにより北朝鮮の体制保障を勝ち取るとの長期戦略があると考えられる。対内的狙いとしては、国民に対し米韓合同軍事演習の実施は米韓の北朝鮮侵略の前触れと位置付け、国民に緊張感・恐怖感を与えることにより、暫し国民の関心を外に向けさせ、厳しい経済状況から目を逸らせることにあった(因みに、米韓合同軍事演習がいかに北朝鮮社会にインパクトを及ぼすかについては、拉致被害者であった蓮池薫氏が著書「拉致と決断」の中で「毎年春先になると、恒例行事のように行われた米韓合同軍事演習‘チーム・スピリット’のために、北朝鮮社会は緊張感に包まれた」と当時の状況を述べている)。更に緊張が高まる中、金正恩が前線に立つ勇姿を広く報道させる、例えば金正恩が3月29日未明戦略ロケット部隊の作戦会議を緊急招集し、米軍基地をいつでも攻撃出来るよう「射撃待機態勢に入る」よう指導した等を報道させ、金正恩が如何に軍を統帥、指導しているかを国民にアピールし、併せて「体制固め」につなげることを狙ったと見られる。4月6日付‘The Economist’誌は、平壌発特派員電として「ピヨンヤンでは、米韓を狙った脅迫、大騒ぎは国内向けであるとの印象を拭い切れない。若き独裁者金正恩が恐れを知らぬ最高司令官として写し出されている様に見えた。外に向けられた脅迫によって、北朝鮮の偏執性、強制された孤立、国民に課された労苦が正当化されている」と報じている。
2.強硬政策の態様
(1)挑発的言動の連発
今次北朝鮮の挑発的強硬策を分析して見ると、二ヵ月間にわたり継続的に実施されたのは脅迫的かつ挑戦的言動であつた。米韓合同軍事演習が開始された3月11日には「朝鮮戦争休戦協定が白紙化された」と宣言、同月17日付労働新聞論説で核の先制攻撃を主張、更に「米帝に土地を丸ごと差出し、再侵略を狙う日本も決して例外ではない」と論ずるなど日本も脅迫の対象とした。今回の北朝鮮の言動は過去に例を見ない暴力的言動であったが、従来通りあくまでも言葉の上での挑発であつた。
(2)「ムスダン」の展開
挑発的言動により高められた緊張下にあって、北朝鮮が4月上旬、中距離弾道ミサイル「ムスダン」二基を日本海側の元山北方のミサイル基地に展開したことは、言葉の上の脅迫とは異なり、実戦を想定させる動きであると捉えられ、いやが上にも緊張感を極限化する効果があった。もつとも北朝鮮の狙いは「瀬戸際政策」の具体的適用により米韓に最大限の圧力をかけることであったことには間違いない。なお、内外諸情報によれば、「ムスダン」二基の配備は、3〜4月に実施した米韓合同軍事演習に核兵器を搭載できる米軍爆撃機が参加したことに対する対抗手段であったと分析されている。
(3)「心理戦」の実施
北朝鮮が今回実施した特異な行為として「心理戦」の実施があった。4月5日北朝鮮外務省は在平壌外国公館及び国際機関に対し退避勧告を突然行ったのに加え、対象範囲をソウルにまで拡げ4月9日にはソウル在住の外国人を対象に「待避対策」勧告の挙に出たものの、外国コミュニティはこの勧告を深刻なものとは受けとらず、北朝鮮の「心理作戦」は失敗に終わった。
(4)「開城カード」の使用
北朝鮮は、「禁じ手」とも言うべき「開城カード」を今回初めて使用した。2010年3月の哨戒艦沈没事件、11月の延坪島砲撃事件の時すら、北朝鮮強硬派の李明博政権が躊躇した「開城カード」を北朝鮮が使ったことは、開城工業団地が数少ない貴重な外貨獲得源であっただけに驚きの念をもって受け止められた。開城工業団地を閉鎖に追い込んだ背景について、6月1日付「朝鮮日報」(電子版)は、同団地が北朝鮮の体制維持に悪影響を及ぼすとする国防委員会及び対南工作機関の偵察総局が同団地維持を支持する労働党統一戦線部等を押し切ったためと報じているが、真偽の程は定かでない。
3.対話攻勢の開始
二ヵ月余り継続された強硬政策は、米韓合同軍事演習の完了に歩調を合わせるが如く、5月に入ると一応矛を納めた。と同時に対話攻勢が活発に始められた。5月22日より崔竜海朝鮮人民軍総政治局長が金正恩の特使として訪中、6月6日開城工業団地につき南北当局者会談を提案、6月16日米朝高官会談を提案、19日には金桂寛第一外務次官が訪中、「戦略対話」を行うなど「対話攻勢」に一段とピッチを上げている。なお、5月14日よりの飯島内閣官房参与の訪朝受け入れは、「対話攻勢」の一環と言うよりは「日本と米中韓の足並みの乱れ」を突く(5月19日付「産経」)、北朝鮮特有の遊撃隊的戦術と解することが出来よう。
(1) 北朝鮮高官の訪中
崔竜海の訪中は、明らかに北朝鮮が追い詰められた状況下にあったことを示している。5月7日より実施された中国銀行による朝鮮貿易銀行との取引停止と口座の閉鎖が北朝鮮経済に打撃を与えたことは間違いない。対米韓強硬政策が何等具体的成果を生むことなく終わった現在、国民の関心は再び現下の生活困難に向かうことになる。このような状況に立ち至って、金正恩政権は対外強硬路線を対話路線に切り替えざるを得ず、日米韓の圧力に対抗するためにも、ミサイル発射、核実験の結果悪化した中朝関係を早急に修復する必要があった。金正恩が5月22日、腹心の部下である崔竜海を自分の特使として訪中せしめたのは、習近平国家主席に関係改善の意図を直接伝達せしめると共に、併せて北朝鮮を苦しめている金融制裁の緩和を陳情せしめるためであったと観測される。中国政府にとっては、北朝鮮政府に中止を求めたにも拘わらず断行されたミサイル発射、核実験実施は容認し難いところであり、中国政府の不満の見せしめとして安保理制裁決議に賛成票を投じ、自ら金融制裁を発動したものの、その結果として起きた中朝関係の悪化をこのまま放置できず、取り敢えず中朝関係の修復を図り現下の北朝鮮をめぐる緊張状態を緩和させることが中国の戦略的利益に合致すると判断し、崔竜海の訪中を受け入れたと考えられる。その代わり代償として六ヵ国協議再開を北朝鮮に飲ませる、また北朝鮮が強く求めている金融制裁緩和については国際社会の反応を見極めながらなし崩しに緩和するとの政策決定を行ったと見られる。崔竜海の中国政府関係者との会談においては、他の政治的メセーヂの伝達もあったと見るべきで、(イ)米朝直接対話の口添えを中国に依頼する(ロ)7月27日の祖国解放戦争勝利60周記念年と位置づける式典に中国最高指導部の出席を求める(ハ)6月下旬の朴槿恵大統領の訪中に対抗すべく金正恩の訪中招請を要求する(ビクター・チャ 米国ジョージタウン大学教授の指摘。5月30日付電子版「中央日報」)等の要請が中国側になされたと思われる。
(2) 米朝直接対話の呼びかけ
北朝鮮国防委員会報道官は6月16日、「重大談話」を発表し、朝鮮半島の緊張緩和に向けた高官会談開催を米国に提案すると共に、申北朝鮮国連大使も6月21日、ニューヨークで記者会見し、同趣旨の提案を行った。北朝鮮が米国との直接対話を求める姿勢は冷戦終結以来一貫しているが、オバマ政権は米朝対話のためには北朝鮮が核放棄に向けた一歩を踏み出す必要があるとの原則的立場を維持している以上、差し当たり米朝対話実現の可能性はないと見られる。
(3)開城工業団地をめぐる南北対話
韓国側の累次に及ぶ呼びかけに対し否定的反応に始終してきた北朝鮮が6月6日、南北当局者会談開催を提案してきた背景には、6月7日の米中首脳会談の前日と言うタイミングを狙った点はともかく、開城工業団地閉鎖に伴い、5万人以上の労働者が一気に失業、最大のドル稼ぎ場(年間8千万ドル超)を喪失するという経済的損失に耐えられなくなったことが最大の要因であろう。韓国側においても、進出企業のほとんどが中小企業であり、閉鎖に伴い深刻な影響を受けていると見られ、相互の経済的理由から南北間の会談を早晩軌道に乗せざるを得ないと思われるが、北朝鮮の常套手段として「開城カード」が他の外交目的、例えば六ヵ国協議開催に関連して韓国への揺さぶり等に使われ、南北当局会談の開催が影響を受ける可能性があり得る。
(4)日朝関係の動き
5月14日に訪朝した飯島内閣官房参与に対し、18日金永南最高人民会議常任委員長が接受するなど北朝鮮側は破格の厚遇を与えたと報じられているが、北朝鮮の思惑は先ず飯島参与の訪朝を利用して、圧力を掛けてくる中米韓三ヵ国に対し「対日融和」を演出することにより反撃する狙いがあったと言えよう。勿論北朝鮮の中・長期的戦略としは日朝正常化交渉を妥結し日本より経済支援を獲得することが至上課題であるが、飯島参与の訪朝の機会に交渉の最大の障害となっている拉致問題の落としどころを同氏との会談で探りを入れたと思われ、北朝鮮側は7月の参院選の結果を勘案しつつ、年内に日朝交渉の再開に乗り出してくるであろう。
4.北朝鮮情勢の行方
(1)朝鮮労働党中央委員会総会は3月31日、経済建設と核開発を並行して進める路線を採択した。更に4月1日の最高人民会議で経済改革派の朴奉珠氏を6年振りに首相に復帰させた。この一連の決定は核開発を続けつつ、国民の不満が爆発しないよう、生活改善を目指す経済政策を実施するとの決意を示したものであり、北朝鮮の求める対話路線のなかでも今後経済協力が特に重視されることになる。
(2)金正恩政権は当面、7月27日の朝鮮戦争休戦60周年行事に注力することになろう。式典に中国政府の最高責任者を招いて中朝関係の強固さを内外に示す、軍事パレードで北朝鮮の軍事力を世界に印象付けることを考えているのであろう。この政治的アジェンダの成否を握るのが中国である。現下の中国は、習近平国家主席の式典参加、金正恩の訪中招請、金融制裁緩和、ご祝議としての食糧援助等強力な対北朝鮮カードを手にしている。
(3)北朝鮮の戦略的目標が米国との関係正常化である以上、朝鮮半島における主役を演じ得るのは本来米国である。然るにオバマ政権は「戦略的忍耐」と称する政策のもとで、自らイニシアチブを取ることなく北朝鮮が非核化に向けた具体的措置を執ることを待つとの姿勢を堅持しており、自ら和平プロセスを動かす外交的意思を有していない。4月に訪中したケリー国務長官の習近平指導部との会談、6月の米中首脳会談の結果から判断すると、北朝鮮への対応については中国に任せ、その影響力行使に期待するとの姿勢が濃厚である。
(4)中国としては、北朝鮮の非核化を中・長期的目標と位置付け、当面朝鮮半島をめぐる緊張緩和定着のために、現在手にしている対北朝鮮カードを使い、六ヵ国協議の早期再開を試みるであろう。過去を振り返って見ると、六ヵ国協議のプロセスは朝鮮半島の緊張緩和には役に立ったが、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止出来なかったとの歴史がある。北朝鮮が渇望する米朝対話は今後再開される六ヵ国協議の枠内で行われると見られるが、非核化を求める米国と核開発を国是とする北朝鮮との対立は必至であり、再び「対話・交渉」の局面から「威嚇・挑発」の局面に移ることが予見される。その際再び北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射、核実験の実施に踏み切る可能性がある。この悪夢の再現を防ぐことが出来るのは現在中国の対北朝鮮抑止力のみである。北朝鮮に対し強いカードを有するようになった中国がどう動くかが、朝鮮半島の平和と安全の鍵は中国が握っている。
朝鮮半島の行方は依然不確実性に包まれている。


        (了)
 
安倍政権と集団的自衛権
       安保政策研究会常務理事 柳澤協二

1.安倍訪米は成功したか?
 2月22日、オバマ大統領との会談を終えた安倍晋三首相は、ワシントンD.C.で記者会見し、強い日米同盟の復活をアピールした。安倍氏は、防衛計画大綱の見直しや集団的自衛権についての検討を開始した旨を伝えて日米同盟の強化に向けた努力を強調し、オバマ氏は、日米同盟の強化がアメリカにとっても利益であるとしてこれを歓迎した、とされている。(日米首脳会談に関する外務省発表)
 従来の日米首脳レベルの会談では、両首脳がそろって記者会見に姿を現し両国の緊密さをアピールするのが通例であったことを考えれば、単独の記者会見で「同盟の復活」を強調した安倍氏に対して、冷淡とは言わぬまでもビジネス・ライクな姿勢を貫き、同盟をプレイ・アップしようとはしない米側の姿勢との「落差」が印象に残った。
 安倍氏は、年明け早々の訪米を予定していた。一方、米側は、事務的なアジェンダ・セッティングを先行させるべきだ(カート・キャンベル米国務次官補、1月11日朝日新聞とのインタビュー)として、日程を延期してきた。まずは日米首脳が新たな任期の冒頭に会談して緊密さをアピールし、集団的自衛権をキーワードとした日米同盟の復活をアピールすることを目的として訪米したい安倍氏に対して、米側は、TPP交渉への参加や、普天間基地の移設といった具体的な問題について、日本の姿勢を明確にすることを求めていた。
 首脳会談延期の見返りに米側は、1月中旬、日米外相会談に応じて、退任を控えたクリントン国務長官から、尖閣周辺で活発化する中国の動きをけん制して「日本の施政権を損なういかなる一方的行為にも反対する」との「踏み込んだ発言」をプレゼントした。
 これを受けて日本側は、首脳会談においてTPPへの参加が可能となるような合意に応じ、「交渉参加表明は夏の参院選後」と見られていた大方の予想に反して、3月15日、安倍首相がTPP交渉への参加を表明するとともに、普天間基地の辺野古への移設の前提となる埋め立て申請を沖縄県に提出する動きを見せている。
 こうした一連の流れを見れば、安倍訪米が演出的には「成功」であったと言えるとしても、それは、安倍氏が言うような「強い日米同盟が復活した」という意味において成功したわけではないことがわかる。米側は、日米同盟は一貫して強固であり、外相級はともかく、今さらそれを首脳級でプレイ・アップする必要はないと考えていた。
 アメリカにとっても首脳会談は成功だった。それは何より、日本のTPP交渉参加を確約させ、普天間移設に関する安倍政権の言質をとったからであって、安倍氏が集団的自衛権
に関する憲法解釈の変更を約束したからではない。
 首脳会談というものは、双方の一致点を強調し、WIN-WINの結果となるように事務方が準備するものであり、成功しないことはあり得ない。今回の日米首脳会談もまた成功を演出できたとしても、むしろ日米双方の優先順位の食い違いを際立たせることとなった意味で、多難な前途を予感させるものであった。

2.集団的自衛権を巡る「情勢変化」と政府の対応
 安倍氏をはじめ、憲法解釈の見直しを主張する人々は、我が国の安全保障を巡る情勢の変化を根拠としてあげる。その「情勢の変化」とは、いったい何を指しているのだろうか。ここで、冷戦期における現在の政府解釈の確立過程と、その後の「情勢変化」を受けた政府の対応について簡単に振り返っておきたい。 
(1)冷戦期の政府解釈
「集団的自衛権の行使は、自衛のための必要最小限度を超えるため許されない」との政府解釈は、1972年の政府見解以来たびたび表明されてきた。72年と言えば、第4次防衛力整備計画をめぐって国会で激しい論戦が行われた年であった。米ソ冷戦の中で、日本は、1957年の1次防以来、2次防、3次防、4次防と、防衛力整備のテンポを倍々ゲームで加速させていた時代だ。そのような情勢のもと、日本がアメリカの戦争に巻き込まれるのではないか、といった懸念があり、政府は、防衛力強化の一方で「巻き込まれ」への懸念を明確に払しょくする必要に迫られていた。
 79年のソ連によるアフガニスタン侵攻を契機に再び冷戦の対立が激化し、極東ソ連軍の近代化が顕著となった80年代には、シーレーン防衛における日本の役割が求められた。中曽根康弘内閣は、「防衛費のGNP1%枠」を取り払うとともに、「日本有事において日本防衛に当たる米国艦艇を護衛することは、(個別的自衛権による)自衛の範囲である」との見解を打ち出すことになった。
(2)冷戦終結とPKO
 1989年に冷戦が終わり、91年には湾岸戦争があった。我が国は、130億ドルの戦費負担をしたものの、「小切手外交」と揶揄されたトラウマが残った。92年、カンボディア内戦が終結すると、我が国はPKO法を成立させ、戦後初めて、自衛隊が外国領土における任務のために派遣された。それは、海外における武器使用を前提としたものでもあった。
 宮沢喜一政権は、PKO法において、自己防衛のための武器使用のみを認めたが、その論拠は、自己またはともに現場にいる隊員等の防御は自己保存のための自然権的権利であって、憲法が禁止する海外における武力の行使には当たらない、というものであった。この考え方は、その後のテロ特措法、イラク特措法にも受け継がれ、また、保護の対象も「自己の管理下に入った者」にまで拡大されている。
 なお、政府は一貫して、自己保存以外にいかなる武器使用が憲法上可能かについて触れていない。いわば、グレーゾーンとして残された部分となっている。
(3)周辺事態と新ガイドライン
 北朝鮮の核開発表明による1993年の半島危機を契機に、仮に米海軍が北朝鮮の海上封鎖に踏み切った場合、我が国が何の協力もできなければ日米同盟は崩壊するという危機感が生まれてきた。橋本龍太郎政権は、クリントン政権との間で日米安保共同宣言に合意し、冷戦後の日米同盟に、日本防衛に加えて地域の安定という新たな意義づけを与えることとなった。
 これに伴い、従来、安保5条事態(日本有事)を前提として研究されてきた日米防衛協力の範囲を我が国周辺における事態(いわゆる安保6条事態)における協力にまで拡大するため、1983年の「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)を見直すこととなった。
 自衛隊による協力は、情報、輸送、補給、遭難者の捜索など、それ自体は武力行使に当たらない活動に限定されていたが、それらの行為が米軍の戦闘行動と「一体化し」我が国自身の武力行使と評価されることにならないための「歯止め」として、「戦闘行動が行われていない地域」(非戦闘地域または後方地域)に限ることとされた。
(4)ミサイル防衛システムの導入
 北朝鮮によるミサイル発射を受けて、2003年我が国は、ミサイル防衛システムの導入を決定する。その実戦配備を受けて自衛隊法が改正され、事故等によって我が国領域に落下するミサイルに対する破壊措置が定められた。
他国のミサイルの撃破は、通常、武力の行使に当たることから、自衛権発動の要件を満たすことが必要であるが、事故等の場合は、相手方の攻撃の意図が不明であって未だ日本有事とは認定できないことから、自衛権ではなく、領域に対する被害防止のための警察権を根拠としたものであった。
 このように、日本政府は、冷戦期においても冷戦後においても、情勢の変化を踏まえ、最も重要な安全保障上のニーズに答える対応をとってきた。それゆえ、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更が必要であるというなら、ここで見てきた政府の対応ではなお十分ではないような事態が生起するような情勢変化があることを説明しなければならない。

3.第1次安倍政権の「4類型」への疑問
 2006年に第1次安倍政権が開催した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長;柳井俊二元駐米大使)では、安倍首相から示された4つの類型について考えてみたい。
 総じて言えば、安保法制懇の議論は、安倍首相自身によって提起された問題設定は、集団的自衛権に関する設問については軍事的にありえない事態を前提としている。また、国際的平和活動に関する設問については、我が国がどこまでの任務を引き受けるかという、すぐれて政策的な課題を法律論に置き換えたもので、発想の順序が逆転していると言わざるを得ない。
(1)公海上における米艦の防護
 公海上において米艦が攻撃されたとき、自衛隊の艦艇が近傍にいる場合、共同で防衛しなければ同盟の信頼関係が損なわれるため、米艦を防護することが必要ではないか、という問題提起である。上述の通り日本有事であれば、我が国の個別的自衛権として米艦を防護できるとの政府見解があるが、例えば平時における共同訓練やミサイル発射を監視する場合には日本有事とは言えない。
一方、そのような活動が攻撃の対象となるのは、平時とは言え情勢が緊迫した状況である。
かかる状況において、米軍が相応の警戒態勢を取らずにいることは想定し難い。また、相手の立場から言えば、北朝鮮であれ中国であれ、米艦を攻撃する場合には本格的な戦争となることを覚悟する必要があるので、それなりの戦時体制への準備の動きをとる。同時に、米軍の反撃を封じるため、在日米軍基地や自衛隊基地に対する攻撃を伴う可能性が高い。すなわち仮に攻撃があったとしても、日本近海であれば日本有事となるケースであって、我が国は、個別的自衛権によって米艦を防護することができる。
 そうではなく、平時の摩擦的衝突に類する攻撃であれば、米艦を防護しなければ「同盟が損なわれる」事態にはならないだろう。
北朝鮮のミサイル発射を監視する米イージス艦が日本海に展開した際、北朝鮮から戦闘機が発進し、航空自衛隊がスクランブルをかけていたとも言われている。それが事実だとしても、そうした平時の挑発行動に対して米軍は、いたずらに事態をエスカレートさせなかったということであり、自衛隊が過剰に反応して事態を悪化させることを望んでいるとは思えない。
ちなみに、政府が言う米軍の抑止力とは、米国の報復の脅威を想起させることによってそのような攻撃を思いとどまらせるという考え方である。米艦に対する不意の攻撃を想定することは、米軍の抑止力が働かない場合があることが前提になるが、それは、相手があえて戦争を意図し日本も当事者になる場合を除いて、どのような場合がありうるのか、説明が必要だ。
(2)アメリカに向かう弾道ミサイルの迎撃
 米国がミサイルで攻撃されれば、我が国の防衛にも支障をきたすことになる。また、日本に飛来するものは迎撃対象となるが、ミサイルの軌道を分析するには一定の時間が必要となるため、当該ミサイルがアメリカに向かう可能性がある場合も含めてこれを迎撃できるようにする必要がある、との問題提起である。
 ここに示されているとおり、ミサイルの迎撃には正確な軌道分析が必要で、軌道を解析するには、推進ロケットが燃え尽きて弾頭に与えられる運動エネルギーの総量が確定する必要がある。それを計算して弾頭が描くことになる放物線を特定し、その放物線上の未来予測地点に向けて迎撃ミサイルを発射することになる。
迎撃ミサイルは通常、弾頭よりも速度が遅いが、日本に向かうものであれば、相手の方が近寄ってくるために、追跡ではなく、未来の予測地点において弾頭にヒットさせることが可能になる。一方、アメリカに向かう長距離のミサイルでは、弾頭はすでに相当な高度・速度に達しており、しかも日本から離れて行く。これを、弾頭よりも速度が遅い迎撃用ミサイルで撃ち落とすことは物理的に不可能だ。
さらに、物理的に可能であったとしても、アメリカが米本土の防衛について他国に依存することはありえず、こうしたニーズが現実にあるとは思えない。
(3)国際的な平和活動における武器使用
 我が国が参加するPKOでは、自己防護のための武器使用しか認めていないが、任務遂行への妨害排除や、いわゆる「駆けつけ警護」を含む他国要員の防護のための武器使用を認めなければ、今後の国際平和活動への参加が限定される、という問題提起である。これは、国連の集団的措置や国連協力に関わるものであって、集団的自衛権を含む個別国家の自衛権の問題ではない。
 政府の解釈によれば、憲法は国際紛争を解決する手段としての武力行使を禁止しており、PKO等における武器使用ついても、相手が「国または国に準ずる主体」である場合には、これに武器を用いることは国際紛争に該当する可能性がある。一方、自己または自己の管理下にある者の防護は、自己保存のための自然権的権利として認められる、というものである。
 安保法制懇が指摘するように、国際紛争を停止・解決するためのPKOなどに参加することと、我が国が本来の当事者である国際紛争と同一に考え、そこまで憲法が禁止していると読むことに違和感があることは事実だ。
 一方、この議論は、武器使用ができないから任務を与えられない、という発想で組み立てられている。だが、武器が任務を決めるのではなく、任務が武器を決めることを考えれば、まずは、我が国がいかなる任務を果たす必要があるのかを議論すべきだろう。
例えば、事実上最も厳しい治安情勢のもとで行われたイラクにおける人道・復興支援でも、治安維持に当たるオランダ軍に対し、復興支援を任務とする自衛隊が救援するニーズも能力もなかったが、自衛隊の活動は全体として高く評価されていた。
また、文民である国連要員等を警護することについて、政府は、憲法上全く不可能という見解は述べておらず、げんに、警護任務を盛り込んだPKO法の改正作業も行われている。
(4)PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援
 我が国が国連PKO等に参加して各国軍隊の後方支援業務を行う場合、我が国独自の解釈である「武力行使との一体化」の基準を適用すれば、武器・弾薬の輸送や現地の治安情勢が変化した場合に医療を継続することが難しくなることが予想され、我が国が得意とする輸送・医療といった能力を生かすことができなくなるのではないか、という問題提起である。
 これは、「PKO等」とは言うものの、実際にはイラクや周辺事態を意識した問題設定だろう。「一体化」という基準は我が国の判断であって、例えば、周辺事態において米軍に基地を提供していることだけで、すでに相手国にとっては敵対行為にほかならない、ということはたびたび指摘されてきた。
 また、イラクの場合、非戦闘地域の認定が困難であったし、今後とも、混乱した他国の領域における活動には、同じ問題がつきまとうことも事実だ。
 一方、例えば周辺事態というのは「(日本有事ではないが)放置すれば我が国に対する武力攻撃につながるなどの重要な影響がある事態」において我が国に類が及ばないようにするために、事態の収拾に当たる米軍に協力するための概念だ。そこでは、日本有事との「線引き」をするための基準として「一体化」が用いられた。この基準を廃棄すれば、周辺事態を即時に日本有事と同等に扱うことになるが、そのことの当否が問われなければならない。
また、イラクについて一体化基準を使わなければ、例えばバグダッドや中西部のスンニ派地域への展開も可能となったわけだが、戦闘に巻き込まれる可能性が極めて高い地域に自衛隊を派遣する政策判断が妥当かどうかが問われなければならない。

4.アメリカは何を求めているのか
冷戦期アメリカは、ソ連海軍の太平洋への進出を制約するため、日本に対し宗谷・津軽・対馬の三海峡と日本周辺及び1000カイリに及ぶシーレーンの防衛を求めていた。我が国は、対潜水艦戦能力や防空能力の向上によって、「個別的自衛権」の範囲内で、アメリカの極東戦略に寄与してきた。
私は、1996年から97年にかけて、日米間で行われたガイドライン改定の作業に携わった。合意に達したとき、米側の担当者は、結果に満足しつつ、「グラスに半分しか水が入っていない」と言っていた。集団的自衛権に踏み込んでいないが、それでも、日本のやるべきことが明らかとなり、それゆえ米側が何を準備すべきかが明確になった意味で、重要な前進であると考えていた。
一方、2001年にブッシュ政権の国務次官補に就任したリチャード・アーミテイジは、日本が集団的自衛権に踏み込むことを公然と求める発言をするようになった。911を経て、インド洋、さらにはイラクに自衛隊が派遣される状況の中で、この要求は勢いを増していった。
これは、アメリカが主導する有志連合による新たな国際秩序維持の枠組みを作るために、同盟国である日本が、憲法の制約を超えてより積極的な役割を果たすことを求める意味があった。
イラク戦争の泥沼化を経て、オバマ政権が登場すると、アメリカの優先目標は、対テロ戦争から、台頭する中国に対するアジア太平洋地域における軍事均衡の維持に変わる。イラクのようにグローバルな同盟協力を求める声は聞かれなくなっていく。
それでもなお、アメリカの安保関係者の間には、日本が集団的自衛権を行使できないことが同盟の制約になっているという認識はある。だが、それをアメリカの対中戦略の中でどのように位置づけているのか、具体的な議論は聞かれない。
集団的自衛権推進派の一人であるマイケル・グリーンは、朝日新聞のインタビューの中で、集団的自衛権の制約をクリアするための日本政府の国会答弁をサポートしなければならず、「面倒が増えた」と述べている。また、最大の実質的障害として、「日本から得た情報をもとに米軍が軍事行動をとれば集団的自衛権に抵触するため、情報共有に支障がある」とし、「自衛隊を戦闘の最前線に立たせる意図ではない」と説明している。(2月21日)
私は、自分の経験からも、日本政府がアメリカ政府に細かい注文を付けたことを否定するつもりはない。だが、情報共有については、すでに自衛隊の艦艇・航空機が米国のデータ・リンクに加入しており、戦術情報の共有が行われている。政府は、「何度何分に向かって撃て」と言うなら、武力行使と一体化するが、敵機の位置情報を含め、単なる情報の共有であれば(「撃つ、撃たない」の判断をするわけではないため)、憲法には抵触しない、と答弁している。したがって、グリーンが「情報共有の障害」と言っていることが何を指しているのか、理解できない。
いずれにせよ、実務家であるグリーンの認識がこのようなものである以上、アメリカにおいても、集団的自衛権を行使しなければ同盟が機能しないような事態が何か、具体的なニーズを提示できていない、と言うべきだろう。

5.結語
安倍首相は、第2次安倍政権の発足とともに、第2次安保法制懇を立ち上げ、前回からの情勢変化を踏まえ、議論をさらに深化させようとしている。確かに、この6年間で、情勢は大きく変化している。それは、中国の台頭であり、アメリカの狙いがグローバルな対テロ戦争から対中均衡に変わったことだろう。
中国の軍事力を意識した場合、冷戦期の極東ソ連軍への対応と同様、日本の地政学的役割が重要になる。同時にそれは、グローバルな問題ではなく日本自身とその周辺における防衛の課題でもある。前回の安保法制懇のように、米艦護衛やミサイルといった事象を、日本の防衛と関連付けてとりあげるとすれば、大衆的支持は得やすいかもしれないが、理論的には日本有事と重なる部分がますます大きくなり、個別的自衛権として説明できることになる。
より重要なことは、中国との軍事均衡を目指しながら中国を国際システムに関与させ、中国との経済的相互依存を深めていく中で、アメリカが日本に何を求め、日本が何をすべきか、その政治的全体像がないまま、アメリカが必ずしも求めていないケースを前提に集団的自衛権を論じることに、果たして何ほどの意味があるのか、ということだ。
かつて集団的自衛権の不行使は、アメリカの戦争に巻き込まれないための「歯止め」であった。今日、アメリカが尖閣を巡る日中の対立に巻き込まれることを憂慮する時代となった。安倍政権は、その「情勢の変化」にどう対応していくのだろうか。

◎最近の北京情勢
講話  時事通信・元北京特派員  星野元男

浅野理事長 今日は時事通信社・元北京特派員、星野元男先生にお出でいただきました。じっくり講話をお聞きしたあと、星野先生を囲んで自由討議をいたします。
星野先生、それではお願いいたします。
星野;私は時事通信社で政治記者のほかに台北特派員、香港支局長、北京支局長を務めました。台北は蒋介石総統の時代。北京は華国鋒中国共産党主席時代の末期から胡耀邦党総書記の時代の初め。ケ小平党副主席が元気で、実力を発揮していた時代でした。
 私が大学で中国語を学んだ頃の学生は2種類。一つは中国革命に関心を持った人で左翼が多い。もう一つは中国古典に関心を持った人で、私はその一人です。大学の卒業論文は明代の思想家・王陽明でした。(注=修士論文が清末の思想家・章太炎)。
 最近、尖閣諸島、釣魚島の問題について非常に感情的な議論が多い。ここでは、それぞれの背景についてお話したいと存じます。尖閣諸島問題で話題になっている「核心利益」という言葉から始めます。
 オバマ米大統領訪中の共同声明は2009年11月に出発表されました。米中関係について書いた部分の後の台湾の部分で
The two sides agreed that respecting each other's core interests is extremely important to ensure steady progress in U.S.-China relations.
と書いてあります。台湾問題の部分ですが、「米中関係に重要」と書かれていて、核心利益という言葉が外交文書になった最初のものです。
 この声明では「3つの共同コミュニケの原則」を繰り返し述べており、米中間では3つのコミュニケを非常に重要視されています。あとで触れますが、昨年末に安倍首相の再登場を前に、中国外交部の報道官が「4つの政治文書」を強調しました。田中首相訪中時の日中国交正常化の共同声明、平和友好条約、江沢民国家主席の訪日の際の小渕首相との共同声明、胡錦涛国家主席の訪日の時の福田康夫首相との共同声明のことです。日中間ではこれを重視する必要があります。
 核心利益の話に戻ります。この「core interests」という言葉は2011年1月の胡錦涛国家主席訪米時の共同声明には入りませんでした。この言葉はその後、台湾問題だけでなく、チベット、新疆ウイグル自治区の問題でも使われています。胡錦涛国家主席訪米の時にも中国側はこの言葉を入れようとしましたが、アメリカ側が7時間にわたって抵抗した結果として入らなかった。
 しかし、米中関係の項目で
The two sides reaffirmed respect for each other's sovereignty and and territorial integrity. The Presidents further reaffirmed their commitment to the November 2009 U.S.-China Joint Statement.
と書かれています。2009年の共同声明のコミットメントを再確認したというのが中国側の解釈で、それはアメリカも認めざるを得ません。ただ、アメリカ側は言葉としては入れるのを拒否し通しました。
 最初のオバマ訪中のころの蜜月関係に比べれば、その後米中関係は冷めています。ブッシュ大統領の頃からですが、イスラム・テロ対策で協力し、朝鮮問題をめぐる6者協議では中国の力を借りようとしましたが、そのうち北朝鮮が核兵器を秘密裏に作り、だんだん米中関係も冷めてきました。昨年、米中で戦略経済対話、アメリカとインドで戦略対話をしたので、2つの文書を並べてみますと、米中関係が厳しくなって、アメリカとインドの関係が親しいことが読み取れます。


中国ではその後、2011年の9月22日に「和平発展白書」が作られました。中国には国防白書はありますが、外交白書はない。和平発展白書と対外援助白書しかありません。日本では国防白書はよく読まれていて、中国外交を論じるときに、国防白書を引用する人もいますが、「和平発展白書」はあまり注目されていません。この中に「核心利益」が出てきます。
 核心利益について、最初の「独立自主の平和的外交政策を断固として実施」の項で、「中国はあくまで国の核心的利益を守っている。中国の核心的利益には、国の主権、国の安全、領土の保全、国の統一、中国の憲法に定められた国の制度と社会の大局の安定、それに経済社会の持続可能な発展の基本的保障が含まれる」
と書いてあります。これを中国では「6大核心利益」と呼んでいます。ただ、その後の部分で「中国は中国の人々の利益と世界各国の人々の共通利益を結び付け」として、「共通利益」についても言及しています。
 米中関係でいろんな会談ができると必ず何らかの形で発表されます。例えば昨年9月17日に中国の国務委員・国防相の梁光烈とアメリカのパネッタ国防長官と会談した後の発表文や記事では、核心利益という言葉は梁光烈国防相の発言の中にしかありません。昨年5月の梁光烈国防相の訪米の時の発表文や記事でも同様です。それ以外の箇所では「共通利益」「根本利益」などが目立ちます。
 中国には、周辺諸国との「善隣友好外交」と、「大国外交」というのがあります。大国外交というのは主として米中関係。周辺諸国というと、やはり中華が中心であるという感じに受け取れます。中国自身は意識してないでしょうが、周りの小さな国にとっては、やっぱり中国は…という印象を与えます。日本は中国の周辺諸国の一つだが、他国を「周辺諸国」とは言わない。
 昨年の1月17日に中国共産党中央機関紙「人民日報」に「鐘声」署名の論文が出ました。その中で尖閣諸島、釣魚島の問題について
 「2010年9月に日本の巡視船が中国漁船に衝突した。中国側は厳正に指摘する。日本の巡視船は釣魚島周辺海域でいわゆる「取り締り」活動をしてはならない。ましてや中国漁船・人員の安全を脅かすいかなる行為もしてはならない。釣魚島の付属島嶼への命名の企ては、中国の核心的利益を公然と損なう振る舞いである」。
と書いています。これは17日の人民日報に載っているにもかかわらず、翌日の日本の新聞にどこにも載ってない。一週間くらいして香港の新聞などがキャリーして、それで日本の新聞に載った。最近、人民日報の国際欄が、日本の北京特派員に読まれていないのかなと思い、少し寂しく感じました。
 これが出て、いよいよ核心利益が東海の尖閣諸島(「釣魚島」)についても言われたかと思ったら、南海についても「鐘声」署名論文が掲載されました。核心利益は第一に台湾、それからチベット、新疆だった。南海のすべてかと思うと、陳健元駐日大使が回顧録で「南海全体が核心利益ではない」と書いていると友人から聞きました。
 どう解釈したらいいか。核心利益が最初に出てきたのが台湾関係で、台湾の政府が領土権を主張している島が尖閣諸島のほかにフィリピンにもあります。つまり東海、南海で台湾が領土権を主張している所が中国の核心利益に関わると考えるのが理解しやすいでしょう。台湾が主権を主張していて、中国が主張しないわけにはいかない。従って尖閣、釣魚島問題は台湾問題、あるいは台湾問題に準ずると考えるべきです。尖閣列島を取られたら沖縄を取られるなどと勝手に思い込んで、感情的にならない方が良い。


「核心利益」の問題は昨年6月6日に発表されたにプーチン大統領北京訪問の共同声明では
「お互いの利益を尊重し、社会制度と発展道路を自主的に選択する権利と、内政に干渉せず主権領土保全と安全など、核心利益問題の上でお互いに支持し、お互いに利益が上げ、対抗しない原則を尊重する」
と書いてあります。つまり核心利益の問題は、ロシアとの共同声明との言葉でも使われています。この言葉が入っている国は良好な関係にある国です。
 プーチンは「核心利益」を問題なく認めました。それには若干の説明がいります。中国は大陸で14の国と領土問題を抱えていたが、2国を除いて解決した。プーチン大統領がなぜ中国との領土問題を全て終えたかというと、早くやってしまった方が、何年か後にやるよりロシアにとって有利だと判断したからです。これから、中国の方が経済的にも軍事的にも伸びていくが、ロシアはそれほどでない。国力に差ができてから交渉するよりも、今のうちに解決すればその方が有利だというのがプーチンの判断でした。
 中ロは多くの問題を抱えていたのに解決しました。だから、日本の北方領土についても早くやってしまった方がいいとプーチンも考えているのではないでしょうか。それはそれとして、日本はきちんと交渉した方がいいと思いますが、、プーチンのように日本のことをよく知り、力を持っている人がいるうちにやった方がいいでしょう。
 中国は陸で領土問題を抱えていた14国のうち12国を解決して、残っているのがインドとブータンだけ。あとは東海と南海。その結果として、中ロ共同声明に書いてあるように、中ロ国境軍事力の削減で合意したとみられます。そうすると軍事の重点は領土問題が残っている方に移ります。日中国交正常化も平和友好条約も、中ソ関係の悪い時期にできた。中ロ関係が良くなると、日中関係が悪くなっても不思議ではありません。
 特にケ小平が訪米して帰ってきて、日中平和友好条約を締結して、続いてベトナムに攻め込んだ。その時にソ連が北から攻めてくることを心配して、日本ともアメリカとも関係を良くしておいた。社会帝国主義(ソ連)の覇権に反対、地域覇権主義(ベトナム)に反対ということに力を注ぐ一方で、尖閣諸島(魚釣島)の紛争棚上げを言った。今では少なくとも北方のロシアについては中国が心配する必要がぐっと減りました。それは重要視すべきことだと考えます。
 プーチンが公式訪問した時期に、北京で上海協力機構の会議に出席しました。中国では「上海合作組織」と呼んでいますが、この第11回元首会議が6月6日から7日に開かれました。最初にできた時は上海で開きましたが、各国が持ち回りに開いていて、昨年が北京だった。このメンバーを見てください。正式メンバーは中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン。オブザーバーとしてイラン、モンゴル、パキスタン、インド。元首会議なのでほとんどの国が大統領出席でしたが、インドだけは外務大臣でした。これは上海協力機構にインドがそれほど熱心でない証拠です。
 ほかにダイアローグパートナーというのがあり、アフガニスタン、トルクメニスタンが出席しました。次回からはアフガニスタンはオブザーバーに昇格し、ダイアローグパートナーとしてトルコが参加します。このメンバーを見ていると、大陸の西側がヨーロッパ共同体で、東側が上海協力機構になります。「東のNATO」とも呼ばれますが、安全保障条約を結んでいるのは旧ソ連邦の国の間だけで、中国とは安全保障条約がありません。だから中国もロシアも「東のNATO」ではないと言っていますが、テロ対策として軍事演習をしており、昨年は中ロ海軍の軍事演習が行われました。こうして見ると、やはり中国は大陸の国という印象を受けます。
 第18回党大会での胡錦涛報告は昨年11月14日に採択されました。そこでの言葉として「中国はさらに積極的な姿勢で国際事務に参加し、大国としての役割を発揮していく」と述べています。そこで「国連、G20、上海協力機構、BRICS」を挙げています。全部に出ているのは中国、ロシア、インドですが、インドは上海協力機構に腰が引けており、中国とロシアの関係は今非常にいい。中ソ同盟と言われた時代は、双方共産党政権でしたが、今はロシアで共産党政権が倒れ、国教としてロシア正教が正面に出ています。
 中国はAPECにも出席し、ASEANとの会議にも出席していますが、ここでは例示していません。歴史的に見てもアフガニスタンとかキルギスタン、ロシア、特にイランなどとの関係が非常に強く、やはり中国は大陸国家だなという感じがします。


釣魚島白書は発表された時に報道されましたが、あまり気付かれていない点を紹介します。釣魚島白書の中では明朝の東南沿海駐屯軍最高総帥・胡宗憲が主宰し、鄭若曽が編纂した「籌海(ちゅうかい)図編」で釣魚島を「沿海山沙図」に編入し、海防範囲に組み入れたことははっきりしていると書いてあります。8月23日に野田首相が竹島と釣魚島について記者会見した翌日に外交部のスポークスマンが発言した中にも明朝浙江提督胡宗憲が編纂した「籌海図編」と書いてあります。
 香港の明鏡出版社の「胡錦濤伝」によると、安徽省績渓県に今でも胡氏宗祠が残っているほど胡家は有名です。明代に戸部尚書を務めたのが33代当主の胡冨、34代が兵部尚書を務めた胡宗憲で、48代目が胡錦濤国家主席になります。胡宗憲は王陽明の再伝弟子(孫弟子)で、王陽明の文録に彼が序文を書いた本が2冊あります。中国にはなくなってしまったが、日本に残っていて、上海で出版された「王陽明全集」では、日本に残っていた本をもとに胡宗憲の文章が収録されています。
 胡錦濤は「親民政策」ということを言いましたが、四書の「大学」にある「民に親しむ」というところを、南宋の朱熹(しゅき)はそれを誤字だとして、「新民」(民を新たにする)と読み替えた。王陽明は原文通りに「親民」(民に親しむ」と読むべきだと主張しました。つまり「新民」という言葉を使うのが朱子学で、「親民」と読むのが陽明学。これは胡錦濤の先祖が陽明学である立場を明らかにしたものです。
 私は安徽省の黄山に旅したことがありますが、黄山の麓に績渓県がある。地元の観光ガイドが「胡錦濤が皇帝になった」と言って親指を立てて喜んでいました。地元ではそういう受け止め方なのです。
 胡宗憲は倭寇対策で有名ですが、実は徽州出身の中国人が倭寇の親玉になって長崎にいた。胡宗憲は自分の故郷と近いので、その母親に働き掛けて、長崎にいる倭寇の親玉を明朝に帰順させることで成果を挙げました。後に胡宗憲は北京で兵部尚書という要職に就きますが、当時の内閣大学首輔、今式に言うと首席皇帝補佐官が蓄財を非難されて失脚しました。胡宗憲はその人に引き上げられたというので投獄され、牢屋で自殺した。悲劇の政治家でした。胡宗憲は釣魚島と周辺の小島の名前を書いた地図を残しておいたことで何代も後になった現代で高く評価され、胡錦濤は非常に喜んだと思います。
 ただ、胡錦濤が自分の祖先を表彰するためにやったと言うわけにはいきません。台湾の外交部のホームページに歴史的経過を書いた資料があり、それにも胡宗憲編纂の書が引用されています。台湾の方でも釣魚島の領有権について資料を書こうとすると欠かせないからだと理解した方がいい。だから、野田首相と会った直後に日本政府が国有化をやったから胡錦濤国家主席が怒ったと言われていますが、やはり胡錦濤にとって釣魚島の問題はご先祖の評価にかかわる重要な問題だったと私は理解しています。


日中首脳会談について、社会科学院の日本研究所副所長の高洪は次のように書いています。
 「当時、国交正常化実現が両国の外交戦略における急務だったことを踏まえて、釣魚島によって国交正常化が妨げられるのを避けるために、田中−周恩来会談ではこの問題について、今後改めて話し合うことを約束した。これが黙契の始まりである」(「北京週報日本語版」2012年9月17日、原文は「人民画報」)
 これについての詳しい資料は日本の外務省に残っていない。中国では、まだ1972年分は、外交資料公表の時期に入っていません。今後公表するかどうかは分かりませんが、当時の張香山党対外連絡部副部長が回顧録を残しています。それによると、その時に周恩来が「きょうはここで話すのをやめよう」と言ったら、田中首相が「後で話そう」と言った。そしたら周恩来が「そうだ。後で話そう」と言ったという。これは既に日本で紹介されています。
 中国側が一方的に「今後話そう」としたのでなく、両方で言った。ただ、「今後話そう」というのは田中首相の提案というのではなく、周恩来発言−田中発言−周恩来発言という中で理解されるものです。
 高洪副所長は日中平和友好条約の時のこともきちんと書いています。
 「ケ小平副総理は福田赳夫首相と会談した際、「一部の問題について違った見方があることは理解できる。尖閣諸島を中国では釣魚島と呼ぶ。名前からして違う。しかし会談ではこの問題には触れない。……次の世代は、きっと我々よりは賢くなるだろう。大局を重んじよう」と述べた。福田首相はこれに反対しなかった」(同)
 福田赳夫首相が反対しなかったのを、中国側は双方の「黙識」、「共通認識」だと言っています。福田首相は反対なら反対と言うべきでしたが、言わなかった。
 田中首相、大平外相、福田首相、園田外相を含めて、当時の日本政府首脳は「領土問題は存在しない」などという言葉を使ったことはありません。私どもは、日本の政治を取材している時も、北京に行ってからも、日本側が中国側にそういう言葉を言ったという話は聞いていない。
 これについて高洪は
「1996年に国連海洋法条約が発効すると、日本の外務省は領土問題の存在と中国との間の黙約を事実上認めていた立場を突然変更した。このため中国の外交当局は何度も外交交渉を行った。1996年11月23日、中国外交部の銭其?部長は日本の池田外相と会談し、双方が釣魚島について達した共通認識を勝手に変えないよう日本に要求した。池田外相は、「日中双方のこの問題における立場は異なるが、冷静に対応しなければならず、これによって両国関係の大局を損なうことを避けるべく努力していく」との見解を示した」(同)
と書いています。
 池田外相は、中国との会談では、この程度のことまで言わないと中国側が納得しない。つまり「中国が日本と違う見解を持っていることを承知している」とか、「日中の見解は異なる」とか、その程度のことも言わないで、木で鼻をくくったように「領土問題は存在しない」という言い方では、過去の経過から見て、あまりよくないと判断したのでしょう。


次に国連総会での中国の外交部長の発言に触れます。楊潔?外交部長は「日本は日清戦争末期の1985年にこれらの島を窃取した」と言っています。日本では、盗み取ったとは何だと言われましたが、これはカイロ宣言の言葉の引用です。
「右同盟国の目的は日本国より1914年の第一次世界大戦以後に於いて日本国が奪取し又は占領したる太平洋に於ける島嶼を剥奪すること並びに満州、台湾及澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り、日本国は又暴力及貪欲に依り日本国の略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべし」(注)カイロ宣言(1943年11月27日、カイロにて署名)
 これを中国外交部長発言として騒ぐ人が日本にいますが、以前から台湾の外交部の声明などに出ている言葉です。明らかに日清戦争が終わった結果の話し合いによって、台湾が割譲された。その何カ月か前に日本は尖閣諸島を日本のものだとした。中華民国の立場は、日清戦争のときに取られたが、カイロ宣言に基づいて返されるべきものだったという立場です。そういう立場に立つと、「盗み取った」という表現を使うことになります。そうでない立場もありますが、勝手に言葉を使ったわけではないことはよく理解しないといけないでしょう。
 はっきり言って、1945年から沖縄返還までの間は日本には発言権も、責任もない。アメリカと中華民国がやったわけですが、その間のことは中国側のものには詳しく書かれていません。アメリカで「多?新聞」というネットがあり、昨年9月11日に1945年以後のことを書いています。中華民国の張群行政院長が国民参政会で「琉球群島はわが国との関係が特殊であって、わが国に返すべきだ」と言ったが、アメリカはこの琉球統治権に対する要求を拒絶したと述べています。つまり中華民国政府は1945年以降、中華人民共和国ができる前から、また台湾に移ってからも含めて、琉球について日本に返すな、中華民国に返せとアメリカに要求していました。
 台湾の外交部の資料でも、アメリカが奄美群島を日本に返そうという時に、中華民国外交部が1953年11月24日、アメリカにメモワールを提示し、
「琉球の最終処分について中華民国は意見を発表する権利と責任があると伝えた」
と書いています。つまり、奄美を日本に返すのはいいが、琉球については意見がありますということです。
 私は1969年から71年12月まで特派員として台湾にいました。着任の1年ぐらい前に、あの辺に石油が出るという話が出た時に、台湾の外交部の情報司長談話は「琉球に対する宗主権を留保する」という言葉を使っています。1971年から琉球と釣魚島を分けるようになりましたが、それまでは一貫して琉球を返せと言っていた。最近になって、琉球は米軍統治下にあり、米台には防衛条約がある。だから、釣魚島だけを特別に言わなかったのだと言っていますが、実際のところは気がつかなかったか、忘れていたのだろうと思います。
 「忘れていた」という言葉は、かつて周恩来が言ったことがあります。忘れていた責任は蒋介石にあるわけですが、そういう話は最近の人民日報にも中国外交部の声明にも出てこない。やはり中国は蒋介石を非難することはしません。1945年に要求していれば、そのときに決まっていたはずですが、1945年から沖縄返還までの間に、こういうことになったのはルーズベルトと蒋介石、つまりアメリカと重慶政府、あるいは重慶から台湾に移った政権の責任で、日本はその間のことについて中国からそれほど非難されることだとは思わない。ただ、日本も中国も台湾も、自分にとって都合の悪いことは言わないのです。
 昨年末の総選挙で自民党が勝ち、12月17日の外交部スポークスマン談話は「4つの政治文書」の原則に照らして日中関係を発展させるよう呼びかけました。一番目は毛沢東−周恩来の時の共同声明、二番目はケ小平の時の平和友好条約、三番目は江沢民が中国の国家主席として初めて来日した時の共同声明で、四番目が戦略的互恵関係で共同声明ができたのは胡錦濤と福田康夫ですが、戦略的互恵関係は安倍首相訪中で提案したものです。
 日中間で今のような状態がいつまでも続くわけがありません。安倍首相はたぶん今年、中国へ行くでしょう。その時にできるかどうか分かりませんが、習近平が国家主席として日本を訪問する頃には第5の文書ができると思います。1972年、78年、98年、2008年となると、やはり習近平訪日の頃に共同声明ができると思いますが、どう書くかは非常に重要です。
 釣魚島、尖閣列島を離れて書くことはできませんが、まず問題は「核心利益」を書くか。アメリカは核心利益を書かないで、相互利益とか根本利益とかいう言葉でやっているし、日本側は書かないように主張すると思います。これをどう書くかも含めてそろそろ検討が始まっていると思います。


次に習近平総書記の講話。これは今年1月30日の党政治局集団学習会の時のものでいろんな形で報道されました。そのうち核心利益の部分だけ抜き書きします。
「われわれは平和的発展の道を堅持するが、われわれの正当な権益を放棄するわけには断じていかず、国家の核心的利益を犠牲にするわけには断じていかない。いかなる外国も、われわれが自らの核心的利益を取引対象にすることを期待してはならない。われわれがわが国の主権、安全、発展上の利益を損なう苦々しい果実を呑み込むことを期待してはならない」
 それ以外にいろいろ書いてあって、本当は全文読まなくちゃいけません。長いのは昨年7月7日、清華大学で開かれた世界和平論壇の開幕式で同じようなことを述べています。主権についても核心利益も書いています。これの日本訳が見当たらない。11月に総書記になる前のものですが、今のところ習近平の講話でそれ以上長いものはないので、これが非常に参考になります。
 最後に、「海洋強国」とは何かに触れます。海洋強国というのは中国の海軍が拡張することのように受け取る人が日本にいますが、これは党大会の胡錦濤報告の「生態文明」の項目で出てきたものです。生態文明とは日本で言うと環境問題のことで、国土の資源開発とか砂漠化とかPM2.5とか、そういう問題です。
 国防部の記者会見が去年の11月に開かれ、質問者は中国の軍事担当記者で、「党大会で海洋強国が決まったが、中国の海軍はどうするのか」という質問でしたが、国防部のスポークスマンは、
「中国が海洋強国を建設するのは、海洋資源の開発能力を高め、海洋経済を発展させ、国家海洋権益を擁護し、経済社会の持続可能な発展を確保することであって、海上を拡張することや海上覇権を追求することではない」
「国家の正当な主権、権益を守ることは別に対外強硬ではない。国家の安全発展利益を堅く擁護し、いかなる外の力にも屈しないが、われわれが一貫して主張しているのは、国際紛争を平和的に解決し、ただちに武力に訴えたり、武力でお互いに脅し合ったりすることではない」
と答えています。はっきり言うと、「領土問題を国防部に回されちゃ困る。ちゃんと外交部でやってください」ということでしょう。

 次に山口公明党党首訪中の後の「中国軍網」の記事。中国軍網というのは人民解放軍の「解放軍報」という新聞のネットです。習近平が山口代表と会談した後、専門家を集めて座談会をしました。その中で国際戦略研究基金会の対外政策研究主任の?沱生が言ったことは
「中日両国の老一代、前の世代の指導者たちが達成した重要な共通認識に基づいて、まず横に置いて、手を離して、大同を求め小異を存する、大局を重しとして、共同利益を守るということにすべきだ」
 日中関係についていろいろなことが書いてありますが、釣魚島問題が書いてあるのはここだけです。たしかケ小平が言った言葉の通りだと思います。結局、今の紛争を棚上げにしようということです。実は、国防部も解放軍も慎重な態度なのです。
 この問題は台湾を抜きにしてはできない。先日、台湾の漁船があのあたりに行き、台湾の海上保安庁みたいな船がそばにいて、中国の公務船を見て、「ここは中華民国の領海だから、中華人民共和国の船は出てってくれ」と言ったそうです。台湾側の政府の船が来てそう言うと、中国の船は退いていかないとおかしくなる。中国は釣魚島が中国台湾省の一部だと主張しているからです。日本では、尖閣列島に中国軍が上陸したらどうするかという議論を受けて、軍事演習を米日でやるとか聞きましたが、あそこに中国の海軍や特殊部隊が来て、上陸して占領したら、これは台湾を武力で解放したことになる。今のところ中国は台湾を武力で解放しないという立場に立っています。
 国民党の元党首の連戦が北京に行って、胡錦濤と会ったり、習近平と会ったりしています。中国の海軍や特殊部隊が尖閣列島を武力解放するという話にはなっていません。台湾が独立するなら別として、そうしない限り武力解放はやらないと思った方がいい。つまり尖閣諸島、釣魚島問題は台湾問題の一環であるときちんと認識した上で、中国が台湾を武力解放しないで、平和的に処理する限り、中国の海軍は尖閣諸島に上陸しないと考えるのが自然です。
 ただ、問題は中国の海洋監視船など公務船が入って来て、日本側はそれを領海侵犯だと言っています。お互いに「毎度おなじみ」の感じで入ってきて、日本側が出てってくださいと言い、しばらくして出て行くということを繰り返している限りにおいて、衝突は起こらないのではないでしょう。
 やはり今のところ、5月にソウルで中韓日の首脳レベルの会議がある。ただ中国側で出てくるのは国務院総理の李克強です。そこである程度の話ができて、次は安倍さんが北京に行くという話になると思いますが、それほど早くはないでしょう。ただ、その頃から5つ目の政治文書をつくるという話が出てくると思われます。
 以上、どうすべきだということはあまり言わないで、背景を説明しました。日中関係はやはり米中関係、中ロ関係などをいろいろ見て、全体的に判断すべきであり、核心利益という言葉が尖閣諸島問題で出てきた以上、台湾問題との関係を十分に考えるべきです。
 中国の発言などを見て、けしからんと批判する人もいますが、台湾もほぼ同じようなことを言っています。中国が大国主義だと言うのなら、台湾も大国主義だという話になります。その辺は誤解しないようにしていただきたいと存じます。(了)


< 質疑 >

 杉浦理事 どうしても視点が中日関係になるが、星野さんが指摘するように台湾がポイントですね。

 柳沢常務理事 一つ印象としては、去年の今頃だったか、人民日報に社会科学院の学者の言葉で、尖閣が核心的利益とか、軍事的な対応は日本に先に取らせろとか、結構過激な論調が出ていました。今の問題は、直接は胡錦濤のメンツを潰すような形で、国有化を閣議決定してしまった外交技術的な失敗の話です。ただ、そこに至るには、ちょうどこの1年、2年くらいの間に、中国の尖閣に対する方針が、棚上げから、問題が存在することが明らかになるように変わってきた感じがします。問題が存在していることを日本が少なくとも認識しているという意味のことを言わないと、なかなか解決の糸口がない。そうなったのはたしかに外交的な失敗に基づく部分もありますが、中国自身も大きな方針がそのように変わってきた。棚上げでは済まなくなり、中国自身もハードルを上げた。中国内部の方針変更があったのではないか。その方針変更をもたらした背景は何だったのかが私の疑問です。

 星野講師 日中平和友好条約の後、10年くらいたって国家海洋法をつくり、その中に釣魚島を入れたことが中国側の行為として大きかった。日本も含めて、国連海洋法条約が発効したことは、両方ともいろんなことをやる機会になったと思います。領土紛争が存在することを認めることは、棚上げと全く同義です。われわれが現場の記者だった頃、ソ連が日ソ間に領土問題は存在しないと当初言って、歯舞色丹を返すことになっているのだからそれはおかしいと言い、結局存在することを認めたことがあります。ロシアに対して、そういうことを言うのはおかしいというのは分かる。ただ、韓国と中国に対しては、持っている方がそういうことを言っているけれども、実際には紛争は起こっている。詭弁を使えば、領土問題は存在しないが、領土紛争は存在することを認めると言えば、お互いが納得するのかもしれません。
 田中さんも福田さんも、大平さんも園田さんも、領土問題は存在しないとは言っていません。ただ、1996年頃から言い始めた。それを指摘した高洪さんは、去年の暮れに日本に来たので会いましたが、彼は政府のさまざまな資料、議事録などを見た結果として、それまでは言っていなかったのにその頃から変わったと判断しています。
 過去の問題は別として、この問題を解決しない限り日中関係は打開されません。それを何とかするのが政治家、役人の仕事です。ヨーロッパの例を見ると北海石油の問題などいろいろありましたが、ドイツとオランダ、英国とノルウェーの領土問題は、取れた石油の分配で解決しています。尖閣に石油が出れば、パイプラインを台湾に持っていくより手がない。石油が出ると分かれば、共同で調査をやるのも一つの手です。主権をきちんとしなければできないかというと、ドイツとオランダ、英国とノルウェーは主権の問題を抜きにして、石油の分配で合意しているじゃないかというのが台湾の馬英九の反応です。
 最近、防衛省関係者が石油の問題でない、中国の船にあそこを通らせるかどうかの問題だと言っています。しかし、原子力潜水艦が潜って外海へ出て行くときの問題まで議論しない方がいいと思います。

 柳沢常務理事 尖閣の当たりは水深も浅いし、あそこが軍事的な重要なポイントになるとは私は全く考えていません。おそらく陸上自衛隊が生き残りを懸けて、島嶼防衛として予算をつけないとやることがないから、そう言っているのでしょう。おっしゃるように、発掘された原油の分配の問題にしなければ解決しない。主権の問題はオールオアナッシングです。何とかそういう風にならないかと去年の夏に毎日新聞に短いコメントを書きましたが、どうも最近そういうことを言うこと自体が、売国奴扱いされるところがあって困ったものです。

 星野講師 陸上自衛隊はあそこで演習をやりたいのかもしれないが、やっぱり尖閣に上陸して、あそこを取るということは武力で台湾を解放することになる。それは中国自身が手を縛っていることなので、やったらお終いでしょう。

 柳沢常務理事 個人的にはあんなところに自衛隊乗っけたって、どうやって飯を食わせて水を運ぶのか。海上自衛隊に言わせると、日本が逆上陸しなくたって、艦砲射撃でおしまいですと。そういう類の話です。尖閣を取りっこする軍事作戦は、合理的に考えられない。

 宇治理事 レーダー照射の問題ですが、なんであんなことしたのか。おそらく中国軍部内の雰囲気に、旧日本軍の関東軍みたいにちょっと突出する部分があるんじゃないか。去年の10月か12月の環球時報に9人くらいの将校の座談会が載っていて、その中で「一発日本とやってみるべきだ」という類の発言をしています。そういうことも影響しているのかもしれません。

 柳沢常務理事 自衛隊出身に聞くと、昔からよくあることだそうです。ただ、2つ意味があって、一つは、米英軍がイラク戦争の後、ノーフライゾーンを設けて監視飛行をしているときに、地上の地対空ミサイルの電波を照射されたことを理由に、自衛の目的で爆撃した。それくらい軍事的にはやばい行為であることは間違いない。だけど、もう一つの側面は、お互いが同じ周波数で交信するのは国際UHFがあって、それは必ずオープンだから、お互いにその気になればやりとりできる。それとは別に兵器の照準の周波数は実は軍事秘密で、ロシアの偵察飛行は、そういうものを取るためにわざわざ来て挑発的な飛び方をして、そのときに日本が出す軍用電波を分析する役割を持っています。実は、自衛隊も同じことをやっている。そういうことをやっているのを承知で、FCSレーダーを照射するということは、そのレーダーの周波数が分かれば、その周派数に向かって飛んでいくミサイルを撃てばいいわけだから、あまり軍事的には賢いやり方ではありません。やろうとするときは今まで使ったことのない違う周派数を使うと思いましが、そうやって個別に手の内を探りながら、ちょっとホスタイルな形で交流を深めている部分は、軍隊においてはよくあることです。防衛省でも、海上の衝突防止協定の話し合いに入る状況にあったので、それを早くやらないといけないと思っているようです。ただ、ああいうことをやってくるのは、軍の中の勢いなのではないか、そういう勢いを党中央がコントロールし切れていない。3日間かかって、外交部が事態を掌握できず、当初、知らなかったというのは、やっぱり現場の飛び上がりかなと思います。

 徐 研修生 中国の関係者に聞くと、やってないと言う。少なくとも党中央に報告しないとそういうことはやってはいけない。中国はFCSの周派数を公表しているが、日本側は提示していないというのが関係者の情報です。

 柳沢常務理事 それはほかに言いようがないからだと思います。やったと言っちゃったら、国際的に、特に法律のどこにということではないが、国際常識としてあまりにもひどいから、事実そのものを否定するしかないでしょう。日本はさらにそれを追い詰める必要はありません。証拠があると言ったら習近平の面目は丸つぶれです。だからこの話はとりあえず過ぎたことにしようやということでいいのだろうと思います。

 寺田常務理事 やはり今の日中関係を見ていて、これだけ国民感情が高まったときに、両国政府が直接接触するのが非常に難しい。間接的にならざるを得ません。ASEANフォーラムとか、マルチラテラルな中から関係を追求していくのが一つの外交的戦略論だと思います。ただ今の日中関係の打開には非常に時間がかかると思います。東アジアの紛争、外国人に英語で説明するときには flash point という言葉を使いますが、一つは北朝鮮、もう一つは尖閣問題。しかし、尖閣問題について安保条約の対象地域である以上、戦端が開かれることは考えられない。やはり中国の戦略は、武力紛争を起こすことではないと思います。
今非常に危険だと思っているのは、北朝鮮が思わぬところに行ってしまうのではないか。金正恩体制になって、若い頃ヨーロッパで教育を受け、比較的理性的な行動を取るかと思いきや、やはり金正日の遺勲政治を引き継いで核武装をする。去年の12月12日の長距離弾道弾はとにかく軌道には乗った。それがそのままICBMではないが、北朝鮮の問題は、長距離ミサイルの問題と核実験の成否との組み合わせです。最近のアメリカの専門家の議論によれば、仮にノドンを1300〜1400キロのところを800キロにすれば、今度の実験の結果、核弾頭は乗っかると言います。これは日本にとっての一つの脅威になるし、もちろん戦術核ということでスカッドに乗っかれば、中国も場合によっては対象になります。中国は今以上に危機感を持たなければいけない話です。だから今や中国にとって北朝鮮は、核心的利益じゃなく「核心的関心」という言葉を使った方がいいかもしれない。
グーグルの地図について、アメリカの解説を見てみると、トンネルが二つある。一つ使っただけで、まだ一つ使えます。そういう危険な状況にあります。もう一つ危険な状況は、北朝鮮がスカッド、ノドンに、数は少なくとも核弾頭を装備できるということになれば、今度は韓国に対して揺さぶりをかけてきます。こうなってくると、やはり北朝鮮をどうにかしないことには、日本にとっても、習近平新政権にとっても重大事です。ですから北朝鮮問題を入口にして、マルチの会合、日米韓に中国を入れて4カ国。もしくは、ロシアはあまり入れても意味がないが5カ国会議をやる。外相レベルのマルチおよびバイの会談を重ねて助走に時間をかけ、本来の日中首脳会談を含む首脳レベルの会談が行われ、そこに尖閣の問題も入る。そういうような一つの道筋が考えられるんじゃないでしょうか。
 そこで出てくるのが今度の韓国の新政権です。朴槿惠政権を見ていると、朝鮮半島の置かれた地政学的な位置を考えて本来の役割を果たしたいと考えています。今度の就任演説は興味深かった。国の順位は米中日ですが、韓国の考えは、日中を引き込みたいという非常に強い思いを感じます。今の朴槿惠大統領の立場は、前の政権のように硬直的な態度でなく、対話をしたい。ただし核実験は許さないという決意です。そうなると中国の関心も当然高まってきます。

 柳沢常務理事 今までの流れから行くと中国は6者協議をやる。しかし、北朝鮮を除いた5者協議はやならい。

 寺田常務理事 非公式にはやっている。

 柳沢常務理事 非公式にはね。だけど、5者をやっちゃうと北朝鮮の孤立化を認めてしまうことになる。

 寺田常務理事 だけど今の状況は限度を超えてきた。

 柳沢常務理事 私もそう思います。実は今までの核実験、ミサイルはアメリカに対する外交メッセージだと基本的に見ていましたが、どうも違うんじゃないか。寺田元大使がおっしゃったように、私は次も核実験をやると思う。ところが、アメリカは核の放棄を宣言しなさいというのが交渉の前提です。北朝鮮は今や核保有国であることを認知しなさいというのが前提です。合いっこない。そうすると、以前のように外交カードとして使いながらアメリカの譲歩を引き出すのでなく、いっそ核保有国になっちゃうことに今や重点を置いてきています。そう変わっちゃった。核保有国になった北朝鮮をどうするのか、あるいは北朝鮮自身が核保有国になった上でどうするのか、ゲームの論理が変わってきちゃうのではないでしょうか。

 寺田常務理事 大事なポイントはやはり戦略的なインタレストというか、東アジアにおける平和と安定を確保するというのは日中の共通なインタレストです。それを何か、おかげさまで金正恩がつくってくれた。これは使うべきじゃないか。ただ、中国は中国でインタレストがあるし、北朝鮮のやり方は日中韓がバラバラの時が一番いい。今が北朝鮮にとっては絶好の戦略的環境です。
去年の具体的なケースはわかりやすい。去年の2月に北朝鮮と米国で協定ができた。核濃縮を停止すればアメリカは食料援助する内容です。その後に4月になってミサイルに失敗する。その判断は、遺勲の方が大きいという考え方と同時に、軍部は激しいパージが行われています。強硬な軍事路線を取ること自体が、金正恩の支持基盤を固めていると彼は見ています。軍事演習を一生懸命やって意図的に外へ見せたり、ウェブサイトでオバマが火の中に燃え尽くすような画像をつくったり、非常に精巧です。実は、彼は懸命に国内の引き締めに重点を置いていますが、食糧危機の状況に入ってくるのは間違い無い。

 柳沢常務理事 ちょうど昭和19年後半から20年にかけての日本の状況のように、大本営発表で勇ましいことを言って引き締めて、本土決戦を最後は避ける。そういうことをしないと持たなくなってきた。

 寺田常務理事 そういう点はやはり日本と中国が危機意識を共有できます。外交当局者、外務大臣レベルで話し合うことが重要なきっかけをつくると思います。

 杉浦理事 寺田さんによると、習近平と安倍との会談は少し時間がかかる。そうすると、日中首脳会談よりも米中が先行する可能性はないですか。

 星野講師 とりあえず習近平はモスクワに行く。最初の訪問はほとんどモスクワで決まったとみます。やはり、今のところロシアを先行させて、アメリカは後です。ただ、戦略経済対話は毎年やる。去年は5月にやったから、今年もその頃やると思います。今度はワシントンでやる番です。外務大臣、防衛大臣、財務大臣もワシントンへ行く。

 杉浦理事 ケリーは親中派です。かなりオバマ政権は対中関係改善に傾斜してくるんじゃないかという感じを持ちます。

 星野講師 習近平はすぐ行くつもりはない。去年、副主席として行ったから、今年はないと思います。来年はあってもおかしくない。そうなれば2年ぶりの訪米となります。

 杉浦理事 オバマの訪中はどうでしょう。

 星野講師 実現すれば2009年以来になります。

 浅野理事長 今回の日米首脳会談ですが、安倍総理はある種の期待を持って行って、その種の期待は果たした。あれもやります、これも検討します。いい子ちゃん振りを発揮して8割方、目的を達しました。最近の日米首脳会談の中では成功の部類だったと思われます。ところが、出てきたコミュニケの内容です。もっとも、コミュニケを出せたこと自体、日本の総理大臣として久しぶりにハワイトハウスから重く見られた証しかもしれませんが、出てきたものがオールTPP。安保抜きの日米共同声明はほかに例がないのではないですか。記者会見でも、対中国政策について、安倍首相は何か言ってほしかったかも知れませんが、オバマ大統領は一切触れずにノーアンサー。日米首脳会談の中で、安倍首相は言うべきことは全て言って概ね目的を達しましたが、オバマからは「日中のいさかい・紛争阻止。日中打開の責任」を逆に背負わされたのではないかとわたしは見ています。安倍首相は、実は日中関係の改善を急ぎたいのが本音ではないかと思います。

星野講師 主権については中立で、施政権は日本に渡したと言い分けています。主権には関与しないから日中でやってくれというのは、ニクソン、キッシンジャーのとき、1972年に沖縄返還とニクソン訪中があったときからずっと変わっていません。今、尖閣で問題を起こしてくれるなということは、アメリカは中国側にかなり強く言っています。ですから、当然、日本に対しても同じスタンスで迫ったと読むのは妥当な見方と考えます。

浅野理事長 ありがとうございました。際限なく議論が進みそうですので、きょうのところはこれで打ち止めにします。星野先生、安保研の勉強会にまた遊びに来てください。
(了)



[3609] 第三次核実験後の北朝鮮をめぐる国際関係 Name:寺田輝介 
NEW! Date:2013/03/16(土) 02:59 
第三次核実験後の北朝鮮をめぐる国際関係
             2013・3・13
               元駐韓大使・寺田輝介

国連安全保障理事会は3月7日、先月12日に強行された北朝鮮の核実験に対する制裁決議を採択した。今回の安保理決議は、米・中の事前協議を経て作成されたものであるが、過去3度の安保理決議に基づく制裁を大幅に強化し、人、物、資金を通じて北朝鮮を締め付けることを狙っている。同決議は、法的拘束力のある国連憲章第7章41条(非軍事措置)に基づき、金融制裁や貨物検査を義務づけている。北朝鮮は既に安保理制裁に強く反発し,強硬姿勢を示しており、朝鮮半島は一段と緊張の度合いを強めている。本稿では制裁決議の実効性、制裁決議採択の結果、緊張激化の悪循環に陥った北朝鮮をめぐる国際関係の行方を検討する。
1. 3月9日付韓国「朝鮮日報」社説は、今次安保理決議につき、「当初全ての物質と資金を統制するとされていたのが、核とミサイルに関連する物質と資金の移動の阻止に変った。北朝鮮を行き来する船舶と航空機に核やミサイルと関連する物質が積まれているかどうかあらかじめ把握するのは難しい」、「北朝鮮に致命的な打撃を与え、政策を見直させるまでは至らないだろう」と指摘している。
制裁決議の実効性の鍵を握っているのが中国であることは言を俟たない。中国は昨年12月の長距離弾道ミサイル発射を受けた国連安保理決議で、北朝鮮が核実験に踏み切った場合、「安保理として重大な行動を取る」との文言に同意したことからも、今次制裁強化決議に同調すると期待されていた。然るに今回特に注目されたのは、北朝鮮の核実験に対する中国国民の反発や不満が、抗議デモ、インターネットによって強く政府にぶっけられたことである。最終的に中国政府が格段に踏み込んだ内容の決議案に応じた背景には、中国政府の核実験反対を無視した北朝鮮に強い反発を示す必要性と北朝鮮をかばいすぎれば国際社会における信用を失いかねないとの認識があったことは当然であるが、国民の反北朝鮮感情を考慮せざるを得ない側面があったことは見逃せぬところである。
前記「朝鮮日報」は「中国が航空、港湾、鉄道、道路などを管轄する政府機関に対し、国連制裁決議を厳しく順守するよう指示したことは、新たな変化と言えるだろう」と評価している(同様に3月9日付「朝日」社説も「中国の変化を歓迎する」としている)が、果たして中国が最後まで厳密に安保理決議を履行するか、過去の安保理決議の不十分な履行実積から見ると、疑問なしとしない。中国は北朝鮮の体制崩壊を望んでおらず、制裁決議の履行を梃子に、金正恩政権に外交的かつ心理的圧力をかけると見られものの、その戦略的狙いは、北朝鮮を国際社会との対話に戻らせ、6ヵ国協議の再開を約束させることであり、金正恩政権を追い詰める意図はない。
2.各種報道によれば、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの開発に要する費用は5億〜6億ドル、核兵器開発には8億〜9億ドルを要すると見積もられている。北朝鮮の貿易収支は恒常的な赤字構造であることからも、核・ミサイル開発経費には、中国に対する鉱物開発権の切売り、非合法製品の輸出、兵器類の合法・非合法輸出,開城工業団地事業等から捻出される資金が使われていると見られる。安保理決議が採択された結果,中国の協力が得られる限り、禁輸品の阻止、核関連の金融取引の凍結はある程度可能となるが、北朝鮮の核・ミサイル開発を完全に阻止するには程遠いと言わざるを得ない。2005年の米財務省によるマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア口座凍結措置は、同銀行で金正日総書記の資金管理をしていた「39号室」や武器取引関連の口座が凍結の対象となり、金正日政権にとり死活的な問題となったが、今次安保理制裁決議には金正恩政権に致命的打撃を与える金融制裁措置はない。また南北の利害関係が一致している開城工業団地事業(この事業を通じ、2012年の南北の交易額は20億ドルに及んだ)が制裁対象から除外されていることも決議の実効性を弱めている要因である。
3.北朝鮮の核実験実施がオバマ米大統領の2期目で最初となる一般教書演説の直前であったことからも、オバマ大統領は北朝鮮を強く非難し、一般教書演説の中で「この種の挑発は、さらなる孤立を招くだけだ」、「核兵器を放棄するという約束を果たすよう北朝鮮に要求する」と警告したが、果たしてオバマ政権の強硬姿勢は何時まで続くであろうか。歴代の大統領は北朝鮮に対する強硬姿勢と対話姿勢との間で揺れ動くのが常である。第三次核実験の狙いは、内外の識者が指摘している通り、金正日の遺訓を受けた金正恩が自己の権力基盤を固めることにあり、加えて「核保有国」の立場で米国との交渉を求めることである。差し当たり、オバマ政権は安保理決議を履行する立場を堅持するが、金正恩政権は更なるミサイル発射と核実験実施による瀬戸際戦術の行使により、米政府に揺さぶりをかけることになる。3月7日の北朝鮮外務省報道官の声明(「米国が核戦争の導火線に火をつけようとする以上、核の先制打撃の権利を行使することになるだろう」)は、北朝鮮の瀬戸際戦術展開の第一声である。
米国は1990年代「北朝鮮は遠からず崩壊する」との甘い見方をしていた。最近まで核開発であれ、ミサイル開発であれ、米本土への脅威はないとの認識が広く共有されていた。然るに、昨年12月12日に発射された長距離弾道ミサイルは米本土に到達し得る技術的可能性を示した。更に2月12日に強行された第三次核実験が、北朝鮮が主張するように「小型、軽量化し、爆発力を高めた」核爆発であったとすると、米本土を狙う核弾頭搭載可能な長距離弾道ミサイル配備の危険性が出てきたことになる。この様な状況を読み取ったが故に、オバマ政権は2月12日、「北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル計画は安全保障上の脅威だ」との声明を出し、国連の場で厳しい制裁決議の採択を求めた他、大規模な米韓合同軍事演習を開始し、3月11日には北朝鮮の外国為替業務の中核銀行(「朝鮮貿易銀行」)を新たな制裁対象に加えた。一方、北朝鮮は先ず軍事的恫喝を梃子に朝鮮半島に緊迫状況を演出し、米国の反応を窺うとともに米国の強硬姿勢が変わらぬ場合には、ミサイルの発射、核実験の実施による脅しをかけるであろう。このような事態に立ち入ると、議会、世論も「対話」を求める声の方が強くなり、オバマ政権としても当面強硬路線を維持するものの、議会、世論の反応を勘案せざるを得ず、対話路線復活のタイミングを探ると見られる。
4.北朝鮮の瀬戸際政策の鉾先は目下韓国に向けられている。北朝鮮の祖国平和統一委員会は3月8日声明を出し、11日から南北間の不可侵合意を破棄すると宣言した。併せて朝鮮半島非核化に関する共同宣言の完全白紙化や、板門店の連絡ルートの閉鎖も表明した。又朝鮮中央通信によると金正恩は3月7日、北方限界線に近い茂島の防衛隊(2010年の延坪島攻撃にかかわったとされている)を視察したとされている。北朝鮮のあからさまな挑発に対し、韓国の朴政権は強い懸念を示しつつ、米韓合同軍事演習の実施によって対北朝鮮抑止力を示そうとしているが、他方北朝鮮が態度を改めるならば、昨年の大統領選挙キャンペーン中に打ち出した南北間の「信頼のプロセス」を推進する用意があることを示唆し、和戦両様の構えを示している点が注目される。2月18日付韓国「中央日報」(電子版)が「多くの国民は北朝鮮の核に鈍感だ。韓国社会は“観戦者心理”に慣れている」と指摘しているが、筆者の韓国勤務の経験に照らすと、20台から40台にかけての韓国人には北朝鮮の「脅迫慣れ」とも言うべき心理状況が見られ、北朝鮮の脅迫行為が強まればむしろ北朝鮮の脅威を減らす為にも対話すべしとの声が強まると予想される。世論の動向に敏感な政府は、強硬姿勢を改め対話姿勢モードに切り替え、「信頼のプロセス」に入る可能性がある。この点強硬姿勢を最後まで崩さなかった李明博政権とは異なるところである。
5.安倍総理は8日、今回の国連安保理決議について「高く評価する」との談話を発表した。この高い評価は、安倍首相がこだわってきた国連憲章第7章に基づく拘束力のある制裁が明記されたからだとされている(3月8日付「朝日」)。8日の衆院予算委員会では、安倍首相は「各国がこの安保理決議にのっとって義務を果たしていくことが重要だ」と答弁しているが、今日本にとり重要なことは、米・韓の対北朝鮮強硬政策が今後修正される可能性があり得ることを想定の上、米・韓の路線変更に突然取り残されることなく、常に共同歩調を取れるよう、日・米・韓三ヵ国の事前協議体制を築き上げる等の外交努力を始めることである。その為には李明博政権下で悪化した日韓関係の改善が急務である。北朝鮮の第三次核実験の結果、北朝鮮が核弾頭の小型化を目指していることが明らかになり、米本土を狙う長距離弾道ミサイルのみならず、日本を射程内に収めているノドン・ミサイル、韓国向けのスカッド・ミサイルにも核弾頭が装填される危険性が現実のものとなったことからも、日・米・韓のミサイル共同防衛システム構築の検討、そして日本については集団的自衛権の容認が必要になったと言えよう。
6.ガルーチ元米国国務次官補が本年2月19日、ソウル市内で講演し、「北朝鮮との対話を重視する関与政策であれ、封じ込み政策であれ、我々が20年間に取ってきた政策は失敗であった」と述べたと報じられているが(2月20日付「毎日」)、米国の北朝鮮政策の失敗は、政権交代の都度、「強硬政策」と「対話政策」の間を揺れ動くとの政策の一貫性の欠如に起因したと言える。オバマ政権が対話路線に舵を切った場合、如何なる方針で臨むか現時点では予測困難である。ボズワース元北朝鮮問題担当大使が先般米上院聴聞会で、「北朝鮮に対しては対話以外の選択肢はない。平和協定、経済・エネルギー支援、外交関係を含む広範囲の問題について話すことが良い」と証言したが、同大使がKEDO事務局長、韓国大使を歴任し、北朝鮮問題に精通しているだけに、同大使の発言は傾聴に値する。
いずれにせよ、米朝協議が始まる暁には、北朝鮮の核能力をこれ以上高めさせないことから始め、次に現存の核能力の削減に向かうべきであるが、その過程で当然北朝鮮は、平和条約の締結、米朝関係正常化等を求めてくると思われる。米朝二国間直接交渉とは言え、交渉の前後のみならず、交渉中においても日・米・韓の緊密な連携・協議は必要不可欠である。さらに中・露を取り込み、5ヵ国の対北朝鮮戦略の調整を図ったうえで、最終的には六ヵ国協議を開催することが最善のシナリオである。日本は北朝鮮核問題で単独プレヤーにはなれず、連携プレーを目指すべきであるが、その為にも日韓関係そして日中関係の改善が必要条件となる。
朝鮮半島は目下緊張状況にあるが、前述の通り年内には状況が変転する可能性があり、引き続き朝鮮半島をめぐる国際関係の動きを注視する必要がある。
北朝鮮情勢 −金正恩政権の一年を検証する
                  
             元駐韓大使・寺田輝介             2013・1・22
北朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は昨年12月31日、「今年の特大出来事」をまとめた記事を掲載し、トップニュースに2011年12月30日の人民軍最高司令官就任に続き金正恩が4月に、党第一書記と国防委員会第一委員長という「三大権力ポスト」に就いたことを挙げた。本稿では、金正日時代に比し、驚くべき程短期間で党・政・軍のトップの座を獲得した金正恩がこの一年間いかに体制固めに注力してきたかを見ると共に、金正恩政権が抱える問題点を探る。
1. 2011年12月28日に行われた故金正日の国葬の
際、葬列に金正恩と共に7人のキーパソン(「7人衆」)が霊柩車に寄り添っていた様子を写したシーンは、内外に広く報道され、われわれの記憶の中にも刻み込まれた。この「7人衆」は、故金正日が若き正恩の為に生前より目を掛けてきたキーパソンであり、金日正の亡き後、金正恩を支える中核グループになると一般に理解されてきた。所が、過去一年の間に「7人衆」に異変が起きていたのである。先ず故金正日の信任を得、軍事面で金正恩の後見人と目されてきた李英鎬軍総参謀長が昨年7月突然解任された(安保研リポートVol.1参照)のに加え、金正覚人民武力部長は閑職の金日成主席軍事総合大総長に異動させられ、金永春次帥は党民防衛部長となって力を失い、更には保衛部の中核的人物であった禹東則は脳卒中で挙動が不自由となったとされる(12年12月27付韓国「中央日報」電子版)事態が発生した。この結果「7人衆」のうち「軍人4人組」が金正恩政権の中枢から脱落した。残りの金己男党書記(83歳)及び崔泰福最高人民会議議長(82歳)は元々権力の中枢からは遠い存在であり、金正日の葬列ではそれぞれ北朝鮮労働党、最高人民会議を代表する立場に過ぎなかった。「7人衆」のうち生き残るどころか、一段と力を増してきた人物が一人いた。それは金正恩の叔父の張成沢であった。軍人4人組の「強制」的退場で明らかになったのは、金正恩が父金正日の先軍政策の下で重用してきた軍主要幹部を遠ざけ、金日成時代の党指導型施政を目指し始めたことである(1月16日付中央日報は米議会調査局が1月に出した報告の一部を引用、「金正恩の北朝鮮は父金正日の先軍政治を破棄していないが、党が軍隊を統制する党中心の体制を作っている」と報道)。この党指導型施政の復権を金正恩に指導する黒幕として登場したのが、張成沢である。明らかに張成沢の示唆により、金正恩は張の息が掛かっている党人派の崔竜海を人民軍総政治局長に任命し、李英鎬人民軍総参謀長の追い出しに一役買わせたのだ。張成沢の政権中枢部への食い込みが著しいことは、金正恩に随行する回数が増えているのみならず、対外関係面において金正恩政権を代表し昨年8月訪中、中国政府首脳部と会談したことにも表れている。更に昨年末、党・政・軍の核心幹部が網羅された国家体育指導委員会の委員長に任命されていることも政治的地位の向上を物語っている。
金正恩は過去一年間、「先軍政治を掲げた金総書記時代に肥大化した軍をどう統制するかが、自らの体制の安定に直結する」(12年12月18日付「朝日」)との政治意識の下に「軍部4人組」の追放に止まらず、多くの軍幹部の解任、転任、降格を断行したところ、金正恩は、張成沢及び崔竜海の力を借りながら軍中枢に支持グループを「懐柔」と「粛清」を使い分け育成していると思われるが、果たして目まぐるしい人事異動や降格によって生じている軍内部での不満を抑え、長期的に安定した「正恩体制」を築けるか否か現時点では不明である
過去の「金王朝」の特性から見て、現在ナンバー2を占めていると見られる張成沢(13年1月3日付「朝鮮日報」)も、金正恩の権力基盤が固まった暁には、故金正日が父金日成の実弟金英柱を遠ざけたように、権力の中枢から外されるであろう。金正恩に重用されていると思われていた崔竜海軍総政治局長が次帥から大将に降格されたことが、昨年12月突然判明したが、これは力をつけてきた者に対しては容赦なく制裁を加えるとの独裁者特有の行動パターンを示すものであり、同様のことが張成沢にも起こりうることを示唆すると言える。
2. 過去一年の施政の中で金正恩政権にとって最大の偉業
は、昨年12月12日に急遽実施し、成功を収めた長距離弾道ミサイルの発射実験であることは間違いない。朝鮮中央通信は12日、発射「成功」を伝える報道の中で、「金日成主席の生誕100年にあたる2012年に、科学技術衛星打ち上げに関する金正日総書記の遺訓を輝かしく貫徹した」と強調しているが、今回のミサイル発射は、「遺訓」の貫徹を国民にアピールすることにより、金正恩体制の権威を確立するという内政上の狙いが大きい。北朝鮮は現在、経済問題や軍部の統制など不安定要素を抱えていることからも、政権側がミサイル発射成功を国内で広く喧伝し、国民の高揚感を作り出し、金正恩の権威を高めようと狙ったことは想像に難くない。朝鮮中央通信が、発射成功の知らせを聞いて喜ぶ市民の声を多く伝えていることから見ても、短期的には政権側の思惑通り進んだといえよう。もつとも今次ミサイル発射の狙いは複合的である。打ち上げ成功により金正恩政権は強力なミサイルカードを手にいれた。更に金正恩は12月21日、「人工衛星打ち上げ」にかかわった科学者らを招いた宴会で、「様々な衛星とより強力なロケットを多く開発して打ち上げなければならない」と演説したと報じられている(12年12月23日付「朝日」)ことからも、北朝鮮が、引き続き長距離弾道ミサイルの開発、発射実験を続けることは必至である。差し当たり、金正恩政権は「核」に加えて「ミサイル」カードを使い、オバマ第2期政権に対し「対話」攻勢を仕掛け、休戦協定に代わる平和協定締結に向けた交渉に米国を引き込む戦略を執るであろう(因みに1月15日付「朝日」は、「北朝鮮外務省は14日、備忘録を発表し、在韓国連軍司令部の解体と、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に替えることを米国に求めた」と報じている)。オバマ政権が米朝直接対話に対し前向きの反応を示さない場合或いは日・米・韓の主導により今次ミサイル発射に対する厳しい経済制裁を発動する場合には、金正恩は強い反発を示すべく、核実験の実施を中核とする瀬戸際政策を始動する惧れがあり、朝鮮半島をめぐる情勢は一段と緊迫するであろう。
3. 本年1月1日金正恩は「新年の辞」を発表した。演説
は朝鮮中央テレビで放映されたところ、金正日が国民の前で演説したことが一度もなく、毎年の施政方針も労働新聞などの「新年共同社説」で済ましてきたことからも、今回の肉声による発表は94年の金日成国家主席以来19年ぶりの演説として注目を集めた。1月3日付「朝日」は正恩演説について、「比較的暮らしが楽だった故・金日成主席の時代を思い起させるかのように、祖父の威厳を統治に生かした形だ」と論評している。1月3日付「日経」が朝鮮中央通信を引用、金正恩は「経済強国の建設は社会主義強盛国家を建設するうえで最も重要な課題」と経済重視の方針を強調したと報じている通り、金正恩政権にとり本年最大の課題は経済再建である。昨年8月金正恩は、農民が収穫物の一部を自由に処分できることを定めた農業制度改革の導入方針を決めた(12年8月2日付「朝日」)、同年9月国営企業や商店が収益のうち一部を手元に残して自由に処分することを認める経済改革を行う方針を固めた(12年9月4日付「朝日」)等の報道があったが、一年経過した現在、「期待された経済改革が具体性や全国的な広がりに乏しかった」(12年12月13日付「毎日」)と見られる。
 韓国の統一研究院が1月17日に発表した報告書の中で「金正恩体制内部は経済難による民心の離反など困難に直面する」と予測している(1月18日付「中央日報」電子版)ように、金正恩体制は現在大きな経済的困難に逢着しており、この困難な状況から脱却する政治的決意を新年の演説の中で披瀝したものの、具体的施策が見当たらないのが問題である。当面国民はミサイル発射成功の余韻にひたっているが、何時までも続くものではない。金正恩の体制固めのカギが国民生活の向上を図ることである以上、経済改革を断行せざるを得ないと見られるが、金正日時代に何度も試みその都度社会主義の壁にぶつかり改革が後退した経験が今回も繰り返される危険性がある。1月2日付「労働新聞」は社説で「金正恩第一書記の発表した新年の辞の核心は人民生活の向上に向けた経済の再建だ」と主張しているが、果たして経済再建の道を歩むことが出来るのか、金正恩政権は今正念場を迎えている。
◎安倍政権は日中危機打開で早期対話を Name:杉浦正章 NEW! Date:2013/01/18(金) 06:53 
◎安倍政権は日中危機打開で早期対話を
 鳩山など“疝気筋”の排除も不可欠
 中国のことわざには「井蛙(せいあ)には以て海を語るべからず」がある。カエルに海のことを話しても分からないということだ。しかし、さすがに狡知に長けたお国柄だ。蛙をわざわざ呼び寄せて逆に利用した。日本では「暗愚大王」でも国際的には元首相だ。鳩山由紀夫が「尖閣諸島は係争地」と言えば、国際宣伝上はそれなりの重みを持って響かせることができる。国論2分を印象づけられるのだ。その言い回しも双方で事前に企んだ形跡が強い。おりから共産党総書記・習近平は明らかに尖閣問題を内政に活用して自らの地盤固めを展開、軍部の対日戦争論を煽っているフシがある。首相・安倍晋三はそろそろ疝気(せんき)筋に引っかき回されないように公式ルートでの接触、対話を展開すべきではないか。
 度し難いほど無能である。朝日川柳には「出てきては政治を引っ掻き回す鳩」があった。国内政局での無能ぶりは、お笑いで済むが、こと外交になるとそうはいかない。昨年は政府が挙げて止めるのも聞かずに、イランを訪問して海千山千の大統領・アフマディネジャドとの会談でその無能ぶりを活用された。イスラエルの核兵器保有を黙認するIAEAは不公平だという意味の発言をしたとされてしまった。懲りない男はこんどは中国で全く同じように利用された。筆者が年初に指摘したように日中外交上の焦点は、「尖閣諸島に領土問題は存在しない」という日本側の主張を日本政府が変更するかどうかに絞られているといわれる。中国は変更させて日本を交渉の場に引きだして、圧力をかけ続けるというのが選択肢の一つだった。
もちろん日本側は領土問題存在せずの方針を変えるつもりはない。
 その核心部分を鳩山「係争地」発言が毀損したのだ。政府は怒るわけだ。官房長官・菅義偉が「わが国の立場と明らかに反する。総理大臣をした方の発言として、非常に残念で極めて遺憾だ」と批判。あの紳士的な防衛相・小野寺五典までが「日本にとって大きなマイナスだ。中国はこれで係争があると世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう。久しぶりに頭の中に『国賊』という言葉がよぎった」と国賊呼ばわりした。確かに日中危機の根源を作った石原慎太郎と共に国賊であることは間違いない。ところが鳩山本人は全く分かっていない。「係争地だと暗に認めていたからこそ、日中関係は進展してきた。政府はかつての考え方に戻り、早く関係改善への答えを見いだすべきだ」とまさに無知丸出しの国賊ぶりを遺憾なく発揮している。普天間発言と全く同じで物事を理解できないのだ。この際母親の安子夫人には鳩山御殿に座敷牢でも作って、外に出さないようにしてもらうしかない。
 沈黙を守っている習近平の出方が最大の焦点だが、3月の国家主席就任前から尖閣問題を国内の地盤固めに活用している様子がありありと分かる。軍部の独走を見て見ぬ振りをしているというか、影で人脈をつかって煽っているフシが濃厚だ。解放軍報によれば総参謀部は全軍に向けて発した2013年の「軍事訓練に関する指示」の中で、「戦争準備をしっかりと行い、実戦に対応できるよう部隊の訓練の困難度を高めよ」と明らかに対日戦準備ととれる指示を出している。小野寺が自衛隊機が進入した中国機に対して曳光弾の発射で警告するかどうかについて「これは国際法と自衛隊法で決められた通りにやるだけである」と是認したことにもすぐに反応した。解放軍少将・彭光謙は「日本が曳光(えいこう)弾を1発でも撃てば、それは開戦の一発を意味する。中国はただちに反撃し2発目は撃たせない」といきまいた。
 中国政府はテレビでも戦争前夜のような番組を放映させて、国民を煽っている。限定戦争か全面戦争かの論争を紹介したり、最近の放送では水上機の超低空訓練の様子を報じ、レーダーにとらえられずに人員や装備を運べると“尖閣占拠”をほのめかしたりしている。こうした宣伝・扇動工作は国民の対日感情をフルに活用して自らの地位を固めようとしていることに他ならない。おりから国内は報道の自由を求める言論人が様々な動きを見せ、共産党幹部の汚職や、都市と農村の格差を不満とする暴動が絶えない。新指導部としては一番狡猾で、効果的で安易な手法を選択しているのだ。だが、筆者が指摘しているように、尖閣戦争で日米連合軍に勝てることはまずない。今どき水上機などがいくら頑張っても戦闘ヘリ1機で撃墜できる。米軍は空母数隻で中国沿岸を封鎖する。負ければ内乱が待っており、共産党1党独裁は崩壊の過程に入る。
 こうした中での安倍の東南アジア歴訪と来月には実現するであろう訪米は、対中けん制の意味合いが濃厚なものとなっている。ゆるやかなる対中包囲網の形成は選択肢としては正しい。しかし習近平の“挑発”に乗ることは避けねばならない。公明党代表・山口那津男が来週にも訪中する予定だと言うが、これは恐らく安倍の対中瀬踏みの一環ではないかと思われる。さらに自民党副総裁・高村正彦を首相特使として派遣する構想もある。外相・岸田文男も日中外相会談を模索している。いずれも困難な会談となるだろうが、疝気筋にかき回されるよりはよい。まずは対話すること自体から解きほぐしてゆくことが必要だ。
◎安倍政権は原発再稼働を早期に実施に移せ Name:杉浦正章 Date:2013/01/17(木) 07:02 
◎安倍政権は原発再稼働を早期に実施に移せ
 規制委は稼働可能な原発を明示せよ
 原発再稼働を公約に掲げて圧勝したはずの自民党政権が、なぜか発言をトーンダウンさせている。明らかに参院選挙を意識して、争点にするのを避けようとする思惑が見られる。逆に総選挙で「原発論争」に完敗した朝日新聞など一部マスコミが息を吹き返している。明らかに参院選の争点を再び「原発ゼロ」に絞ろうとしているのだ。自民党はこれに警戒しているわけだが、そこには選挙戦術があって国民がない。自民党総裁・安倍晋三は国民の負託に応えて堂々と再稼働への日程を提示して、実現への道筋を確立すべきである。
 「原発ゼロ」派の完敗は、滋賀県知事のの嘉田由紀子の見せている醜態がすべてを物語る。嘉田は13日、大失敗に終わった日本未来の党結党のいきさつについて、小沢一郎から「あなたが代表になって出てくれたら100人通ると言われた」と経緯を明かした。そのうえで、「後から思ったら、信じるべきではなかった」などと釈明した。普通の政治家だったらみっともない泣き言を言わないものだが、嘉田はまるでテレビの三流ドラマで彼氏に捨てられて女が「あなたを信じた私が馬鹿だったのね」と泣く場面を演じ続けている。不快用語だが女の浅知恵とはこのことだ。
 懲りないのが朝日だ。無い知恵の限りを絞って選挙結果を脱原発派の敗北ではないと言いくるめようとしている。「社説余滴」では「衆院選で脱原発を訴えた党は未来のほか民主、公明、みんな、共産、社民がある。6党の比例票を合計すると約3千万票で、自民の1660万票をゆうに上回る」と宣うた。しかしその3千万票が議席につながったかというと、逆に確信的にい「入原発」を唱えた自民党に294議席の地滑り的勝利をもたらしている。野党の票を全部集めて論拠にすれば、3年前の民主党圧勝はマニフェストの勝利ではないなどと言うのと変わらない。まさに詭弁中の詭弁だ。
 朝日は世論調査も味方につけようとしている。自民党が原発問題を10年以内に判断するとしていることについて「評価する」は37%、「評価しない」が46%だったと主張している。しかし読売の調査では原発の運転を再開する安倍内閣の方針について「賛成」46%、「反対」45%と拮抗しているのだ。世論調査の落とし穴は我田引水型質問によって左右される。従って意味が無い。ことあるごとに朝日は、エネルギー政策を福島原発事故に結びつける。社説で「避難した16万人の帰還や生活再建はめどが立っていない」などと主張するが、これは国の政治の根幹であるエネルギー問題の本質を感情論にそらそうとする狡猾な手段だ。16万人には気の毒だが、早期に復旧させるためには、原発を再稼働させて、国力を回復させなければ満足な資金も調達できないことが分かっていない。総じて朝日の論調には、広島、長崎における原爆反対の左翼イデオロギーが紛紛と顔を出してくるが、古色蒼然なのである。
 しかし、問題はこれに安倍政権がおびえ始めていることだ。選挙に勝った直後は実に威勢がよかった。石原伸晃が、福島県で「原発稼働ゼロは現実的ではない」と批判すれば、経産相・茂木敏充も「原発ゼロは再検討が必要だ」と述べた。首相・安倍晋三にいたっては「新たにつくっていく原発は事故を起こした東京電力福島第一原発のものとは全然違う。国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろうと思う」と堂々と新設を明言していた。
 しかし年が変わるとこれらの発言が一斉に萎縮し始めた。明らかに申し合わせた上での発言だ。まず安倍が新設について「福島の現場を訪れて避難している方々からお話をうかがいました。あの皆さんの困難な状況のことを思えば、簡単に決定できる話ではないということを改めて認識した。慎重に当然判断していかなければならない」とトーンダウン。官房長官・菅義偉に至っては「原子力規制委に今安全基準を作っている。安全基準を作っていただいて、3年以内に総点検をしてスタートする」と、まるで大幅先延ばしをしかねないような口ぶりだ。
 自民党政権は何を血迷っているかと言いたい。原発立地、または隣接する39選挙区で民主党が当選したのは女川原発の安住淳、福島の玄葉光一郎、大飯の前原誠司だけだ。これが民意でなくて何であるか。物欲しげに参院選の議席を横目に、国のエネルギー政策をおろそかにしてはならない。原子力規制委が7月に安全基準を作ると言うが、なぜもっと早く作らせないのか。選挙目当ての日程としか思えない。
 規制委は活断層のある原発を調査し、再稼働に「NO」を突きつけることができるなら、稼働可能な原発を明示することが出来るはずだ。「NO」を唱えてマスコミの信用を築くことばかりに専念すべきではない。安倍政権も7月の安全基準を待たずに、原発立地自治体の長や住民と堂々と再稼働に向けての対話を開始すべきだ。政治にごまかしが出てきては信用失墜で、それこそ選挙に敗退することを肝に銘ずるべきだ。こうしているうちにも化石燃料のために年間3兆円の富が流出する。円高でもっと膨らむ。電気料金の倍増ともなれば、倒産続出、家計は成り立たない。アベノミクスなどと浮かれていると、足元をすくわれるのだ。ドイツの再生可能エネルギーへの転換が事実上大失敗に終わろうとしていることを見誤ってはならない。


◎安倍政権はスパイ対策で脇を固めよ
民主3年で霞ヶ関はダダ漏れ状態だ
 要するに民主党政権の政策は中国などのスパイに筒抜けになっていたということだ。今後政権交代によって次々に明らかにされていくだろう。その第一段階が内閣官房参与・飯島勲による“暴露”だ。「左翼」が80人が首相官邸に自由に出入りしていたというのだ。表面化しただけでも首相官邸、外務省、農水相に中国スパイが接近して自由に情報をとっていた公算が強い。これにサイバー攻撃が加わり環太平洋経済連携協定(TPP)の参加時期などについての前首相・野田佳彦のナマ発言がまるまる漏洩している。まさに民主党政権はスパイ天国であったのであり、3年3か月にわたるカウンターインテリジェンスの脆弱さを立て直すのは容易ではない。
 まず農水相の林芳正は15日、対中農産物輸出事業を巡って、中国のスパイである大使館一等書記官・李春光と農産省を巡る疑惑について「事業の全体像を確認し、外に対して明らかにしていきたい」と発言、再調査の意向を表明した。中国の外交官がスパイとして立件された初の事件は、昨年5月に発覚、農水相・鹿野道彦と同副大臣・筒井信隆の事実上の更迭につながっている。李春光は中国の巧みなスパイ植え付け作戦に乗って、99年に松下政経塾に特別塾生として入塾。2005年の海上自衛隊潜水艦のノイズ除去技術に関する機密漏洩で、スパイとしての存在が公安当局に浮かび上がっていた。李は松下塾の人脈をたぐってついに外相・玄葉光一郎にまで到達している。玄葉の政治秘書と親しい関係となったのだ。その玄葉の秘書が何と昨年9月に北京を訪れ、既に逃げ帰っていた李と会談しているのだ。スパイと断定された人間と時の外相秘書が接触すれば、明らかに機微に渡る国家機密が漏洩されたとみるのが常識であろう。しかも送検された本人と会うとは、なんという国や捜査機関を小馬鹿にした話だろうか。
 こうして外務、農水両省との関わりがクローズアップされつつあるが、首相官邸も直撃されていたという見方が濃厚である。現に中国のスパイ組織である中国人民解放軍総参謀部第二部の武官が、堂々と名前を述べて出入りしていたという説がある。首相官邸は民主党政権発足時に筆者が 「民主党がかつての社会党の職員25人を最近内閣官房の専門調査員に押し込んでいる。これらの職員が事務局の主導権を握っている」として、中国や北朝鮮への機密漏洩を警告したとおり、旧社会党員の“巣”であった。文科相も同様に参院議員で元日教組教育政策委員長・那谷屋正義を文部科学政務官に押し込むなど、宿敵日教組に浸透されつつあった。何も社会党員や日教組がスパイに直結すると即断するわけではないが、政権の中枢にいれば、中国や北朝鮮のスパイが過去のつながりを背景に“好餌”とばかりターゲットにしたことは間違いあるまい。怪しいのだ。
 こうした中で映画ゴースト・バスターズならぬスパイ・バスターとして登場したのが飯島だ。飯島は民主党政権が作った官邸のありさまについてテレビで「官邸に戻って驚いた。めちゃめちゃで村役場以下」と慨嘆。とりわけ機密漏洩など危機管理対策がなっていないことを強調した。「官邸に出入りできるカード(入館パス)を全部調べたら発行数は官邸だけで500枚以上。全部で1300人を超えている。私の個人的調査でそうだった。その中で80人ぐらい。左翼的なメンバーが入っていた」と暴露。「ひどいことには前科一犯のやつまで入っていたりした」という驚がくの事実まで言及した。飯島はすぐに没収したことを明らかにすると共に「内調や警察庁は何をやってたのか。もし外交や安全保障あるいは為替の問題が、外に漏れたら危うく沈没ですよ」と関係機関を批判した。たしかに民主党政権になってからは内閣情報調査室も、閣僚の経歴の事前洗い出しなどで手抜かりが多く、就任して発覚、即辞任につながるケースが多出した。昔は「北朝鮮情報の内調」であったが、「今はろくな情報を挙げてこない」と民主党政権幹部がぼやいていたものだ。
 要するに民主党政権は「情報ダダ漏れ政権」であり、おまけに官僚の徹底的軽視策をとった。周りの機関も、こんな政権に情報は上げられないという躊躇(ちゅうちょ)が働いたことは確かであろう。首相・鳩山由紀夫以降の首相の体たらくがそうさせたのだから、自業自得であった。しかし、国家としての3年3か月が、るる述べてきたようにスパイ天国であったのはゆゆしき問題だ。ここは首相・安倍晋三が、わきをしっかりと固めるときだ。官邸はスパイ対策はもちろん、中国による露骨なサイバー攻撃をはねつけるシステムを早期に強化すべきだ。どんなウイルスを残しているか分からないから、官邸のパソコンなど電子機器をすべて新たに取り替えることなど常識だ。米国でも機密漏洩事件は多いが、もっと高度なスパイによるものがほとんどだ。入国した途端にマークされた李春光ほど幼稚なものではない。日本ほどやすやすとスパイが活動できる国はない。民主党政権を米国が信用しなくなったのも、ダダ漏れが原因だ。新たな日米安保体制を築くためにもスパイ対策は焦眉の急である。

◎安倍が橋本を“だし”につかったその内幕 Name:杉浦正章 
NEW! Date:2013/01/15(火) 07:04 
◎安倍が橋本を“だし”につかったその内幕
 辛坊治郎が“10分会談”のいきさつ暴露
 一体どうして最初の野党首脳とのトップ会談に、日本維新の会代表代行・橋下徹をもってきたのかふに落ちなかったが、ようやく解けた。大阪の読売テレビのニュースキャスター辛坊治郎が来阪の目的は同テレビの収録にあり、その他の日程は“ついで”であったと暴露したのだ。「1ローカルテレビのために総理大臣たるものの来阪は体裁が悪すぎる」ので、橋下との会談を設定して、それが目的であるかのように装ったのだという。結果的に他党党首をないがしろにした形となり永田町の憶測を呼んだのだが、何のことはない格好づけであったのだ。しかし、内幕をばらされるとは、内閣官房の誰が作った筋書きか知らないが、上手の手から水が漏れてしまってはどうしようもない。
 首相官邸の情報操作は巧みであった。まず8日に「安倍が橋下と11日に会談する」方針を新聞にリーク、9日の朝刊に「夏の参院選に向けて野党共闘にくさびを打ち込む狙いだ」と書かせた。同日の記者会見で官房長官・菅義偉が、日程を追認する形を取った。こうして流れを作ったのは記者クラブへの情報操作を知り尽くしたプロの技だろう。その上での会談となった。日本維新の会代表・石原慎太郎や民主党代表・海江田万里は“無視”されたかたちである。評論家らは「石原代表の面子がつぶれる。頭越しでしかも首相自ら出かけていくということは普通じゃ考えられないことをあえてやった。相当な意味がある。」(岩見隆夫)と“見事”な論評をテレビで加えるものがほとんどだった。新聞も読売が「首相維新に期待、通常国会での連携狙い」と分析、社説でも取り上げ「首相は憲法改正など国政課題での連携に意欲を示してきた。それを具体化するための一歩とも言える」と高揚した論調。朝日も「参院選に向けた野党共闘にくさびを打つとともに、将来の憲法改正を見据えて距離を縮める狙い」ともっともらしく分析した。タブロイド紙に至ってはまことしやかに「石原慎太郎外しの思惑」と“深読み”した。官邸もここまでは巧みな情報操作であったと言ってあげよう。
 ところがこれに対して辛抱が、まるで辛抱しきれなくなったかのように「待った」をかけたのだ。12日の日本放送の「辛坊治郎ズーム」で内情を暴露したのだ。ラジオなど普通の人は聞き流すが、読者のためにラジオまで聞いている“政治ニュースの鬼”である拙者の耳に入っては、ひとたまりもない。だからここに“辛抱の暴露”を暴露することができるのだ。まず辛抱は「何のために大阪に来たのかの基本認識が朝日も毎日も産経も日経も全部間違った」と主張した。読売だけは外したところなどは、辛抱でも“主筋”は怖いとみえて可愛い。辛抱によると読売テレビへの出演は、総理大臣になったら出席するとの約束が選挙前からあったのだという。来阪の核心はその約束を安倍が守っただけのことであり、「一つ言えることはこのおっさんは義理堅い」のだそうだ。
 そのおっさんの日程を見れば、たしかに橋本との会談は付けたりだ。読売テレビのそばにあるニューオータニに呼んでの会談である。それも仰々しく官邸がリークまでしたにしては、会談は、歩く時間を入れると実質たったの10分。発表の20分あまりはとてもない。少なくとも1時間は会談しなければ政治家同士が肝胆相照らす事はないのだ。安倍が橋下発言を「熱心に」メモを取っていたというが、果たしてその長さは一言かそれとも二言か。その直後の読売テレビ訪問は2時間に及んでいる。各社12日付紙面では100行前後の原稿に仕立てているが、よく引き延ばしの“飴細工”が出来たものである。辛抱は「読売テレビの収録の前に橋下さんとの会談をくっつけて、一応これでニュースにしておく形であった」と暴露した。
 辛抱は安倍周辺がシナリオを書いた理由について、内閣記者会との関係があると分析する。「1ローカルテレビのために大阪くんだりまで行くとは総理は言えないよなぁ。内閣記者会が普通なら結構怒る」と述べた。民放キー局の場合、同記者会が仕切って一つの番組だけに総理出演を認めているのだという。ローカル局への出演は異例だ。こうして辛抱の言うとおり、各社はすべて大阪訪問の本筋を見誤ったことになるが、大げさに言えばこうして歴史は出来てゆくのだ。
 官邸筋は筋書きを書いたのは「Iさんあたりじゃないの」と漏らしているが、本当に内閣官房参与・飯島勲であるかどうかは闇の中だ。いずれにせよ情報操作を知り尽くしたプロの仕業であることには違いあるまい。それにしても最近の政治記者は2時間の番組のために10分間の会談をしつらえる政権側の意図・思惑にまで考えが及ばないのだろうか。政治記事はまず推理が大切なのだ。辛抱の指摘はもっともだ。しかし辛坊も軽い。約束を守った「おっさん」が聞いたら怒ることまで考えが及ばないのだろうか。頭はいいが、自己顕示欲の固まりのタレント癖があり、そんなことをばらせば2度と読売テレビに出てもらえないことまで考えが及ばない。


[3516] 教育改革の試金石だ! Name:浅野勝人 Date:2013/01/13(日) 20:41 
体罰高2自殺事件:橋下市長を全面支持!

大阪市立高校のバスケット部の主将が、47才の教諭から体罰を受けて自殺した。運動部の猛者が自殺するほどだからよくよくのことだろう。恐らく、度重なる屈辱的な体罰の結果としか思えない。
学校は、自殺後、生徒や保護者に対してアンケート調査を実施している。それにもかかわらず、校長は体罰が行われていたことは知らないとTVインタビューに言いきった。暗に体罰はしていないと臭わせていた。
橋下・大阪市長は「学校、市教委、大阪市に100%責任がある」と認めて、遺族に謝罪した。当然の認識だが、それなら責任をどうとるかだ。

私は国会議員の現職の折、特に自民党の政策審議委員だった際、事あるごとに、教育委員会の存廃を含めて根本的な改革を繰り返し求めた。行政府も議員も聴いているだけで何ひとつやろうとしなかった。ある時、教育委員会が児童のいじめを隠ぺいして、学校と校長をかばった出来事があったので(こんなケースはこれまでしばしばある)、遂に切れて「教育委員会なんか、屁の突っ張りにもならん。何とかしよう」と叫んだら、出席者からゲラゲラ笑われて会議は終いになった。

橋下市長は、まず、刑事事件として捜査を徹底するよう求め、当該校長を懲戒免職するだけではなくて、大阪市の教育委員を全員辞めさせることから始めるべきだ。教育委員会は教職員の持ち回り再就職ポストだから、委員は何もしないで任期を終えることしか考えていない。これでは、真面目に真剣に勤務している大多数の先生方が救われない。

橋下市長は、総選挙の大詰めで、時代錯誤の右翼と組んで政治路線の選択を誤った。折角の日本改革を放棄して、多くの人々の期待を裏切った。政局感が未熟なことを露呈してしまった。もっとも政治的な経験不足は、時間的空間によって補うしかないから無理もない。周りに集まったブレーンの立場の人も政策通はいても政局の分かる人は皆無のようだ。

総選挙が終わって、行政官に戻った橋本市長は、改めて改革の期待を抱かせるに十分の切れだ。庶民感覚からズレていない。
国会議員でいえば、自分の所属する自民党にタテついて果敢に挑む河野太郎を思わせる。最近、出番がないせいか切れ味がにぶっているようだが、同じ世代で改革の方向が一致しており、けっして曲げないところは「そっくりさん」だ。
橋下の政治感覚が惜しまれる。
(1/13  安保研理事長・浅野勝人)

◎中国に“尖閣紛争”の魂胆はない
 負ければ共産党独裁が揺らぐ
 今年の日本外交最大の課題は何と言っても尖閣問題だが、9月の反日暴動以降の中国政府の出方を観察すれば、事態を武力紛争に発展させる魂胆はないということだろう。領海・領空侵犯などで“ちょっかい”はだしても、“尖閣紛争”に発展させることはない。今の軍事力ではとても日米連合軍に勝つ能力はない。一方で、中国国内を見れば、民主化・言論の自由を求める動きが新たに台頭、各地で頻発する“格差暴動”“汚職暴動”などで足元が揺らいでいる。筆者は中国が“尖閣紛争”に出て敗れれば、日露戦争でロシア革命が起きたのと同様に民主化の革命がほぼ確実に発生、共産党独裁体制が危うくなると見る。従って日本政府が当面なすべきことは、尖閣では譲歩することなく、ゆるやかな対中封じ込めで、包囲網の輪を広げていくことだ。
 もっとも興味ある事態が、7日発生した。広東省に拠点を置く新聞「南方週末」が、今月3日付けの新年号で、政治の民主化や言論の自由などを求める記事の掲載を予定していたところ、地元当局の指示で、記事の内容を大幅に改ざんさせられたのだ。これに対する抗議の輪が北京のジャーナリストにまで広がっている。習近平が最高指導者に就任して間もないこの時期に、国内で動揺が広がっているのだ。「南方週末」の本社前では7日、記者たちを支援するなどとして300人を超える群衆が集まて公然と抗議の声を上げた。テレビの前で勇敢にも当局を非難する声が上がったのだ。
 習近平は弾圧か封じ込めか、放置かの選択を迫られている。当局はネットへの書き込み規制に躍起だが、ネット規制はいたちごっこで効果は上がるまい。ネットには改ざん前の記事が公開された。共産党政権初の公然たる民主化要求の波が立ったのだ。一方で中国の人口13億人のうち、9億人が農村戸籍であり、都市部の経済発展に反比例するかのように格差が広がっている。党幹部の汚職、不正も目に余るものがあり、不満はマグマとなって噴出を繰り返している。尖閣国有化は中国政府に絶好の不満のはけ口を与える結果となった。この愚を日本政府は繰り返してはならない。石原慎太郎が船だまりと公務員常駐を主張して、安倍がこれに雷同したが、そんなことをすれば絶好の機会として習近平は活用するだろう。再び官製暴動だ。軍事衝突も視野に入れるかも知れない。
 それにつけても日本の外交力は落ちた。こともあろうに自由主義圏ナンバー2の日本の新首相が大統領・オバマに会いたいというのに、ワシントンの大使館はアレンジも出来ない。急きょ外務次官を派遣するという体たらくだ。首相・安倍晋三は仕方なく初外遊を米国ではなく東南アジア歴訪に切り替えようとしている。その米国は、政府も議会も中国の台頭と南シナ海、東シナ海での暴走に手をこまねくつもりはない。米元国務副長官・リチャード・アーミテージは、「中国はアジアの覇権を着実に握ろうとしており、中国の影響力は米国をしのぐ可能性もある」と危惧(きぐ)の念を表明。「アメリカが関与しない限り太平洋は中国の湖になってしまう」と危機感を募らせている。おそらく米国は沖縄ー尖閣ー台湾ーフィリピンと続く第1列島線で中国の海洋進出を食い止めるため、尖閣を戦略上の重要拠点と位置づけ始めているのだろう。南沙諸島と異なり、日本の軍事力も活用できる。尖閣で中国が軍事衝突に出れば、日本の施政権の及ぶ範囲である尖閣限定の対中戦争も辞さないだろう。日本は好むと好まざるとにかかわらず、「米中冷戦の構図」に組み込まれる流れだ。
 こうした力関係の中で日本政府は今年の尖閣問題にどう対処すべきだろうか。外交筋によると裏舞台における外交上の焦点は、「尖閣諸島に領土問題は存在しない」という日本側の主張を日本政府が変更するかどうかに絞られているといわれる。中国は変更させて日本を交渉の場に引きだして、圧力をかけ続けるというのが選択肢の一つだというのだ。安倍周辺によると安倍は中国大使・程永華と秘密裏に会談を続けており、その辺を話し合っているに違いない。しかし尖閣問題で日本は外交的にも軍事的にも優位にあるのであって、国際的にも認められている尖閣領有権問題で譲歩する必要はさらさらない。トウ小平が棚上げしたことを懐かしがる風潮が日本にはあるが、甘い。トウ小平は日本の経済・技術獲得が尖閣に優先する課題であると判断しただけである。GDPで日本を追い抜いた以上、生きていれば真っ先に尖閣領有権を主張するであろう。
 中国は世界史的に見ても超大国になる必須条件として自らの海洋国化が不可欠とみており、この路線が今後拡大こそすれ縮小することはない。経済力の拡大が必然的にシーレーンと海洋拠点の確保、エネルギー資源の新規獲得に向かわざるを得ないのだ。そのせめぎ合いの中核に尖閣諸島が位置づけられるのだ。これに対抗するには筆者がかねてから主張しているように、日米結託してインド、東南アジア諸国、オーストラリアなど自由主義の価値観を共有する諸国との間にゆるやかなる対中包囲網を築き、中国の暴発を封じ込めるしかあるまい。もちろん中国は領海、領空侵犯でちょっかいを仕掛けてくるが、これはあくまで国内向けのちょっかいであり、本気ではない。ハエを追うように追い払えばよいのだ。政治・安保と経済は別次元で考えるべきだ。昔から対中関係は「政経分離」という便利な言葉がある。当面はこれでいくしかない。こうした状況下での安倍の東南アジア歴訪は意義が深い。

◎安倍型“小心翼翼”戦略で危機突破出来るのか
 Name:杉浦正章 
NEW! Date:2013/01/07(月) 06:14 
◎安倍型“小心翼翼”戦略で危機突破出来るのか
 “自重”よりも“打って出る”時だ
 ちょっと基本戦略が違うのではないかと思えて仕方がないのが、政権に就いた後の首相・安倍晋三だ。選挙期間中の勢いはどこえ消えたのか、ほとんどの公約を“先送り”してしまった。選挙で有権者が示した保守回帰の潮流はまるで無視して、安倍カラーを封印しつつある。理由は参院選対策の安全運転だというが、これでは有権者はキツネにつままれたようになる。それどころか、民主党政権と同じ「やるやる詐欺」にあったような気分になる。これでは自民党は“固い基礎票”まで失って、参院選に勝てるわけがない。
 確かに出だしは好調だ。スタートから弾みがついているとも言える。円安・株高がそれを象徴している。閣僚の発言をみてもまさに手だれの安定感がある。安倍の新年早々の発言も「何より大切なのはスピード感と実行力だ」「喫緊の課題はデフレと円高からの脱却による経済再生だ」「まずは『強い経済の確立。国民一丸となって『強い日本』を取り戻していこうではないか」と言葉が踊る。市場は本能的に「安倍ならやってくれるかもしれない」と反応しているのだ。老舗の自民党らしさが、久しぶりに市場と呼応した期待感を醸し出している。
 昔から「景気は気から」と言われてきた。民間に「やる気」が生ずる事が、まず何よりも大切なのである。民主党政権で何をやっても駄目であった実態を見せつけられてきているから、市場はわらをもつかむ思いで「安倍買い」に走っているのだ。「アベノミクス」とはやしているのだ。しかしこの「アベノミクス」はいつ「アベノバブル」とはじけてしまうか分からない危険な賭けを伴ったものである。野党が「口先介入」と批判するが、まだ実体が伴っていないことは言うまでもない。
 安倍は「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3本の矢で、デフレ脱却を図るとしている。その手始めが日銀を押さえ込んだ2%のインフレターゲットの設定であり、2月に成立させる景気対策の12兆円といわれる巨額の補正予算だ。一見もろ手を挙げて歓迎しているかに見える市場は民主党が封印してきた“公共事業の復活”に踊らされているのだ。というか、裏では株や為替で差益を引きだしていつでも逃げられるように、酔ったふりして踊っているというのが正しいかも知れない。超大型補正予算と言っても、景気を押し上げる効果は限定的で、財政を一層悪化させる可能性がつきまとう。しかも効果が数字になって現れるのはとても参院選挙には間に合うまい。早くて1年後だ。加えて本予算は5月成立が最短であり、場合によっては会期末までもつれ込むかも知れない。参院選に間に合うわけがない。
 したがって景気だけに頼った安倍の「安全運転」なる基本戦略の危険性はここにあるのだ。景気がつかの間のバブルとしてはじけたらどうするのかということだ。参院選挙は目も当てられない結果となるだろう。ここで先の総選挙を振り返れば、景気回復はもちろん重要な柱であったが、基本的には中国の尖閣暴動に反発した保守化の流れが自民党圧勝に大きく作用した。自民党内やマスコミは自民党の得票が伸びていないことを“反省”材料として指摘し、参院選での揺り戻し警戒論が台頭しているが、何も圧勝して反省する必要はない。2大政党の票が伸びないままの圧勝は、民主党圧勝の時と何ら変化はないのだ。米大統領選では、勝てば公約は確実に実行が求められるし、大統領はちゅうちょすることなく実行に移す。
 ところが安倍は、かねてから指摘しているように“小心翼翼”丸出しの安全運転だけに徹しようとしているかに見える。それどころか、まさかやるとは思えないが、与野党首脳が政治生命をかけた消費増税すら封印しかねない姿勢を垣間見せている。4〜6月の景気指数によって秋に政府が行う増税の最終判断で、14年4月実施の先延ばしがあり得ることをほのめかし続けているのだ。原発も安全なものから再稼働すると宣言して選挙に臨み、原発立地地域はおろか全国的にもほぼ完勝したにもかかわらず、慎重姿勢に転じた。原発新設に「国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろう」と述べていた方針を覆し、「直ちに判断できる問題ではない。安全技術の進歩の動向も見据えながら、ある程度時間をかけて、腰を据えて検討したい」と述べた。ここは産業空洞化を食い止め、景気回復を促進させるためにも早期再稼働は不可欠なのだ。夢にも電気料金の高騰をインフレターゲット実現に“活用”しようなどと考えるべきではない。それこそ本末転倒となる。
 安倍が公約に明記させた集団的自衛権行使の確立についても、官房長官・菅義偉は「行使できる環境を整備したい」と述べ、有識者会議で検討する方針を明らかにした。自民党では集団的自衛権の行使を可能にする「国家安全保障基本法」の制定まで決定しているにもかかわらず、今更「有識者」なる有象無象を集めて何を議論するのかと言いたい。憲法改正が伴う「国防軍」については「こ」の字も言わなくなった。何も有権者がそっぽを向いた日本維新の会の石原慎太郎のごとき極右路線を取れと言っているのではない。同盟国に対する集団的自衛権などは世界の常識だ。こうして何でもかんでも先延ばしで、まさに触らぬ神に祟(たた)りなしに徹しようとしているのが政治姿勢の実態だ。はっきり言ってこれでは参院選に勝てない。八方美人では勝てないのだ。なぜなら保守回帰を求めた有権者は自民党圧勝の“核”を構成していたのであり、ネットでは早くも落胆ムードが横溢(おういつ)し始めている。安倍は自らの参院選大敗を回想して、羮(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹いているときではない。ここは“びびって”あちこちに物欲しげな秋波を送っているときでもないのだ。獲得した294議席を背景に、景気対策以外の公約でも“自重”よりも“打って出る”戦略に転換すべきだ。それこそが道を切り開くのだ。


[3505] 謹賀新年   2013年 新春 Name:浅野勝人 MAIL Date:2013/01/01(火) 00:41 
安保政策研究会の掲示板を愛用していただいている皆様、明けましておめでとうございます。安保研の仲間は、今年も懸命に耳を澄まして目を凝らし、内外の情況をウオッチしてまいります。よろしくお願いいたします。         2013年 元旦
         (社)安保研理事長 浅野勝人


随想:友とのメール
闘い終えて日は暮れて、新春は「少しは良く鳴る法華の太鼓」

「小野のお通の件」
ご無沙汰しています。先日は「安保研リポート」をお送りくださり、ありがとうございました。安保研のホームページも時々覗いています。これを続ける精力、大変だろうと思います。貴兄と仲間の皆さんの熱意には敬服しています。今度の選挙、雨後の筍のように政党が乱立して戦後最低の様相を呈しています。雨降って地固まるとも言いますが、一度だけの雨ではどうにもならないのではないかと案じています。

長らくご無沙汰してしまいましたが、僕の方にも貴兄にお送りしようと思ったものがあったんです。うちの記念館の資料の中から、柳田国男が昭和14年の文芸誌に書いた「小野のお通」という一文が見つかりました。亡父の「宮本武蔵」の中のお通(これは勿論創作上の人物ですが・・・)からの連想に始まって、伝えられている何人かのお通について所見を述べています。かなり読みづらい晦渋(かいじゅう)、難解な文章です。結局、真のお通ははっきりとは分からないというものですから、婿殿(註:浅野次女の亭主。重松清著・小説「とんび」を企画・演出したTVドラマでゴールデンニンフ賞を受賞したNHKディレクタ−)の参考にはならないだろうと思いますが、コピーを送ります。
それともうひとつ、これは私が失念していたことで、まことにお恥ずかしいのですが、亡父の「新書太閤記」の最後の部分に小野のお通(太閤記では於通)が出てきていました。「新書太閤記」は読売新聞連載中に終戦を迎え、その日を境に亡父は連載を中断しました。読者や新聞社からのたっての要請で筆を執り、再び書き始めて1年弱書いたのですが、やはり気が乗らず、結局、未完のままに終わってしまったのはご承知の通りです。
その戦後書き足した部分に於通が出てくるのです。私も改めて読んでみたのですが、晩年、「小野の於通という才女を調べて書きたい」と熱っぽく語っていたのとは裏腹に中途半端に終わっています。そのため、私の記憶から抜け落ちたのだと思います。ですから、こうしたお通もあるということで「新書太閤記」最終2巻も送りますので、婿殿に差しあげて下さい。
この冬は、ことのほか寒さが厳しいですね。わたしも軽い風邪をひいて、それが長引いています。くれぐれも気をつけてお過ごしください。
(12月14日、吉川英明)

「痛み入ります」
「お通」について質したのは、貴君の著書・新装版「父 吉川英治」を読んで感動したことと無縁ではありません。「何をとて人は眠るに炭つぎて ものや書くらんこの狂い人」と詠んで、執筆に苦しんでいる文豪の様子を赤裸々に写した秀作がきっかけです。いち生涯で遺したものとは、到底、思えないほどの膨大な超長編大作を書いた歴史作家が、どこかでお通と出会っていたに違いないと思ったからでした。
私には深い知識と意味があったわけではなく、いつか以前から「戦国の才女・小野のお通」の存在が気がかりだっただけです。信長、秀吉、家康と3代にわたって傍近くで生き抜いたらしい才媛が、3人の調略にどんな影響を与えたのだろうかと勝手に想像したからです。そんな無責任な問いかけを忘れずに貴重な資料を送っていただいた由、感謝すると共に訊ねたことさえ失念していた己を恥じ入っています。

雨降って地固まるのことですが、実は、今回、3度目の豪雨です。前々回の「郵政選挙」での小泉チルドレン。前回「政権交代選挙」の小沢チルドレン。今回は「大政翼賛会選挙」になって、どこを向いても右派ばかりになるのでしょうか。
これを改めるには、小選挙区に比例復活というインチキを抱き合わせた今のシステムを変えるしか手がありません。今の制度だと4割の得票率が8割の議席の確保を可能にします。例えば、中選挙区なら有権者の3割を占めるハト派の票が議席に繋がりますが、小選挙区では死票になってしまいます。
ですから、選挙制度を中選挙区に戻さない限り、日本の政治はぶれ続けます。(12月15日、浅野勝人)


「明日はどこに投票したらいいのやら・・・」
いやいや、父親が小野のお通を「太閤記」の中に登場させていたのをすっかり忘れていた私こそ汗顔ものです。
前のメールで連絡しましたが、文庫の十巻、111ページから於通が登場します。

実は、橋下徹はまれにみる糞度胸と実行力のある人材だとずっと注目していたのですが、大詰めにきて石原慎太郎を代表に迎えたのでがっくりしました。
橋下の素質には他の政治家には見当たらないものがあるので期待していましたが、右翼の老害と組む神経に愛想が尽きました。
維新には入れませんが、それならどこに投票したらいいのか、まだ迷っています。
(12月15日、吉川英明)


「あの世で聞きましょう」
お送りいただいた資料、さっそく拝読しました。「新書太閤記」が於通の父親を美濃の小野政秀としたのはさすがです。於通が、同じ美濃・齋藤家の家中、竹中半兵衛重治の妹の尼と縁あって自然です。入念な調べの結果、行きついた結論だったのではないでしょうか。完結させていたら、於通にどんな生き方、とりわけ、秀吉と家康の間に立ってどんな役割を果たさせたか。懸命の和平工作が実らず、於通は失意のうちに髪を下ろして隠遁したか。家康の陰で長期安定政権による戦さのない時代作りに成功して生涯を閉じさせるつもりだったか。あの世に逝ったら父君・吉川英治先生に直接聞いてみます。
司馬遼太郎も「新史 太閤記」でお通までは間口を広げませんでしたから、誰か小野のお通(於通でもいい)をノンフィクション的フィクションに仕上げる作家はいないものですかねえ。元政治家としては興味がつきません。
柳田国男は視点が違いました。小野姓を小野小町、小野妹子に結び付けたいという強い思いで歴史を推測していました。戦国の小野のお通への矮小化を避けて、平安にさかのぼる歴史分析ですから、その意味では参考になりません。

私も橋下徹には、当初、日本の改革をやり遂げるかもしれない人材と期待していました。時が経過するに連れて、改革の内容よりも選挙に得か、損かを天秤にかけて判断する政治行動の原点が見えてきました。龍馬のごとく理想主義をかかげた船中八策もいつの間にかちりじりになって、挙句の果てに帝国主義時代の亡霊と野合して、乗っ取られてしまいました。「橋下劇場」も遂には正体見たり枯れ尾花に終わりました。
真の中道政治勢力は、日本では公明党を残すだけとなりました。時代錯誤の右翼、石原維新は論外としても、自民党の右傾化を阻止できる力があるのは公明党だけです。だから、今日は、選挙区は自民党、比例区は、公明党に投票します。女房と一致しました。彼女らも右傾化アレルギーみたいです。
(12月16日、浅野勝人)

「消去法で決めました」
選挙に行ってそのまま渋谷に出かけ、いま帰ってきました。私は迷った末「みんなの党」へ入れてきました。積極的な支持というより、消去法で残ったからです。
貴兄が、著書「諌める 亡国の政治に警鐘」の中で、民主党のことを「ヤルヤル詐欺」と表現したのをひどい言い方だとは思わなった記憶が蘇(よみがえ)り、真っ先に民主党を除外しました。ちょっと見栄えのいいおばさんを担いで自らの国民の生活、何とやらの政治集団の延命を図ろうとする小沢一郎の謀略には加担できない。石原慎太郎と野合した段階で維新は圏外。今回は自民党が勝つ番です。安倍政権がどれほど真剣に内外の課題と取り組むかを見定めてから評価することとしました。公明党とみんなの党をどちらにするか迷いに迷いましたが、組織の支援のない「素手のみんな」にしました。
それにしても、小選挙区は2大政党による安定した政治を誘導するはずではなかったですか。日本の政治風土になじみませんね。選挙制度の是正は喫緊の政治課題であるという貴兄の見解に同意します。

お通について丁寧なメールをありがとうございました。於通は「太閤記」の続きを書け書けと新聞社にせっ突かれて書き始めたストーリーの中に登場させただけに、於通に関しては準備不足だったような気がします。折角書き始めた「太閤記」の続編を途中で止めてしまったのも、於通だけを取り上げて、改めて書き直したい気持ちが湧いてきたからかもしれないという気さえします。その後、小学校高学年か、中学に入り立ての私に「小野のお通(於通)」という女性を書きたいと漏らしていたくらいです。もう、4〜5年生きていたら書いていたかもしれませんね。貴兄が「お通」にこだわるのが、なぜか亡父を想い出させてくれます。
(12月16日、吉川英明)


「闘い終えて日は暮れて」
見渡せば  鷹ばかり棲む  寒い朝
安倍が君子豹変することを期待するのみの政治の風景になりました。
経済の底上げと雇用の充実(景気の回復)。子育ての安心(出生率といじめ)。老後の不安解消(年金、介護)。日米関係の再構築 を怠る懸念はもちません。
短期間で民主党政権よりも実績を上げるのは確実だと思います。
問題はアジア外交。何より大切なことは、中国のためは日本のため、日本のためは中国のため、日中のためはアジアの平和と繁栄のためという至極簡単な立ち位置を間違えないでほしいという思いです。そもそも行き詰っている日中関係を打開して、余計なことをすると思う人はいないでしょう。
それから、大政翼賛会チルドレンが占める480人のなかに、せめて5人か、10人、長老の存在が必要だと思いませんか。
折を見て、ゆるりと語る冬の夜を楽しみにしています。
(12月17日、浅野勝人)


「それでも鷹内閣に期待したい」
幸か不幸か、貴兄命名の大政翼賛会選挙になりました。内閣も谷垣法務大臣を除いておおむね鷹ばかり。確信的な右派をことさら何羽か入閣させた意図が世論に迎合して、参議院選挙を意識したつもりだとしたらいかがなものか首をかしげます。もっとも鷹ばかり棲む原野から選ばざるを得ませんから、不思議な顔触れではないのかもしれません。もし、新内閣に不満があるとしたら、責めは有権者が負うべきでしょう。
明くれば新春! 経済の実態を伴わない「見せかけの株高」で世論に阿る(おもねる)のではなくて、失った時間を取り戻す果敢な政策の推進を期待したいと願っています。             (12月28日、吉川英明)


「右よりの政権は左寄りに振れる ?」
「小野のお通 論」のつもりが、いつの間にか楽しげな政治批評になりました。もっとも、お通の影響と時節柄のせいでしょう。
フランスの政治学者で、はじめて政党論を世に表したパリ大学のモーリス・デュベルジェ教授は「右寄りの政権の政策は左に振れ、左寄りの政権の政策は右寄りにぶれる」と記述しています。至言です。
世論が右一色と錯覚して右傾化を鮮明にしたら、貴君のおっしゃる通り、参議院選挙で痛い目に会うにちがいありません。
この政権は、自公連立であると同時に実態は「A―A連立」でしょう。
安倍、麻生とも根っからの中道右派ですが、ふたりとも、なぜ、自らの政権が短命に終わったか、今は思うところが少なくないはずです。
我がままの通る「お友だちクラブ」の 轍を踏む愚は犯さないでしょう。
右派振りを示しても目立たないほどの政治環境の中で、右傾化促進リーダーを演じるのは愚かな選択です。A―Aラインのどちらが右傾化を諌めるか見ものの年となりました。
国益を害する情緒的なナショナリズムへの傾斜を戒める政治家がアジアの真のリーダーだからです。               (12月31日、浅野勝人)

<註> 吉川英明は、文豪・吉川英治の長男。吉川英治記念館館長。浅野と
吉川は、半世紀前、NHKで同期の記者。


◎朝日は自ら「原発ゼロ」の工程表を明示せよ Name:杉浦正章 NEW! Date:2012/12/04(火) 07:11 
◎朝日は自ら「原発ゼロ」の工程表を明示せよ
 総選挙に向けての争点に原発維持の是非が集中している。まるで日本が石油を止められて太平洋戦争に突入したABCD包囲網のごとく、原発ゼロ包囲網が自民党を取り囲んでいる。まるで今度は石油ではなく原発で日本の首根っこを押さえ亡国の道をたどらせようとしているかのようだ。自民党は「原発再稼働・将来はベストミックス」の立場を表明しているが、責任政党としてもっとも信頼できる態度だ。これに対して、軽佻浮薄な大衆迎合新党をはじめ既成政党も、ゼロへの工程はおろか、新エネルギーの展望も示さないまま、ひたすらゼロを唱える。そして言論に1番影響力のある朝日新聞がその“音頭”を取っているのだ。まるで「社是」のごとく原発ゼロへと誘導している。本来国家にとって生命線のエネルギー政策をポピュリズムの渦中に置いて議論すべきではないにもかかわらずだ。
 朝日の脱原発キャンペーンは凄まじいものがある。日米安保反対のキャンペーンや小選挙区導入のキャンペーンに勝るとも劣らないものがある。最近のトップを見れば11月26日の世論調査とトンネル事故などを除いてすべてが原発問題だ。「脱原発自民と維新が慎重」「脱原発競争自民は距離」「がんリスク福島事故の影響」などなど。さすがに社説では断定できないようだが、その基調は言うまでもなく原発ゼロ志向だ。社説は「原子力・エネルギー政策は、将来の国のかたちを左右する。今度の総選挙で最大の争点のひとつだ」と煽りにあおっている。編集方針は読んだ有権者を原発ゼロに“誘導”するという巧妙な“手口”だ。
 この原発ゼロのキャンペーンを成功させたら、間違いなく日本は亡国の道をたどる。朝日は「電気料金2倍」に家庭も企業も耐えられるというのか。30年ゼロで太陽光、風力発電などのコストは128兆円増、家庭の電気代月1万1千円増、経済へのマイナス効果45兆円という、日本経済の破たん必至の状態に責任を持てるのか。朝日は社説で「電力需給の面だけなら、ほとんどの原発が必要ないことが明白になった」と書いているが、エネルギー価格高騰に悲鳴を上げた電力会社の相次ぐ値上げを故意に無視している。社説は政党に対してゼロへの工程表を求めているが、そんなにゼロにしたいのなら、自ら工程表を堂々と明示すべきだ。政党が出来るのなら、朝日に出来ないはずはない。国際的にも電力料金の差は中国、韓国の国力を伸ばし、相対的に日本の国際競争力を減退させ、亡国の道をたどらせる。国力が衰えれば被災地の復興どころではなくなる。福島の被災者は実に気の毒で同情するが、被災者も日本がつぶれては救済の方法も財源もない。これが現実だ。
 こうしたキャンペーンに踊らされて、新旧政党が熱いトタン屋根の猫のように飛び跳ねている。その原発政策から大衆迎合度のひどさを図れば、まず1番ひどいのは未来の党の22年原発ゼロだ。もともと代表・嘉田由紀子は大衆迎合の気配が濃厚であったが、今度は究極のポピュリズムだ。「22年ゼロ」に根拠はなく、「財源はいくらでも出てくる」の3年前の民主党そっくりの主張だ。原発政策への理解度も薄く「原発再稼働あり」と発言して、慌てて引っ込めるという醜態ぶりだ。嘉田は暗く、なにやら突如出現した小沢支配の“妖怪政党”のような感じが濃厚で読売の調査でも「期待しない」が70%だ。
 日本維新の会代表・石原慎太郎は、全く原発問題を理解していないことがはからずも党首討論で明らかになった。自分が作ったはずの維新公約の核心「30年代にフェードアウト」を知らず、「それは何だ」と宣うた。おまけに、公約からの除去を明言したが、そのままになっている。首相・野田佳彦が問題なのは、夏の時点では原発再稼働を推進してきたにもかかわらず、選挙対策の蜜に引っ張られて、急速に方針転換して、30年代原発ゼロを言い出したことだ。ポピュリズム政党の先祖返りもいいところだ。
 共産、社民は「即時ゼロ」だが、“確信犯”であり、こればかりは勝手にお経を唱えていればよい。みんなの党の20年代ゼロも、30年代より早くして目立とうとしているだけであり、その工程も定かではない。代表・渡辺喜美以下言ってることはまさに口から出任せばかりだ。手に負えないのは理路整然と方向を間違っていることだ。公明も創価学会の意向の反映か「1年でも5年でも10年でも早くゼロ」だが、これで自公連立政権を担う責任政党だろうか。
 こう見てくると、大衆迎合路線を取っていないのは自民党だけである。この原発ゼロへの“風圧”の中で立場を変えないのは、さすがに信頼感をもてる。猫も杓子も原発ゼロの中では、返って存在感が出てくる。NHKの世論調査でも原発問題は「時間を掛けて結論」が35%で最も高い。まさに自民党の路線だ。朝日以外の新聞は毎日が、何と公示日4日のトップで「脱原発、問われる本気度」と露骨なる“ゼロ誘導”を展開し始めた。読売は同日付で政治部長が「国民に負担となる情報は伏せたまま原発ゼロだけを吹聴するのは無責任」と正論を述べている。日経、産経は原発維持が方針だが、いささか主張が鈍くてパンチ力に欠ける。もっとエネルギー戦略を前面に出した主張を、発行部数など気にせずに展開すべきである。ことは国家の危機だ。時には朝日の論調の欠陥を直接指摘して論争を挑むくらいでなければ、問題の所在が有権者には理解されない。
 


[3475] 総選挙・公示日に思うこと! Name:浅野勝人 NEW! Date:2012/12/03(月) 19:16 
安保政策研ネット掲載( 2012/12月4日 )
総選挙・公示日に思うこと!
安保政策研究会 理事長  浅野勝人  

アンチ「核武装」テーゼを歓迎する

今回の総選挙は「戦後最低の様相」という指摘を言い過ぎだと窘(たしな)めかねる思いがします。確かに日本を背負う人材の選択には、ほど遠い感を否(いな)めません。
さはさり乍ら、党首討論会に並んだ11人はさまざまな意味合いを含めて「一角(ひとかど)の人物」と見受けましたが、外交・安保政策に懸念満載です。
遂に、信頼できる中道は公明党を残すだけとなりました。
政治勢力として頼りにならない元祖左派の共産、社民を除いて、オール中道右派ないしは右派になり果てました。その中での公明党の役割は、かつてないほどの重要性を増しています。中道政治の理念を担う公明党候補者全員の当選を期待いたします。

経済とエネルギー政策を中心とする内政の課題については、自民党の安倍総裁が現実的且つ安定感があって、群を抜いています。
おそらく政権維持にしくじった挫折感が、安倍晋三をひと回り大きな人物に育てたのでしょう。但し、首相に就任して「お友だち内閣」を組閣したら、短期政権に終わります。懸念は人事だけではありません。
例えば、「尖閣諸島に退役自衛官および即応予備自衛官を常駐させる」という軽率発言です。確かに、尖閣は日本固有の領土に疑いの余地はありません。しかし、現実に中国と台湾が「自分の領土」と主張しています。この現状の中で、中国が対抗措置として軍ないしは武装警官を常駐させる方針を実施したら、実力で上陸を阻止して、第二次日中戦争のタネを蒔くのでしょうか。維新の石原代表が手をたたいて喜ぶだけです。
自民党公約の国防軍に反対する世論も50%にのぼります。安倍総裁が選挙戦を通じて、軍事強化、極端な右派を志向する主張を続けたら、いま尚、有権者の半数を占め、模様眺めをしている無党派層は自民党への投票を躊躇するに違いありません。安保政策のプロ、石破幹事長も同じ見解なのか、聞いてみたい思いがします。
「中国に媚を売っても一文にもならない」という主張をトップに掲載する類の週刊誌に惑わされてはいけません。「中国と喧嘩をしても一文にもならない」のが日本の外交政策の正解です。
従って、自民党は、確信犯的に「憲法破棄、核武装、徴兵制」の石原維新とは一線を画すのか、連立するのか、選挙戦の中で明確にしないと支持できないと考えている無党派層が少なくないとみられています。

こうした政治情況の中での嘉田由紀子代表の「未来」の登場です。
脱原発だけを繰り返し、原発論争でもみくちゃにされていますが、有権者の知りたいのは「あなたは中道ではないですか」という問いかけです。
大阪・橋下に日本改革を期待した多くの有権者は、時と共に主要政策があいまいになって、遂には核武装論者と野合した政治姿勢に失望しました。嘉田由紀子知事も、実は、橋下市長の右傾化に失望して、「アンチ・石原、橋下テーゼ」をめざして新党「未来」の結成に踏み切ったのではないですか。その理念のために小沢一郎と組むことも躊躇しなかったのではないですか。そんな大事な政治姿勢が少しも視えないのはどうしたことでしょう。

河野洋平元衆議院議長は、選挙制度改正の必要性に関連して、「有権者の30%はいわゆるハト派なのに、1人を選ぶ小選挙区の議席に反映されない」と指摘しています。至言です。
「未来」は、内政のポピュリズムに走らず、対外政策の姿勢を明確にして30%の有権者に訴える努力を懸命にしてみたらいかがでしょう。
(12月3日 記)

北朝鮮情勢を読む  元駐韓大使・寺田輝介 Name:寺田輝介 NEW! Date:2012/11/28(水) 08:50 

北朝鮮情勢を読む       2012.11
金正恩は、金正日の死去直後2011年12月30日に朝鮮人民軍最高司令官に就任、更に2012年4月11日に開催された朝鮮労働党代表会で党第一書記に任命されると共に、翌12日の最高人民会議で共和国国防第一委員長となった。これを以て金正恩は、党、国家、軍の最高位者となり、金正日から金正恩への権力移譲は一応完了した。本稿では近く政権樹立一年を迎え、次第に明らかになってきた金正恩政権の特性と同政権をめぐる国際関係を検証する。
1. 金正恩政権の特性
現下の金正恩政権は、「遺訓政治」に基礎を置いている。金正日が金日成の死去直後に父の遺訓を掲げたように、金正恩も故金正日総書記の枠組みそして遺訓を維持することが当初から期待されていた。昨年12月29日に開催された金正日総書記中央追悼大会で金永南最高人民会議常任委員長は追悼の辞で「金総書記の遺訓を譲歩なく徹底的に貫徹する」と公言した。これを受けた如く、金正恩は本年4月15日の金日成生誕100周年軍事パレード閲兵式における演説の中で「金正日同志の遺訓に従って、祖国のために負っている責任を果たす」と宣明した。この4.15演説では、さらに「(北朝鮮は)かつての弱小国から今日は堂々たる政治・軍事強国となった」、「金日成同志と金正日同志が築いた自主、先軍、社会主義の道を進むことに最後の勝利がある」と宣言しつつ、北朝鮮の泣き所である経済については「経済強国建設と人民生活向上のための貴重な種をしっかり育て、開花させなければならない」と決意を表明した。以上の発言のうち、特に注目すべき点は、金正恩政権は「遺訓」としての「先軍政治」の継承を明らかにしている点である。4月15日の軍事パレードにおいて新型の長距離弾道ミサイルを公開したことは核・ミサイル開発を継続するとの「遺訓」の実行を内外に示したものと言える。
金正恩政権は、最初の対外約束として、2012年2月29日米国と合意に達した。この米朝合意によれば、米朝交渉が続いている間は北朝鮮がウラン濃縮およびミサイル発射実験を中断し、その見返りとして米国は24万トンの食糧支援を北朝鮮に提供するとされた。然るに、2012年3月16日、北朝鮮は「人工衛星」発射実験を予告、4月13日に打ち上げを強行したものの実験は失敗した。この米朝合意に背馳した金正恩政権の行為は、明らかに金正恩が「遺訓」を厳守したことに起因する。朝鮮中央通信によれば、3月27日北朝鮮外務報道官は「金日成主席の生誕100周年に際しての実用衛星打ち上げは金正日総書記の遺訓で、かなり前から計画されていた」と説明している。因みに本年3月ソウルを訪れた筆者に対し、朴在圭慶南大校学長は「ミサイル打ち上げは2年前に決定されていた」と内話越した経緯がある。このミサイル実験の例から明らかな様に内政は言うに及ばず、対外姿勢を示す軍事行動についても「遺訓」が適用されることを示すものである2. 金正恩政権をめぐる国際関係
ミサイル実験の強行の結果米朝合意は崩壊し、北朝鮮をとりまく国際関係は一段と厳しさを増した。南北関係は、李明博政権が標ぼうした「非核・開放・3000」政策に反発する北朝鮮のため完全に停滞したのに加え、2010年に発生した哨戒艦沈没事件と延坪島砲撃事件のため決定的に悪化し、金正恩政権樹立直後の2011年12月30日国防委員会は、李明博大統領を名指しで非難し、李政権を「永遠に相手にしない」とする声明を発表するに至った。この様な状況下にあって、金正恩政権に全面的支持を与えたのは中国である。一方、冷戦の終結以来北朝鮮の外交的パターンとして見られる、米朝関係及び南北関係が停滞すると、北朝鮮は対日働きかけを試みるとの動きが最近日本について見られるようになった。以下中朝関係及び日朝関係について分析を進める。(1) 中朝関係中国は金正日死去に際しいち早く金正恩政権に支持を与えた。加えて、胡錦濤国家主席を始め中国共産党政治局常務委員全員が北京の北朝鮮大使館を弔問し、新政権との関係緊密化を求めたことが特に注目される。中国側の強い政治・外交的ゼスチャーに呼応するが如く、北
朝鮮は2012年8月13日金正恩の後見人とも言うべき張成沢朝鮮労働党行政部長を中国に送り,胡錦濤、温家宝等政府要人と会談させた。張成沢の訪中につき、8月14日付「朝日」は、“北京の外交筋は「北朝鮮が新体制になって開放的になり、積極的に改革も進めていることをアピールする狙いがある」とみている”と報じているが、張成沢も当然「遺訓」政治の枠内でしか行動できず(因みに、金正日は本格的な「経済改革」に消極的であった)今回の訪中はあくまでも実利を求めた中朝国境地帯における経済協力の協議が目的であったと解すべきであろう。なお、北朝鮮は近時中国に対する経済的依存度を強めており、報道によれば中朝貿易は2010年3月の韓国哨戒艦沈没事件を受けた韓国の対北朝鮮制裁後に急増し、2011年には前年より約62%を超えて約56億3千万ドルに達している(2月8日付「朝日」)。かくして金正恩政権下の北朝鮮は、外交と経済の両面で中国に依存する状況に追い込まれていると言えよう。
(2) 日朝関係
2012年2月25日付「毎日」(夕刊)は一面トップ記事として“朝鮮労働党指導部が今年1月、日本との交渉について「早急に方法を探り、推進せよ」と指示していたことが25日、毎日新聞が入手した党の内部文書で明らかになった”と報じた。本年の北朝鮮の対日行動を見ると概ね「毎日」の報道が正しいことが分かる。6月20日付「読売」は「4月の金日成主席生誕100周年記念行事に参加した訪朝団に対し、宋日昊日朝交渉担当大使が戦前の日本人の遺骨返還問題を提起した」と報じているが、その後の動きを見ると北朝鮮の「遺骨返還」、「墓参容認」を梃子にした対日アプローチが効を奏し、本年8月の日朝赤十字の意見交換(北京)、外務省課長級予備協議(北京)、更には11月の局長級協議(ウランバートル)が実現している。
金正恩政権の対日政策が金日成、金正日の遺訓に従っていることは当然であるが、既述の通り、米朝関係と南北関係が閉塞状況にあること及び経済再建のために経済・財政支援を必要としていることも対日接近を図る要因になっている。但し北朝鮮は日本の政局を注視しており、差し当たり拉致問題の解決等日本が関心を持つ問題に前向きの姿勢を見せることはあり得ず、次期政権待ちのポーズをとるであろう。
3. 今後の展望
金正恩政権の内政及び外政の基礎が「遺訓」政治にあることから、改めて金正日の残した課題を検討することが2013年における北朝鮮の対外行動を占うことになる。
金日成、金正日が冷戦の終結後、国際的孤立から脱するため米国との関係改善を模索したことは夙に知られているが、金正恩政権は第ニ次オバマ政権に対し本格的なアプローチを試みるであろう。第一次オバマ政権の対北朝鮮政策は「戦略的忍耐」との表現から読み取れるように無為無策であった。北朝鮮の対米接近に対しオバマ政権が十分に応えられない場合には、金正日が第二次ブシュ政権に対し適用した「瀬戸際政策」の再現を試みるであろう。即ち第三次核実験及び長距離ミサイル発射実験の実施である。
日朝関係、南北関係は2013年に前進する可能性がある。まず日朝関係について見れば、日本の政権交代が転機になろう。金正恩政権にとつて金正日が署名した日朝平壌宣言は極めて重要な「遺訓」であり、北朝鮮にとつての戦略的到達目標点である。南北関係においては、2013年2月25日に新政権が発足するが、与野党いずれの候補者も南北関係改善を主張していることからも、新たな動きが出てくるであろう。この場合金正恩政権は、2000年6月の金大中訪朝時に採択された「6・15共同宣言(南北共同宣言)」そして2007年10月の盧武鉉訪朝時の「10・4宣言(南北関係発展と平和繁栄に向けた宣言)を「遺訓」として対南攻勢を仕掛けるであろう。
この様に朝鮮半島をめぐる国際情勢は動きを見せると予想され、2013年は目を離せぬ年となろう。




◎党首討論は右寄り「直球」で安倍が優勢
 解散以来2大政党党首の論戦を観察してきたが、様相は「理屈」の首相・野田佳彦に対して「実戦」の自民党総裁・安倍晋三の立場が浮き彫りだ。そして実戦論の安倍がリードし始めていることが分かる。その証拠に日銀による国債買いオペ拡大発言は株価を解散直後の8661円から9366円に引き上げ、円相場も79.66円から82.45円へと円安に動いた。野田は「口先介入」と批判するが、これまで口先介入すら出来なかった民主党政権の無策ぶりが返って露わになった。安倍が「発表してから円は下がり、株価は上がった。『勝負あった』だ」と自賛するのも無理はない。折からのナショナリズム台頭の風潮に安倍の「国防軍」もネットではやされている。街頭演説も安倍には聴衆が集まって沸くが、野田にはヤジが飛んでいる。
 面白いのは野田の民・自党首討論の呼びかけに安倍が「インターネット番組でやろう」と回答したことだ。野田は「もっと幅広い人たちに見てもらった方がいい」と渋っているが、安倍の狙いは“ネット選挙”にある。いまネットでは「ネトウヨ」でなければ人でないような状況だ。ネット半可通のために解説するとネトウヨとはネット右翼のことで右翼的、保守的、国粋主義的な性向を持つ若者たちをさす。そのネトウヨが安倍や日本維新の会代表・石原慎太郎をはやしにはやしているのだ。そのネット番組でやろうというのは、安倍が野田を自分の土俵に引き込もうという意図があるのだ。ネトウヨなど視聴者の書き込みもすぐに画面に掲載されるから野田には不利になる。野田は14日の党首討論で勝ったのに味を占めて、これを再現しようとしているが、次回はどんな形式になるにせよまず負ける。
 そして両党首の主張だが、テレビ朝日が25日野田と安倍の出演による好番組を組んだ。それぞれ別々の出演だが実態は時間差党首討論の形で面白かった。この番組でも安倍が指摘したが、安倍の「建設国債日銀直接引き受け」発言は、経済を知らない政治記者の誤報であったことだ。別のTV番組で東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋が暴露したところによると「熊本まで安倍に同行した政治部記者が安倍の発言を日銀が直接引き受けることなのか、通常の買いオペレーションのことか分からないまま、『直接引き受け』にしてしまった」のだという。
 東京新聞は22日付の社説でも取り上げ「安倍総裁は日銀による国債の買いオペ拡大も求めた。これがメディアで『日銀の国債直接引き受け』と推測交じりに報じられ『財政赤字を日銀が賄うのか』という極端な議論に発展した」と誤報を指摘している。まさに理路整然と反論して「ウルトラCとか禁じ手を使うことは許されない」と批判した野田や、日銀総裁・白川方明の「現実的でない」「悪影響が大きい」「先進国はどこも行っていない」という鬼の首を取ったような反論は、誤報に踊らされたことになる。あとになって新聞は「安倍総裁が軌道修正した」と安倍のせいにしているが、誤報を誤報と認めないのはフェアでない。小生は「経済を知らない政治記者は駄目だ」と唱えてきたが、その通りとなった。選挙への影響が強いだけに問題の大誤報だ。
 さらなる問題は野田の反論も白川の反論もその“資格”がないことだ。なぜなら民主党政権3年3か月の間で、政治家の発言が株価を引き上げ、円安を誘導したことはまずない。素人集団で自分が打つべき手も打てず、手をこまねいて国家財政と景気をここまで落ち込ませたことに対する責任が問われていることが分かっていない。安倍が野田の反論を聞いて「びっくりした。こういう認識で政権運営をやっていたから、ここまで惨憺(さんさん)たる結果となった」と嘆いたとおりだ。白川もこれまでデフレ脱却策にすべて失敗し続けた日銀総裁としては、誤報に基づいたスジ論を言う前に、自らの進退をどうするかが先であろう。自民党政権になれば当然責任を問われるだろうし、その前に自ら辞表を提出した方がよい。
 市場は安倍発言を歓迎しており、このままいけば当然選挙情勢にもプラスに作用するだろう。14日の党首討論の時は野田の解散の“奇襲攻撃”にあって、おたおたした安倍だが、党首討論に向けて態勢を完全に立て直したことが分かる。外交・安保では「国防軍」構想を打ちだした。野田の批判に対して安倍は「野田さんの攻撃はかつての社会党党首が極端な例を持ち出して不安をあおったのと同じだ」と指摘するとともに、「自衛隊が軍隊でないというのは詭弁であり、軍隊としてちゃんと認め交戦の際は交戦規程に沿って行動し、シビリアンコントロールも憲法に明記する」と明言した。要するに唾棄すべき石原の極右国粋主義まではいかないが、正常なる右傾化路線の公然たる主張である。
 安倍は尖閣問題で台頭しているナショナリズムの風潮を明らかに意識してとらえている。まさに右傾化で“勝負”に出ている姿であろう。ネットではヤフーがインターネット利用者に対して、「国防軍の保持」の賛否を調査したところ、24日午後4時現在で「賛成」がなんと72%と、「反対」の25%を大きく上回った。若年層のナショナリズム、そして不況にあえぐ中小企業の悲鳴に似た声を安倍が吸い上げる可能性が高い。安倍による右寄りの“直球”は、民主党をたじろがせている。加えてこの自・民2大政党の論議が党首討論の形で有権者の耳目を集めれば、最大の収穫は石原や橋下徹らのポピュリズムの存在の影を薄くすることだ。それだけでも2大政党の党首討論はやる意義がある。


[3463] [石原維新」阻止の輪を広げよう! Name:浅野勝人 MAIL Date:2012/11/23(金) 20:18 
「石原軍事政権」阻止を全面支持!
22日、今朝のニュース解説「核武装の石原軍事政権は戦後最大の悪夢」は極めて適切な見解と理解できます。
石原慎太郎前東京都知事の一貫した本音は、憲法破棄、核武装、徴兵制の3点セットです。
総選挙を控え、発言をオブラートに包んだ言い回しに変えていますが、かねてからの石原前知事の本質的な思想に変化のあるはずはありません。                               
「極東のヒトラー」の台頭を阻止しようという杉浦正章の呼びかけを全面的に支持します。
思想、信条の自由は憲法で保障されています。誰が、どんな主張をするのも制約されません。核武装をして、若者を全員軍隊に入隊させて軍事力を強化して、アメリカ、中国に対等に亙り合える軍事国家に変貌させたいと主張するのは自由です。だからこそ、私たちは日本を再び最悪の泥沼に陥れ、日中関係を破壊してアジアを不幸にする危険な政治集団を阻止する訴えを怠ってはなりません。
特に、石原前知事が、リベラル風なイメージで登場した橋下大阪市長と組んだことによって、無党派層の人達が騙されることを懸念します。橋下市長自身の本質が、石原思想に共鳴する理念の持ち主だということを見抜くべきです。                 
橋下市長については、日本に新時代の風を吹き込む人材として期待しただけに、右翼思想が鮮明になるに連れてガッカリです。そして、石原前知事と組むに至って、「正体見たり枯れ尾花」の人と分かってしまいました。
このサイトにアクセスしてくれた皆さんと一緒に「石原維新」阻止の輪を広げる努力をしたいと存じます。
また、「衆参両院で2/3を確保し、憲法を改正して自衛隊を国防軍に改組する」と主張する自民党の安倍総裁の言動です。勝てるという驕りに対して、すでに有権者は思いあがりと反発しています。
安倍総裁の役割は、危険極まりない「石原維新」に対峙する明確な政治理念を示すことです。「ヒトラー石原」と軍拡競争をすることと勘違いしては困ります。勝てるはずの支持率が、急速に冷え込む懸念を指摘せざるを得ません。
日本のために大事なことは「石原維新」の進出を抑制することです。
(11月23日   安保研理事長・浅野勝人)

◎核武装の“石原軍事政権”は戦後最大の悪夢だ
 昔、山田洋次監督、ハナ肇主演の映画に「馬鹿が戦車(タンク)でやってくる」があった。村中から嫌われた主人公が隠してあった戦車を走らせて、村人たちを恐怖のどん底にたたき込むというのが筋だが、62年のキューバ危機直後であっただけに説得力があった。
その映画そっくりの状況が生まれつつある。憲法破棄、核武装、徴兵制導入を主張する日本維新の会代表・石原慎太郎による軍国主義政権復活路線である。「ヒトラーになりたい」と公言し、「軍事政権を作る」とかねてから主張する石原は、まさに時代錯誤の馬鹿がタンクに乗って走り出した姿そのままだ。尖閣諸島をめぐる短絡したナショナリズムと結びつきつつあるから、始末に悪い。
 20日の日本外国特派員協会での発言は、これまでに石原が述べてきた発言からいえば序の口に過ぎない。「いまの世界の中で核を持っていない国は外交的に圧倒的に弱い。核を持っていないと発言力は圧倒的にない。シナは核を持って日本の領土を奪おうとしている。核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいいと思う」というものだが、過去の発言をチェックすればこれは氷山の一角である。11年6月にはもっとはっきり核保有論の目的まで述べている。「日本は核を持たなければ駄目だ。持たない限り一人前には扱われない。日本が生きていく道は軍事政権を作ること。そうでなければ日本はどこかの属国になる。徴兵制もやったらいい」と発言している。臆面もない「軍事政権を目指すための核保有」である。この石原の主張は右翼もためらうものであり、これ以上の右傾化はない。21日には「シナ(中国)になめられ、アメリカの妾(めかけ)で甘んじてきたこの日本を、もうちょっと美しい、したたかな国に仕立て直さなかったら私は死んでも死にきれない。だから老人ながら暴走すると決めた」とも述べている。まさに反米国粋主義も窮まれりというところであり、その下品極まりない表現は、聞く者を不愉快にさせる。先に紹介したように8月の首相・野田佳彦との会談では、尖閣問題に絡んで「戦争になってもいいじゃないか」と述べた。慌てた野田は東京都に所有させては戦争になりかねないと性急な国有化に走ったのも事実だ。
 問題は、維新にこのタンクで暴走する異常な老人を止める者がいないことだ。止めるどころか橋下徹もその政治姿勢はミニヒトラー的であり、徴兵制一つを取っても「勝つ為には傭兵制なんだけども、責任を根付かせる為には絶対僕は徴兵制は必要」と述べている。維新の候補になる元宮崎県知事・東国原英夫までが「徴兵制があってしかるべきだ。若者は1年か2年くらい自衛隊などに入らなくてはいけないと思っている」と徴兵制導入論だ。この維新だからこそ石原は安心して結びついたとも言える。
 問題はこうした極右国粋主義的な動きを迎え入れる衆愚の浮動層が台頭していることだ。尖閣問題を契機に、テレビでも自衛隊や海上保安庁に入って日本のために戦いたいという若者の発言が目立ち始めている。こうしたナイーブな愛国心を石原が利用する流れとなっていることだ。戦後初めて政界で孤立していた石原が利用できる右傾化の風潮が生じているのだ。危険なのは暴力満載の劇画で育った世代が安易に扇動され得ることでもある。しかし、憲法を破棄して徴兵制を実施し、核武装して中国と対決する国家戦略が成り立つだろうか。遅れてきた老人石原は、世界情勢を完全に見誤っている。狂気のごとき誤判断である。核使用も辞さない米ソ瀬戸際外交は62年のキューバ危機が象徴しているが、半世紀も前の話だ。89年のベルリンの壁崩壊以来、核保有で物事が解決できるなどという指導者のいる国は北朝鮮とイランしかない。核保有を目指すが故に世界中からつまはじきされている国々だ。
 日本が核を保有した場合どうなるか。極東が間違いなく瀬戸際の危機に陥る。中国はさびた核ミサイルを磨き直し、北朝鮮は東京、名古屋、大阪に向けた核ミサイルの発射準備を整える。当然韓国も所有する。真珠湾の経験があるアメリカは、反米の石原による核奇襲攻撃を警戒して、同盟を破棄して日本に対峙する。政治・軍事・経済的に日本の孤立は目に見えている。核保有の石原軍事政権はまさに平和日本が戦後初めて見る“悪夢”なのだ。
 石原は最初に都知事選に出馬した際、当時71歳の美濃部亮吉を追い落とそうとして「もう新旧交代の時期じゃありませんか、美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」と発言している。いまの石原の年齢は80歳。前頭葉は石ころのように萎縮して、歩くたびにころころ音がしているのではないか。前頭葉石化の石原を礼賛する衆愚の浮動層は、いいかげんに事態の危うさに気付くべきである。マスコミも甘い。極東のヒトラーの台頭を厳しく戒めるべき時だ。




緊急政局座談会
『緊急座談会』 MAIL NEW! Date:2012/11/16(金) 23:20 
一般社団法人・安保政策研究会(11月16日(金)正午〜1400 日本プレスセンター)
―安保研理事座談会―
『政治はなぜ機能しないのか』

出席者
常務理事  寺田輝介 元韓国駐在大使   
常務理事  柳澤協二 元防衛庁官房長
理  事   宇治敏彦 東京・中日新聞特任論説委員
理  事   杉浦正章 政治評論家
理事(研修生)  高柳淳子   中村竜彦  北角嘉幸
中国人留学生  徐博晨 北京大学卒・東京大学大学院在学
司会) 理事長  浅野勝人 元内閣官房副長官


【テーマ1】
 浅野) 衆議院解散、総選挙の日程が、12月4日、公示。16日、投票日とやっと決まりました。
民主党内は、解散・総選挙に対する輿石幹事長の反対でぎりぎりまでもめ続け、最後の最後まで醜態をさらしました。
民主党が政権の維持に失敗した理由は何だったとお考えですか。

 宇治) 衆議院選挙から3年たって80人の余抜けたわけですね。80人といったら、公明党などをはるかに上回る大政党ができる勢力です。いかに政党としての体を成していなかったかということです。それだけ成熟度のない、完成度の低い政党だったということが一番大きな原因ではないかと思います。

 杉浦) 前回の総選挙では、中川昭一財務相の酔っぱらい記者会見が象徴するように、自民党の土台はシロアリに食われてくしゃくしゃになっていました。国民を馬鹿にするのもいい加減にせよと有権者は怒った。そこで、民主党は「うちが政権を取れば何でもできます」というマニフェストで国民の怒りを釣りましたから、国民は自民党以外なら何でもいいという判断に陥ってしまいました。結果は素人政権ですから何やっても失敗する。内政だけでなく外交も大きな間違いを繰り返しました。惨憺たる結果を招いたのは、やはり有権者の判断力が乏しかったということです。衆愚的な側面があったと思います。新聞は、国民の悪口は書きませんが、無党派層が今回再び国を誤らせるような「安易な選択」をしないよう願いたいですね。

 浅野)民主党政権は、「ヤルヤル詐欺」に始まって、「日本言うだけ党」に終わってしまいました。なぜこうなったのか議論をもう少し深めたいと思います。いかがですか。

 柳沢) やっぱり統治能力がなかったということに尽きると思います。名前は出さない方がいいかもしれませんが、以前、自民党の長勢甚遠議員から「イラクとアフガニスタンはどう違うのか」と聞かれた事があります。「イラクは一度自分たちで世俗政権をちゃんとつくった経験があるが、アフガニスタンは全くそういう経験がありません」と答えました。そうしたら長勢議員が「じゃあアフガニスタンっていうのは民主党みたいなもんだな」とおっしゃって、「その通りです」って話した事がありました。(笑)
例えば、民主党の言っている「脱官僚」っていうのがありますね。私も官僚だったから感じるのですが、脱官僚と言ったって何をどのように改革するのかさっぱり分からない。脱官僚という命題に沿って、官僚政治がどこで何を間違えたのか、何が正しかったのかという検証作業ができていないので、同じところを行ったり来たりするだけに終わってしまっています。
ところが、一方で自民党も、今度は政権と取ろうとしていますが、3年前の自民党と何が変わったかということがまるで見えてきません。小泉改革という非常に競争万能的な改革路線が破綻して、経済が悪くなって、負けた側面があると思うのですが、そこをどう見直して反省して、修正しようとしているのかというところが分からない。いつまでたっても、相手のエラーを当てにしてオウンゴールだけで決まるサッカーの試合みたいになっている。結局そういう観点からみると、この先何も期待できませんという結論になってしまいますから政治不信に繋がってしまう。これが現状ではないでしょうか。

 徐博晨) 端的に言えば機能する議員の不足だと思います。いま指摘があった通り、民主党は脱官僚を掲げています。脱官僚といえば、自分で国政を運営する能力とアイデアをたくさん持ち合わせていなければなりません。1億3千万人の国を動かすには、ほかの国々との付き合いも考えると、たいへん多くの人材で内外のさまざまな政策を生み出す必要があります。たとえばアメリカは議員定数が下院435人、上院100人。イギリスは貴族院を除いて600人余り。日本の場合、衆院は480人です。それだけの数の議員を必要とするには、それなりの道理があるからだと思います。ところが、日本の場合、小泉郵政選挙の結果、小泉チルドレンが150人。贋作マニフェスト選挙の結果、小沢チルドレンが180人。この人たちは以前のように党の政調部会で政策を策定、実行した経験もありませんから、自分で政策をつくることは難しい。シロウト集団ですから即戦力にはなりません。勢い外交でもパイプが細くなるし、内政でも問題が生じてきます。例えば事業仕分けで、国が運営する百何十の機構を、蓮舫議員たちだけで裁断するのは適正なことなのでしょうか。たとえ蓮舫議員がスーパーウーマンだとしても、一人の議員が自分の判断だけでやるには無理な相談だと思います。しかし、それが民主党の実態で、閣僚になれる人材さえ不足している。そういう政権だから日本はうまく動かない。地震があっても原発事故があっても経済問題でも動けない。これが失敗の原因だと思います。

 高柳) 前回の総選挙では、「現状をこんなに悪くしたのは、長年、与党をやってきた自民党の責任だ。もうお引き取り願いたい」というアンチ自民というだけで政権交替をさせてしまいました。その結果、全く政党の体を成していない政治集団が権力を握ってしまいましたから今の悲劇が起きています。彼らも政権を取って3年たつのだから、もっと責任を持てばいいのに、たとえば災害対策のお金がいろんなところに使われていると批判を浴びても、民主党の有力議員が「あれは自民党が言ったからこうなってしまった」と、全く自分たちの責任を感じる自覚がありません。与党になってなおかつ「野党の自民党が悪い」と繰り返すだけです。今の赤字国債の問題にしても、野党が協力しないので成立しないから地方交付税を減らしますとか、まるで与党の方が、赤字国債法案を人質に取って選挙を引き延ばす延命策を図ってきた(笑)。とうとう命運尽きて仕方なく解散・総選挙です。ちょっと信じられない事態が起きていたように見受けました。これはガラガラポンでもして、変えなきゃいけないとは思うのですが、なかなか新しい展望を持てないのが実態なのかなと感じます。
民主党がダメだということは、有権者には明確に分かったけれども、それなら自民党がいいのかという疑問の声もかなり聞かれます。元のままの自民党には戻ってほしくないと思っている人が地方には結構います。だから、有権者の半数が無党派層なのだと思います。この巨大な塊が、何を求めて、どこへ動くか、まだはっきりした見極めがついていないのが不気味です。

 杉浦) いま指摘された通りだと思います。具体的な政策が全て停滞した。とりわけ許せないのは大震災の復興ですよ。これはなんだかんだとやっている素振りは見せていますが、まるで進んでいない。いくら落ちぶれた自民党でも、もう少し手っ取り早く、中身のしっかりした対応ができただろうと私は思います。それだけでも万死に値する政権でした。

 中村) なぜ民主党が政権につけたのかというと、自民党がこけたから、その風に乗っただけのことだと思います。それじゃなぜ自民党がこけたのかという原因は、うわべの原因と本質的原因の2種類あると思っています。絆創膏の大臣だったり、酔っぱらいの大臣だったり、ぶれた総理だとかいうのはうわべの現象だったと思います。それは本質ではなくて、結局のところ経済危機に尽きると思います。自民党が初めて下野したのはバブルがはじけて細川政権ができた時です。また、麻生政権が下野しなければならなかったのはリーマンショックが根幹の理由だとしたら、結局原因は経済問題です。
僕は33歳で市議会議員をやっていて、議員報酬高いねって同級生から言われますが、そう言う同級生は非正規雇用の方が多いように見受けます。僕の親父が33歳の時の仲間に、生活が不安定な非正規労働者が今のように多かったかというとそうじゃありませんでした。結局のところ、衣食足りて礼節を知るじゃないですが、きちんとした雇用と経済を確保しさえすれば、自民党も下野することはなかっただろうと思います。だから事業仕分けをやりますとか、何か斬新な政策をやりますとか、大阪維新ですとか言って目新しいダイナミズムを装うことを言うだけ言っても無駄だと思います。私は事柄の本質はデフレの克服だという気がします。

 北角) 私は民主党の秘書を長くやっていたので、中から見た感覚を申し上げたいと思います。残念ですが、まずは勉強不足に尽きると思います。たとえば、自民党では
1年生や2年生の議員は政務調査会のさまざまな部会に入って、まず徹底的に勉強させられます。ものすごくいい資料が出てきて、それを自分で勉強して、国の制度ってこうなっているのかと微に入り細に入り勉強する。しかも自民党は地元に後援会を組織していて地域に密着していますから、そういうものが現実の問題としてあらゆるところに出てきて、勉強したことが生きてくる。しかし、民主党の場合はそれがない。ひとつは自民党のような勉強させられるシステムがないから勉強しない。それから地域と隔絶しているので、そういう具体的な事例に遭わない。要は机上の話はするけれども、それが現実の政策に沿った話になりません。
私が最初に秘書をした河村たかし先生(名古屋市長)が言っていますが、代議士というのは国民の声を聞いて、その声を国会に持って行ってそこで議論する。つまり「国民の代わりに議論する人」だから代議士と言うんだと指摘しています。だけど民主党の場合には、自分から話しているだけで日常的に国民の声を聞く機会が少ない。だから代議制の原点が分からないんだとよくこぼしておりました。私はかなりの部分が当たっていたと思います。
たとえば派遣制度の問題にしても、非正規雇用が多くなってかわいそうだから取り止めましょうという単純な指摘になってしまう。NPOにしたって、この人たちは社会の役に立とうと思っていいことをやっているのに行政が何もしてやらないからかわいそうだ。だから何かをしてあげましょうという発想なんです。その分野について、公共の部分を公務員が担当するのが適切なのか、それとも市民活動でやっていくのかベターなのか、そういう本質的な観点がなければいけないのにそれがない。派遣制度にしても、経済活動の中で派遣というものがどういう位置付けにあって、企業と派遣制度の折り合いをどう考えるかが重要です。ところが、現実には連合が反対と言ったらから反対するという結果しか見えて来ないのが問題なのです。

 寺田) 民主党政権の外交政策、準備、あるいは実施のプロセスについて見ると、自民党時代との違いを私が竹下総理の秘書官をしていた経験から指摘するのがわかりやすいと思います。その時の経験が現在と違うのは、例えば今の国際情勢がどういうものかということを1週間に1回、毎回1時間半、総理に勉強していただく制度があったことです。これは非常に大事なことで、極めて良質な資料に基づいて総理の頭づくりをしていくというのが自民党政権の特性でした。最近の総理の動静を見ていて、今の民主党政権で総理が勉強しているっていうのはないんじゃないでしょうか。たいへん心配になります。
政治家としての一つの目的を持って外国と対応するときに、そのブリーフィングが生きてくるわけです。
例えば、外交を実施するときに、総理が秘書官に対して、自分はこれからこういう国へ行って首脳会談をしたいと考えているので対応を検討してくれと言われたとします。その場合、秘書官の役割は、外務省の次官に対して、これから総理はある時期にこういう外交をしたいという強い政治的願望を持っている。テクノクラートとしてどれだけのオプションがあるかすべて調べて一週間後に提出してほしいとなります。そうすると、一週間後には幾通りかのオプションが提出されます。Aというオプションを取った場合どういうプラスとマイナスがあるか、Bならどうか、Cの場合はどうなるか、これを総理が選ぶというプロセスを経て対応策が固まっていきましたから、非常に安定感がありましたね。


高柳) 野田さんだって消費税をやり遂げた頃まではなかなかのものでした。ぶれずに夏場までは来て、困難な消費税アップを成し遂げたところは評価できると思っていました。その後、衆議院の解散について「近いうち」と言ってから3ヶ月、ウソにウソを重ねる形になって行き詰まりました。TVの画面で見る限り、ずいぶん顔つきが悪くなっていましたが、やっと解散・総選挙に踏み切ってすっきりしたでしょうね。

 浅野) テレビ画面はヒトの喜怒哀楽を鮮明に映し出します。こればかりは隠せない。野田さんだけでなく、歴代の総理がみんなそうでしたが、支持率が落ちてくると顔つきが険しくなる。あの田中角栄総理でさえ顔面神経痛になりました。

【テーマ2】
 浅野) 石原慎太郎前東京都知事および太陽の党の評価、対中国政策について語ってみてくれませんか。

 杉浦) 端的に言ってあのタイプの政治家が都知事を4期もやると、これほど裸の王様になるのかという感じがします。自分の人気でブームが起きるという基本認識があるためだと思いますが、今回は間違っています。もう石原のビヘイビアにブームを起こすようなエネルギーは感じられません。それから小異を捨てて大同につくと言いますが、その小異が何かと言えば消費税とか原発です。これが小異であるという認識は傲慢そのものです。その思い上がりがどうしようもないところまで来ています。これでは野合でしかありません。野合新党がどこまで伸びるかということですが、最初のうちは珍しさ、新しさなどがあるから、衆愚の浮動票が動く可能性があるけれども、これはやはり限界があると思います。

 浅野) 中国との関係についてどんな所感をお持ちですか。

 杉浦) 対中国との関係については、尖閣諸島を東京都が購入すると言った石原の4月の発言が全ての発火点ですね。そして8月17日でしたか、野田首相と秘密裏に会談した際、石原知事が「戦争やってもいいじゃないか」と言った。これは確かに言ったことを私の情報網で確認しています。野田はびっくりして、これは国で買うしかないと思ったのでしょう。そこまでの判断は正しかったと思います。得体の知れない人間が持っているのを、国が買う方が、安全保障上も妙な干渉を受けずに済みます。そこまでは正しかったけれども、ウラジオストックのAPECでの胡錦涛との立ち話し会談で国有化について厳しく釘を刺されたのに翌々日の閣議で決定してしまった。これが先ほどから指摘されている民主党外交の致命的な稚拙さの表れです。それに先だって、外務副大臣を中国に派遣して、国有化の意味を中国側に説明させた結果、「大丈夫です」という感じの情報を上げているようですね。中国側は完全拒否なのを甘くみてしまった。石原前知事が火をつけ、その火を消すつもりがプリミティブな政治的ミスが重なって大火事になっているのが現状ですね。

 宇治) そもそも丹羽さんを中国大使に決めたでしょ。あのときは岡田外務大臣。日本は大統領制じゃないから、指名した外務大臣が代わると、丹羽さんに外務省の情報が入りにくくなってしまいます。丹羽さんは相当苦労したと思いますよ。財界の人に聞いても、やっぱり特定の商社の人を外務大臣のポストに充てることが基本的に間違っているのではないかと指摘しますね。その辺から日中関係のゴタゴタが始まっていると思います。
今年、私は日中韓のセミナーで5月に中国に行ったときに感じたのですが、中国はやっぱり日本に学ぼうと思っていることがたくさんある。それは高度の技術のこともあるけれども、一番は文明です。文化といってもいいかもしれません。例えば、トイレに入ると、いろんなところにスローガンがあって、男性用のトイレに「あなたがもう一歩前に出ることが中国の文明の発展につながる」と書いてある。政府から指示が出ているのだそうですが、トイレの中にハエは2匹までは許せるが、それ以上のハエがいたらそのトイレはだめだということですから、一生懸命トイレを掃除しています。結局、自分たちは経済大国になったけれども、やっぱり人権とか文明とかソフト面で遅れていることを自覚していると思います。従って、日本の生活思考をもっと学びたいと思っているのにこじれて来てしまっている。双方とも必需品にしろ、ハイテク技術にしろお互いに助け合わなければ生活できない時代になってきているわけですから、日本としては交流の分野と面積を広げて、対立する部分については棚上げしたり、あるいは縮小する努力をもっとすべきだと思います。

 浅野) 石原前都知事の政治行動についてはどういう印象をお持ちですか。

 宇治) 今でも「シナ」という呼称をことさら使っている人が世論の大勢を占めるには至らないと思います。ただ、尖閣諸島を買うといったら20億円近いお金が都庁に集まるということも日本人の心の中に潜んでいるんですね。そういう気持ちを逆手にとって、誤ったナショナリズムを誘発するような政治行動については警戒しなければなりません。今度の選挙にあたっては石原さんとか橋下さんとか、世論を煽ることが上手な人たちが出てくることに対して、冷静且つ理論的に対抗する考えを示す政治勢力が併せて出てこないと日本の国を漂わせてしまう危険性を感じます。

 徐博晨) 多分、中国が今一番日本に学びたいと思っていることは、完成した消費社会は次に何を求めて、どこを目指して行くべきかということです。日本と中国はお互いに物づくりを頑張っていて、物づくりの生産拠点、作った物を販売する市場として相互に深く繋がっています。企業を立ち上げて、人間を雇用して、ものを作って、商品を売って、みんな豊かになる。そこまではよかった。しかし、そこから次にどうすべきか。アメリカは金融業が発展して、お金の運営で生きてきましたが、日本や中国はこんなマネはできません。どうなんでしょう。

 柳沢) 要は、まず大量生産、大量消費の段階があって、その先に消費が満たされた日本のような社会が、次にどのような発展をたどるのか。中国は今までは大量生産、大量消費の日本モデルを追ってきたけれども、その先の新しい社会の形態は一体何なんだろうかと問うているんですね。それは中国の未来のあるべき姿はどうなのかと問う前に日本に課せられた命題です。

 徐博晨) ですから、ずるく言ってしまえば、日本に先陣を切って次世代モデルを示してもらいたい。その挑戦が成功するか、失敗に終わるか、ひとつの社会全体としての姿を見せて欲しいんです。

 宇治) かつての自民党政権にも今の民主党政権にも責任があるんですが、これだけ優秀な官僚が揃っていて、戦後60年を経て、的確に見通せなかったことがあります。それは、急激な人口構造の変化です。富士山型だったものが、今は花瓶型になり、もうじき逆ピラミッドになることを想定していなかった。もしくは想定はしていても対策を怠った。だから年金制度もこれでいけると思っていたわけです。同時に少子化がこんなスピードで進むとは思わなかった。日本を構成する構造基盤が変わってしまう事態に十分対応してきませんでした。そして、もう一つは非正規雇用の存在です。労働者にとって、かつて三種の神器と言われたのは、終身雇用、企業別労働組合、それから年功序列賃金でした。この3つが戦後の日本経済の成長を継続させてきました。ところが、終身雇用も年功序列賃金も、みんな崩れてきました。労働組合の組織率はかつて総評の時代は30%ありましたが、今はもう3人ないし5人に1人は非正規労働者になって労働組合の組織率は惨憺たる実態です。つまり労働組合が社会的影響力を失いつつある時代ですから、労働組合と交渉しても社会全体の改善にはならなくなってしまいました。日本自身が国の行く先を模索している最中ですから、中国にとってモデルにはなりません。日本は世界最先端の老齢化社会を運営しなければならないのですから、それを踏まえてどういう社会をつくったらいいか、官僚の能力を動員して政治が真剣に、しかもスピード感をもって考えないとたいへんなことになります。

【テーマ3】 
浅野) ところで、中国でのあの暴動まがいのデモは何だったのか、同世代の博晨君はどう見ていますか。

 徐博晨) ばかなことをやってしまったものだというのが素直な感想です。
薄熙来の勢力が混ざっているという報道がたくさん出ていますが、それは事実ではありません。薄熙来がデモを誘発させるほど勢力を持っているわけではありません。
確かに左派、中国で左派というのは保守派のことですが、毛沢東に戻ろうという声がありますけれども、それは薄熙来一人で動いているわけではありません。それよりも働きたくても職のない若者が、日頃の不満を爆発させたと見る方がはるかに的を得ています。中国人が運転している日本車に暴行を加えたのは、日本車が憎らしいだけではありません。日本車を買える中国人が羨ましいのです。広がる貧富の差がデモをオーバーヒートさせた原因だと思います。だから、事態はむしろ深刻なんです。

 杉浦) 簡単に言うと、官製デモだったのではないですか。政府主導のデモ。つまり始めさせて、やめろと言えば、直ぐやめる。これは民主主義国家のデモじゃないですね。

 徐博晨) まったくその通りですとは答えかねます。それほど単純な事態ならむしろ安心です。完全にはコントロールされてはいないし、コントロールできなかった部分があるから暴走したというのが僕の結論です。

 杉浦) 暴走も確かにあったけれど、暴走を完全に止めずに、ここまではやらせても大丈夫だという政権側の意図があったような気がします。

 徐博晨) 僕から見るとはっきり3段階にわかれます。まず火をつける段階ですが、例えば、政府がバスで送り迎えまでしてデモに行かせるという段階。次は、ネットなどを通じて本当に炎上して、政府や社会に不満を持つ一部の人間がそれに加わって、破壊活動を行う段階。実際に警察も動員されていますが、事前に略奪のチェックまでは出来ていなかったと思います。中国には武装警察もありますから、銃を撃てば解決するのですが、そこで銃を撃ったら暴動は全国に広がって手がつけられない情態になるでしょう。ことさら国民の信頼を失う無謀な措置はとれません。3段階目は、全面的に、まずネットから炎上の燃料を撤収する。つまり、ネットを全面的に検査して、閉鎖させるなどの措置を含めて事態を収束に向かわせる。日本から見ると、この3段階のニュースがごちゃ混ぜになって同時に入ってくるから、暴動も政府がやらせているのではないかという推論が出てくるのでしょう。今の中国で、政府が人々のさまざまな思いを完全にコントロールできると考えるのは間違いです。

 柳沢) 私の感じは、軍隊は使っていないけれども、やっぱりこれは政治的な戦争だと思うんです。中国側のメッセージは、2010年にはレアアースの輸出を止めて、商社員を4人拘束しました。今度、前回と同じようなことをやってもメッセージにならないから、じゃあ何をするかというと、結局物理的に日本の企業が生存できるかどうかは、中国当局が握っているんだぞということを示した。中国当局が意図としたかどうかは別として、私はすごくそれを感じました。われわれの専門分野で言うと、だんだん武力紛争がエスカレートして核の撃ち合いにまで行っちゃうと困るから、そういう垂直エスカレーションで抑止するのではなくて、いろんな分野に広げていって、そちらがそういうことを言うならこっちはこうするぞと、水平エスカレーションの実験のような感じがします。
実際には結構コントロールしているし、一面では自分のところの損失にならないように中国政府はすごく気を遣っているなというのは、それはその通りだろうと思います。

 宇治) やっぱりパナソニックの工場を壊し、あそこでデモをした。あれは?小平が日本へ来たときに大阪まで新幹線で行って、工場を見て、松下幸之助さんに頼んで中国に進出してもらった工場でしょ。ここを自ら壊すというのはスローガンの愛国無罪とは矛盾すると思いますね。

 徐博晨) 野田政権にとって尖閣の国有化を白紙に戻すのは不可能だと見受けます。一方、中国の外交のひとつの特徴に誰かと仲が悪くなると相手と会わない方針をとります。これは外から見ていると非常に困ります。会わなかったら中国の損失にもなりますし、そもそも問題の解決になりません。しかし残念ですが、今回は会わない決意が固いようです。中国首脳は、野田さんには会わないと決めたと思います。従って、安倍さんに代わって新たな展開が期待されますが、安倍さんが事態の打開に柔軟な姿勢で臨めるかどうかにかかっています。

 浅野) 時を同じくして双方とも代わりますから、新政権のもとで事態を一挙に打開してほしいと思います。博晨君たちが指導者になる頃には両国ともガラっと変わっているでしょうが、それまで待っていられないものですから、私たち年寄りは焦ります。
ねェ寺田さん。

 寺田) そうですね。東京にいる某大国の大使と2人で食事をしながら、いろいろ話した中でたいへん正しいと思ったのは、石原前知事のやっていることを放置すれば、日中関係に多大なマイナスになるのは事実だが、それを処理する外交のタイミングを完全に間違えたのが致命的だというコメントです。わたしものこの指摘は、その通りだと思います。
それから、日中間の問題について、特に民主党のコミュニケーションがたいへん狭い。韓国はある意味でわかりやすいんです。高度の政治問題については外交通商部長官との間で事を決めるわけにいきません。大統領、要するに首脳会談なんですね。これに対して中国の外交プロセスはたいへん難しい。極めて重層的ですからパイプづくりも大変です。
年が明けると日本は新しい総理だし、中国も習近平さんになっている。アメリカもオバマさんが再選されてニューオバマになったし、韓国も大統領が変わります。新しい北東アジアにおける国際政治構造が出てくるので、そこでどうやって首脳レベルの信頼関係を回復するかが重要です。いきなり1対1はできないと思いますが、例えば、北朝鮮の核問題について協議することは日本にとっても中国にとっても放置できない課題です。そういう共通の安保上の関心について関係国間の外相会議から入ってサミットに上げる。そしてサミットにおいて、当然、二国間の話し合いも行われるというようなプロセスが大事ではないかと思います。

 浅野)、このままでは、あまりにも政治に知恵がなさすぎます。

 柳沢) 石原新党の話でいうと、橋下徹もそうなんですが、ひと言で言うとポピュリズムですね。戦争の三位一体とクラウゼヴィッツが言ったのは、政治という国家の理性があって、軍隊というプロフェッショナル集団がいて、そして国民大衆という熱しやすく冷めやすいグループがいて、戦争をしようと思ったらまず大衆に火をつけるのが先だ。逆に大衆が熱したときに、政治が国家の理性でそれをコントロールできるかどうかが無駄な戦争をしないようにするための一番大事な要素だと指摘しています。ところが、政治的ポピュリズムは、自分の政治の目的のために大衆の熱狂を煽っていくわけですから懸念せざるを得ません。
さっき杉浦さんが指摘した点ですが、石原慎太郎は「戦争すりゃいいじゃないか」と言ったそうですね。自分は鉄砲担いで尖閣に行くわけじゃないからいいのかもしれませんが、本当にそういうことを気軽に言うような人は、私は暴走老人だと思います。それが一定の人気を博していく状況に私はすごく危機感を感じます。多分一気に多数派にはならないと思いますけれども、一方で国民はそういう面白い人材を求めている部分があります。ですから、それに対置して、政治リーダーになる人が理性的な哲学も含めたビジョンを提供できるかどうかが実は本質的に大事なんだろうと思っています。


 北角) 毎日地元を歩いていますでしょ。私はやはり杉浦さんや柳澤さんと同じような問題意識を持っているのですが、意外と石原さんいいじゃないか、日本はもっときちっとしなきゃーいかんという「流行(はやり)の声」が結構多いんです。特に男性が多い。ただ女性は思いのほか、支持が低い。タカ派の臭いを嗅ぎ取っているのではないかと思います。総合して考えると、そんなに票は伸びないんじゃないですか。また伸びるべきではありません。みんなの党が中庸でいいと確信しています。


 杉浦) まあ流れとしては自公はまず食われない。第3極野合新党が軌道に乗ればやはり食われるのは民主党ですね。民主党は四面楚歌の深刻な状況です。

 中村) 石原慎太郎みたいなヒトが今頃になってまた世に出てくるのは、やっぱり経済が悪いからポピュリズムに流されがちになるからだと思います。結局経済をうまく運営すれば、あさっての方を向いた変わり者だという話で済むのですが、いまの情況だとある程度の力を持ってしまうのかなという気がします。

 浅野) 大阪橋下は若い君の世代ではどんな受け止め方をされていますか。

 中村) 地方分権、地方分権と言っているけれども、じゃあ自分が政権をとって総理大臣になったら、今度は中央集権って言うんじゃないですかね(笑)。自分の都合の言いように、自分のポジションを考えて、その場、その場でコロコロと意見を変えて言っているような気がしてなりません。その意味では、どこまで信用していいのか不安です。

【テーマ4】
 浅野) いよいよ総選挙ですが、内外の政策に関連して、新政権に期待する課題を聞かせていただきましょう。

 寺田) そうですね、やっぱり自民党が中心の連立政権になって外交関係がどうなるか。日韓関係というのは、実は日中関係よりは早く修復可能だと思います。最初の出会いとなるのは間違い無く、来年2月25日の大統領就任式に総理が出て、そこで仕切り直しをする場面でしょう。アメリカの場合は、前回は確かクリントン国務長官でした。首脳レベルが出るのは日本くらいしかいません。これは絶好のチャンスなんですね。日韓に比べて日中関係の修復はどうなるのか、非常に難しいと思います。アメリカの大統領選挙はオバマが再選されましたが、仮にロムニーが勝っていたとしても対中国政策は非常に厳しくなってきます。そうなれば、やはり中国にとって日米関係が重要になってきます。そうゆう環境の中で、日本がやるべきでないことは古い冷戦時代のようなコンテイメントポリシー(封じ込め政策)を受け入れるべきではないと思います。日本外交がアメリカとの強い同盟関係に必要以上に引っ張られ、且つまたアジアの周辺国を巻き込むということは決していいことじゃないです。
ただ、何かきっかけがないと、日中間の首脳の最初の出会いは出てこないでしょう。そうなるとひとつは、ASEANプラス3くらいの場を使って、多国間外交から始めて、2国間外交に向かっていくと形を期待したいですね。それはできるはずです。日中関係の修復は時間がかかるかもしれませんが、このままだと明らかにお互いに失うものが大きすぎます。

 宇治) 「近いうち」に対抗して「遠からず」と私が言っていたのは年内必至という意味でした。その総選挙で、私がいちばん心配しているのは、50―200―100です。最初の50というのは、総選挙の投票率の数字で、50%を切るかもしれない。人々は政治に何も期待が持てないと諦めていて投票する意欲が薄れています。石原さんや橋下さんの人気は、地域的には関心を集めているかも知れないが、全体から見ると政治不信が強まっています。投票率が相当下がる可能性があって、50%を切るような事態になったら悲劇的だと思います。次に200というのは、単独で480の過半数を取る政党は無いと思われますから、そうするとやっぱり200議席を取るのは、自民党だろうと予測されます。自民党が200議席を取れば自民党を軸にした連立政権ですね。自公両党で過半数確保という世論調査もあるようですが、もし足りなかった場合、維新が連立に加わるケースを想定していましたが、維新がみんなと政策協定をしましたからややこしくなりました。最後の100というのは、民主党が100を取れるかどうかという数字です。まあ70とか80という相当厳しい予測もありますが、民主党の議席が極端に落ち込んだ場合には、民主党が連立政権に加わる可能性も否定できません。大連立ではなくて小連立ですね(笑) 残りをみんな、生活第一、共産、社民その他で分け合いますから、足し算、引き算してみると、維新は今の状況からすると50から70くらいだと思います。冒頭心配だといったのは、50−200−100になった場合の連立政権は、はなはだ不安定で長くは保ちません。

 浅野) この数字は石原・橋下維新連合を込み込みですね。

 宇治) 込み込みです。小沢生活新党が、30くらいになる。

 浅野) そんなにいきますか。みんなの党と間違えていませんか。小沢新党は数人かと思っていました。

 宇治) 数人ということはないと思いますよ。公明党が30余。社共が合わせて25いくかどうか。みんなの党が多分20くらいじゃないか。減税その他で10くらいで見るとおおよそ480に近い数字になってきます。そんな数字になるのではないかと今の段階で想定しています。

 杉浦) 私は、大きな流れとしては解散・総選挙の日取りの当て比べよりも、通常国会をどの政権がやるかが重要だと思っていました。まず安倍政権が8〜9割の流れではないかと想定していましたが、予測通りになるでしょうね。その際に外交政策をどう展開させるかですが、安倍は小泉の後を受け継いだ6年前、政権就任10日くらいで中国、韓国を回って一挙に関係改善を成し遂げた実績があります。あの時は持論を捨てて関係改善に踏み切った。しかし、今度の場合はまず中国の新政権の姿勢を見極める必要があります。なかなかそのタイミングが難しい。従って、日米関係の再構築を優先して、まず基盤を整えるという流れになってくるのではないかと思いますが、一方いまのままの日中関係では、双方とも計り知れない損失に耐えきれなくなります。安倍新政権が取り組む最重要政治課題はやはり日中問題です。
 
浅野) 世界第2位と第3位の経済大国同士がいつまでもいがみ合っていては、双方に多大な悪影響を及ぼすだけでなく、世界の経済動向にとって重大なマイナス要因になります。日中両国は世界の平和と繁栄に共通の重い責任を負うています。その意味では、正常化以来最悪の日中関係改善が総選挙の最大の争点と考える有権者の賢い選択を期待して座談会を終わります。 

◎野田政権は断末魔、持っても1月までだ
 夏に約束した「近いうち解散」だがもう立党だ。こともあろうに首相が解散でうそをつき、その後の改造ではまさかの「両田中論功行賞人事」で大失態に次ぐ超大失態の連続発生。すべてが自分が掘った穴に自分が落ちた形だ。この首相・野田佳彦の体たらく、そして民主党政権が3代にわたって“立証”した統治能力の欠如。民主党には恩も恨みもないが、公平に見てもう無理だ。末期症状だ。恐らく国民大多数の願望は政権交代にある。解散・総選挙の日程にばかり目が行くが、発想を転換して政権が持つかどうかをあえて予測すれば、長期の特別国会になるか通常国会になるかは別として、国会審議を伴う次の国会を野田が招集することは80〜90%の確立でない。早ければ年度末、遅くても1月までが政権の限度だ。戦争や天変地異でも発生しない限り継続はない。
 自民党総裁・安倍晋三がテレビで「今月22日までに解散がないと年内選挙の準備が整わない」と述べたことをとらえて、新聞が22日が年内解散の限界と書きまくっているが本当か。解散という何物にも優先される最高の政治テーマが机上の空論で左右されるのか。新聞は「遅くても12月4日公示、同16日の投開票の日程が有力。公示までの準備には10日間程度が必要で、解散の期限は今月22日になる」という。しかし、これは安倍が野田を追い詰めるための“戦略”として期限を区切ったことにすぎない。実現すればめでたいことだが、実現しなくてもいくらでも日程は立てられる。
 過去の歴史を見れば12月下旬から1月にかけての解散の事例は戦後4回ある。吉田茂が12月23日、鳩山一郎が1月24日、佐藤栄作が12月27日、海部俊樹が1月24日だ。事態の進展によってはいくらでもバリエーションが利くのだ。田中角栄による72年の日中解散は11月13日だったが、その後の特別国会は通常国会に代わるものとして召集され、280日間の長期にわたっている。
 こうした日程を念頭に置けば、ちまちました“安倍日程”に必ずしもこだわる必要はない。もちろん安倍が解散を急ぐのは野党の戦略として当然のことだが、その先にバリエーションがあるのだ。安倍は野田が「近いうち解散の確約」を「『うそつき』と言われないように頑張りたい」と発言したことを取り上げ、「何をどう頑張るのか、今週中に明らかにすべきだ」と述べ、野田に対し、年内解散に踏み切ることを今週中に確約するよう求めた。しかし安倍の戦い方の欠点は、これを直接野田に申し入れるのではなく、メディアに向けて発信していることだ。もどかしいのだ。
 このため野田からは「メディアを通じた文通みたいだ。何か聞きたいことがあるのならば、むしろ国会での党首討論で、国民の見える前でやった方がいいと思う」と言われてしまったのだ。民主党の戦略は党首討論で安倍の赤字国債への対応をあぶり出して、法案成立への一里塚にしようというところにある。また党首討論を14日に設定したのは少しでも遅らせたいという幹事長・輿石東の姑息(こそく)な思惑がある。時期はともかくとして、安倍は躊躇せずに党首討論に応ずるべきだ。
 こうして安倍の早期確約要求戦略がまさに佳境に達しようとしている。野田が何らかの形で再約束すれば、それでけりがつく。しかしずるずると引っ張れば一定期間は引っ張れる。安倍は今週の確約に拘泥する必要はない。なぜならここまでくれば早期解散日程の選択肢はいくらでもある。野田政権の「追い詰められ度」は尋常でないところまで来ているのである。田中真紀子の超大失態でとどめを刺される寸前まで来た。世論は、ごうごうたる政権批判の渦だ。田中はずるがしこくも、自らの大失態を覆い隠すために「新しい基準のもとでもう一回審査をする」と“糊塗策”にでた。まさに誰もが分かる浅知恵であり、人生設計を狂わされる若者の気持ちなどつゆほども考えていない。先延ばしは事態をさらなる悪化に持ち込むことが分かっていない。
 官房長官・藤村修はこの期に及んでも文科相の専権事項扱いしているが、野田の任命責任が免れるとでも思っているのとしたら甘い。政権は末期のそのまた末期にまで到達した。野田は当面の解散要求をかわしても、もう絶対に外れることのないトラバサミにかかったタヌキであることを認識すべきだ。国のためを思うなら次期政権による予算編成の余裕を残して潔く直ちに解散するのが憲政の常道だ。臨時国会解散をたとえしのいでも通常国会冒頭解散は避けられない。もちろん野田が招集することになるが、事実上解散のための招集となる。その後の特別国会は次期政権が招集する。いずれにしても退陣が避けられないのなら、現段階で決断することが国民へのせめてもの“おわび”なのだ。

右派連合は願い下げ! Name:浅野勝人 MAIL NEW! Date:2012/10/26(金) 12:45 
日本に極右国粋主義の第3極は不要だを全面支持します
右派連合は願い下げ!
無責任を独善で糊塗する石原慎太郎氏の手法にもう騙されてはいけません。国を憂うるがごとく装った都政投げ出しの「計算し尽くした突然劇」は、これまでと同じ手口です。石原氏の「公的わがまま」を今回も許すとしたら有権者のミスジャッジとしか言いようがありません。                        政治家は公人です。特に選挙で選ばれた行政官には地域住民に対する重い責任が伴います。任期を2年半残して知事を放り出すこと自体、責任ある公人として失格です。記者会見で、その責めを問われて「心外だ」とは語るに落ちています。正確に言うと「東京を投げ出した」のではなくて「逃げ出した」のだと私は受け取っています。長期に渡った石原都政で、何か成果がひとつでもあったら教えていただきたい。石原知事肝いりでスタートさせた新東京銀行は、アッという間に1,400億円の債務を抱えて倒産しました。無責任極まりないのは、「悪いのは経営者」と述べて、都民に対する知事からの謝罪はひと言もありませんでした。  
自らの責任について自覚のない点は、外交問題について如実です。「尖閣国有化」を誘発させて、40年間積み上げてきた日中友好関係を破壊し、計り知れない物心両面の損失を両国に与えた元凶としての反省どころか「経済の損失は構わない。紛争が起きるのはやむを得ない」という認識を示してはばかりません。公式の場で、中国を「シナ」と呼んで、ことさら中国の人々にことばに尽くせない不快感を与える言動は、帝国主義時代の幻影にとらわれているとしか考えられません。        
とりわけ、記者会見で憲法破棄に関連して「吉田 茂」を愚か者呼ばりして批判した歴史認識は危険です。吉田元首相が天皇の戦争責任を回避し、軽武装、経済重視の国家目標を達成するために受け入れた日本国憲法を否定する石原氏の意図は、集団的自衛権から核武装への道程(みちのり)の実現にあります。         
自民党安倍総裁もしばしば強調していますが、集団的自衛権とは、要請されれば、米軍とペアーを組んで地球の裏側まで戦さに行く義務です。石原氏の持論は、それでも足りずに徴兵制、核武装にあります。到底、賢者の選ぶ道ではありません。有権者のみなさんは、どのようにお考えになりますか。
私は、秘かに大阪の橋下市長に期待していました。日本改造をやってのける逸材と思ったからです。今ではすっかり覚めてしまいました。もし、石原氏と組むに至っては、ガックリです。日本改革どころか、日本と日中関係をいっそう混乱させて、日本を困難に陥れるだけだからです。民主、自民両党ともほぼ右派色に染められ、外交防衛政策で冷静な公明党まで「右」に引っ張られがちな昨今です。
もう、これ以上、右派連合は願い下げです。日本に必要ありません。むしろ、迷惑です。(2012/10/26、浅野勝人)

◎日本に極右国粋主義の第3極は不要だ Name:杉浦正章 NEW! Date:2012/10/26(金) 07:11 
◎日本に極右国粋主義の第3極は不要だ
 第3極と言うが、極右国粋主義の第3極が今の日本に必要な時だろうか。まったくの時代錯誤に過ぎないとおもう。石原慎太郎は新党結成の記者会見で中央官僚制度批判に終始して、あえて憲法破棄論に象徴される外交・安保上の持論に深く触れなかった。これが何を意味するかと言えばさすがに普段の極論を述べては、選挙にならないという思惑が先行したのだ。だから官僚制度の在り方への批判ばかりをとりとめもなく繰り返したのだが、これは民主党の3年前の主張と何ら変わらない。結果は3年間の失政に次ぐ失政だ。年齢は80歳。母体になるたちあがれ日本も代表・平沼赳夫以下息も絶え絶えの状態であった。看板を書き換えても弾みは生まれない。石原ブームなど幻想に過ぎない。唯一最大の注目点は弾みで民主党から新党参加の離党者が出て、首相・野田佳彦への不信任案が成立する状況が出来るかどうかだ。
 石原の“持論隠し”作戦は老獪の一語に尽きる。焦点の尖閣問題についてもせいぜい船だまりの建設に触れただけだ。石原が首相になることは100%あり得ないが、国政を左右するキャスティング・ボートなどを握ったときには日中関係は軍事衝突の危機にまで発展する可能性があることを警告しておく。国家戦略相・前原誠司が先に暴露した問題を見れば明白だ。前原は「8月に行われた石原氏と野田佳彦首相との会談で石原氏は中国との戦争も辞せずと話した」と発言したのだ。石原は「そんなことは言っていない」と否定しているが、自分の発言を「言わない」と否定するのは石原の常とう手段だ。筆者が官邸周辺から聞くところによると、「戦争になってもいいじゃないか」と述べたのは事実だ。これを受けて野田は、尖閣を石原の思うがままにしておいたら本当に戦争になりかねないと判断して、国の所有を決断したのだ。それも事を急ぎすぎて、日中関係を破滅状態に陥らせてしまった。すべての発端は石原の都による尖閣購入発言にある。
 石原の極右国粋主義は73年に中川一郎らと自民党に「青嵐会」を結成したときから変わらないが、近ごろは加齢とともに一層極端になって来ている。「日本は核を持つべきだ。徴兵制をやれば良い」と持論の核武装論を展開。「核保有の模擬実験は可能。3カ月でできる」「プルトニウムは山ほどある」とも述べた。もっとも許せないのは「大震災は天罰」発言だ。被災者の気持ちをどれほど傷つけたことであろうか。東京の有権者の甘さが長期に知事職を壟(ろう)断させたが、最大の失政は自ら旗を振って設立した新銀行東京だ。素人丸出しの経営でピラニアのように出資を食われ、あっと言う間に累積赤字は東京都の出資分1000億円を超過。追加出資の400億円と合わせれば、都民の負担は1人あたり約11000円に達する。反省の弁など一言もない。都政担当の記者のレベルではこれら外交・安保、内政上の問題を突く能力に欠けるのだろう。記者会見の質問は低調に終始した。
 そもそも3極と言っても実現可能だろうか。平沼は「細かいことは言わずに西は維新、東は石原でいい」と述べるが基本政策、理念が一致しなくて、むりやり連合を組んでも選挙目当ての野合に過ぎない。日本維新の会と石原の主張は重要ポイントで大きく食い違っている。その上石原がもっぱら維新に秋波を送っており、橋下は冷静だ。まず石原は憲法破棄論である。破棄して核武装、徴兵制を実現する新憲法を制定するというのだ。維新は改憲だ。原発も維新が脱原発なのに対して、石原は原発維持。消費税に関しても維新の地方税化に石原は反対している。維新が提携交渉を進めているみんなの党代表・渡辺喜美は「増税や原発を容認するなら、民主・自民・公明の3党の補完勢力になり、『維新』ではなく、よくて『新選組』だ」と激しい石原批判を展開している。
 2大政党への影響だが、自民党は躍進傾向を見せており、石原新党が食い込める余地はないだろう。新党はたちあがれ日本とも東京などでは競合する。石原が堂々と選挙区から立候補することを避け、こそこそと比例選東京ブロックから出馬する方針なのも、安易な逃げの姿勢と解釈できる。結局食われるのは民主党だ。維新と石原の挟撃を食らうことになるだろう。問題は野田では当選できないと感じている若手議員らが離党して新党に合流する動きを見せるかどうかだ。しょせん「風」で当選してきた連中には、愛党心などはない。「昨日勤王今日また佐幕」で、その日その日の風任せの連中が9人離党すれば政局を直撃する。不信任案が成立する。そうなれば憲政の常道は解散だ。石原の打った球は思わぬ効果を発揮する可能性があるある。しかし天下の大老害の「最後のご奉公」などはもうしてくれなくていい。時代錯誤の上に悪女の深情けより悪い。 



 


友への手紙
 Name:浅野勝人
MAIL NEW! Date:2012/10/18(木) 16:07 
先日は、偶然、弁慶橋でお目にかかる機会に恵まれました。別れ際に「安倍は反中国ではないでしょうね」と申しましたら、「そんなことはないと思うよ。大丈夫」とのことでしたから、ひとまず安堵しました。
一昨日も、外務大臣が「しばらく時間がかかりそう」と他人事のような発言でした。無能な政権は「中国とはいっさい妥協しません。放置しておくしか手がありません」と言っておれば時が過ぎます。

全財産を費やし社運をかけて中国に進出している中小零細企業が2万数千社あります。この人達は、今日、明日のビジネスに命をかけています。トヨタ級の大企業も年を越したら、中国の生産拠点の半分は閉鎖に追い込まれます。今、世界一の乗用車の市場で韓国とドイツに取られつつあるシェァーを回復するには10年はかかります。それでも無理かもしれません。勉強不足のアホな解説者が「経済封鎖せよ」と言っていましたが、ホントにやったら日本が先に干上がります。石原慎太郎東京都知事が仕出かした損失は計りしれません。解決が一日伸びる度に、天文学的数字の損失が双方の企業、とりわけ日本企業に生じています。

中国は我慢することに慣れています。1840年のアヘン戦争から1949年10月1日の中華人民共和国の建国まで109年かけてやっと勝ち取った「誇り(領土の保全)」の扱いについて安易に妥協することはありません。経済が先にまいるのは日本の方です。
現職を退いて2年余り経つのに、日中重視派としては早く何とかしたい思いに駆られます。

同封の記事の通り、9月29日、中国の国慶節(建国記念日)の式典と祝賀会に招請されて北京へトンボ帰りしてきました。世界各国はお歴々なのに日本からの政治関係者は3人。無職の年金生活者(オレの事)と田中直紀夫妻だけでした。幸い、李肇星、武大偉、王毅、李小林などラオポンヨウとしっかり話し合う機会に恵まれました。野田政権はいっさい相手にしないという強い印象を受けました。それだけに、安倍次期政権への秘かな期待は極めて大きいと感じました。ですから、安倍自民党総裁と靖国参拝の問題が気掛かりになります。                   

安保政策掲示版「10月18日・今朝のニュース解説」が指摘している通り、「政権につけば君子は豹変して参拝はすまい」と私も判断しています。今の安倍の対中国、対韓国強硬発言はもっぱら総選挙対策と受け取りたい。なぜなら、2006年9月、首相に就任したら、靖国参拝を止めて10月に中韓両国を電撃訪問して、小泉首相がぶちこわした日中政治関係を一挙に改善した実績があるからです。        あの頃、小泉政権の下ではありましたが、私の薦めを入れて、麻生外務大臣が張芸謀(チャン・イーモウ)監督、高倉健主演の日中合作映画「単騎、千里を走る」を観に行きました。「麻生外相、単騎千里を走るを観賞」という報道が、中国側の評価をガラリと変えるきっかけになって、麻生・李肇星による久々の日中外相会談の布石になりました。森喜朗元首相も秘かに関係改善の根回しをしていたと聞いています。6年前、安倍首相の中国外交を成功させた下地(したじ)は、さまざまな人脈によって十分に敷かれていました。

今回、あの折との違いを感じさせるのが気掛かりです。      
安倍は、17日、秋の例大祭にあわせて靖国神社を参拝し、首相になっても(靖国参拝を)するのか、しないのかについて、「首相在任中に参拝しなかったのは痛恨の極み」と述べた発言を引き合いに「見当がつくだろう」と踏み込んでいる点です。「するとも、しないともぼかし続けた」前回とは違って、引き戻しにくい環境を自ら承知でつくっています。 それでも、一旦、首相に就任すれば、なにが国益かを慎重に踏まえて、日中・日韓両国との関係改善を優先する政治的判断をすると思われます。首相を経験して、国を預かる役割とは、何をすること、何をしないことかを熟知しているからです。これは民主党政権との本質的な違いです。

私は日中問題では、今のマスコミの論調や多くの識者と異なり、ソロを歌い続けています。 田中角栄、大平正芳、園田直、鈴木善幸、宮沢喜一が消えて、河野洋平を残すだけとなりました。民主、自民ともに中道右派のいわゆるタカ派しかいなくなりました。ハト派だった田中・大平・園田の思いを語るのは、周恩来に会った経験のある私しか残っていないと自覚しているからでもあります。      週刊誌、夕刊紙の反中国記事のオンパレードには、中国側も呆れています。久々に味方(経団連会長)が現れて、私と同じ「けんかの棚上げ、トウ小平路線への回帰」を言ったと思ったら、週刊誌に一斉に「売国奴」と書かれて黙ってしまいました。つまりは、わたしも売国奴ということになります。私は、何を言われてもソロを歌い続けます。昔から自分が言っていることを繰り返しているだけです。それに「日中は、和すれば共に利あり。争えば共に傷つく関係」とは、真理だと思っているからです。ネットのサイトで自らの主張を繰り返している愚直な74才を旧友は理解して下さると確信しています。                         
中国国内では、やっと、ノーベル文学賞の「莫言」を含めて中国の知識人、数百人が私と同じ「けんかの棚上げ」を言い初めているようです。日本からも呼応したいのですが、悲しいことに勇気あるマスコミがありません。
お互い、この年になると、さすがに「我のため」では無くなります。日中両国のためはアジア・太平洋地域の平和と繁栄のためです。  
秋の夜長をゆるりと語り明かそうではありませんか。    
<元内閣官房副長官、元外務副大臣、元NHK解説委員、東北福祉大学特任教授>     




 


  









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政治ノート・浅野勝人


パネッタ歴訪を読む!
浅野勝人
ホワイトハウスは、尖閣諸島・釣魚島をめぐって熱くなっている中国の世論を懸念しました。中国政府が世論の弱腰批判に背中を押されて、これ以上本気になったら危ないと真剣に案じました。念のため、パネッタ国防長官を派遣して日中双方に「頭を冷やせ」と伝えました。
アメリカは、イスラム圏でイスラム教の預言者・ムハンマドを誹謗する映像制作に端を発した反米闘争が燃え上がり、死者まで出ている騒ぎに困惑しています。その上、アメリカがもっとも重視している日中両国の諍(いさか)いは手に余ります。
親しいアメリカの外交筋が「いざとなったら米軍が助けてくれると勘違いしない方がいい。日中の武力衝突に米軍が介入することは100%ない。いまのアメリカにとって、日本と中国を秤にかけてどちらか選ぶのは不可能だ。紛争を起こさせないことしか念頭にない。そのための抑止の力は、日中双方に対して十分あると思う」と忠告してくれました。パネッタ歴訪はこの忠告を裏付けました。

パネッタ長官は、森本防衛大臣との会談で、平和的に解決する努力を要請する旨述べて、尖閣が日米安保条約の適用範囲にあることを明言しました。
日米安保条約は、フィリピン以北の日本とその周辺を対象にしており、韓国と台湾地域を含みます。ですから、条約通りの解釈を言ったまでのことです。逆に、尖閣が適用範囲ではないとしたら、日米安保条約を破棄することになり、同盟関係の解消を意味します。そんなことはあり得ませんから、日本との同盟関係に何の変化もないことを伝えて、日本に安心感を与えるための配慮です。
その意味では、尖閣沖の漁船衝突事件の折、ワシントンに駆け込んで、クリントン国務長官から「尖閣は日米安保の対象区域」と言ってもらって、満面に笑みを浮かべた外務大臣は、無邪気としか言いようがありません。

パネッタ長官は日本から中国に回り、まず梁光烈国防相との会談で「釣魚島への日米安保条約の適用は不当」と抗議されました。これに対して「日米安保条約の義務を果たすアメリカの立場に変わりはない」と応じて、中国が過激な行動に出ないようけん制しました。
次いで19日、次期政権を担当するとみられる習近平副主席と会談し、この席で、習副主席は日本政府の尖閣国有化を厳しく非難して、「アメリカは釣魚島をめぐる争いに介入すべきではない」と主張したと言われます。パネッタ長官は、領土問題については中立の立場を貫くのがアメリカ政府の基本方針だと説明して、平和裡に解決するよう求め、中国への配慮をにじませた模様です。
パネッタ長官は、一連の会談を終えて「日中双方の指導者に対し、平和的に解決する責任があると要請した。アメリカは領有権の争いについて、どちらか一方の立場に立つことはない」と述べています。
パネッタ長官は、世界でもっとも信頼の厚い日本との同盟関係が強固であることを示しました。その一方で、世界第2位の経済大国にのし上がった中国との友好関係を維持し、強化するための役割も果たしました。
綱渡りのパネット歴訪は、日中の紛争は回避させたいというアメリカ政府の強い意向をアジアに伝えたという意味で成功でした。
この背景となっている現在の米中関係を経済面から分析してみます。
アメリカの輸出入を合わせた去年の貿易実績は、総額6,030億ドルのカナダとの貿易がトップです。次いで中国との5,060億ドル、およそ40兆円が2位です。3位のメキシコ(4,660億ドル)に大きく引き離されて1,990億ドルの日本は4位です。米日貿易は米中貿易の4割に満たないのが実情ですから比較になりません。

アメリカ財務省の発表によりますと、アメリカ政府発行の国債を購入しているのは、政府以外で買っている民間の個人、企業、団体を合わせて、近年、急激に増えている中国が1兆1,496億ドルで、日本の1兆1,171億ドルをわずかに抜いてトップになりました。ことし7月現在の直近のデータです。
今後の見通しを推測すると、外貨準備高が日本の3倍を有する中国は、その気にさえなれば、アメリカ国債の引き受け実績を伸ばすのは容易です。とても日本は太刀打ちできません。
従って、アメリカは中国との関係をこじらせて通商・金融摩擦をおこしたら、自らの経済・財政事情を危うくします。だから、中国との力関係を維持するため、軍事力をアジアにシフトして、西太平洋及び南シナ海での米軍を強化し、軍事面で脅威と警戒感を中国に促しています。
日中貿易が、2007年に日米貿易を抜いて以来、輸出入合わせた去年の実績は、日中・27兆5,439億円。日米・15兆9,491億円で、格差は11兆5,948億円に広がりました。
日本経済にとって、投資先の中国の生産工場と市場が死活的に重要なのと同じ、もしくはそれ以上にアメリカにとっても中国市場は欠かせない存在になっています。

尖閣騒動のあおりは中国国内で波紋を広げているようです。経済活動への影響だけではなく、人事の往来が途絶え、秋に向かって中国人観光客をあてこんでいたデパートやホテルはガックリきています。上海市内のレストランの「日本人の入店お断り」の張り紙には心が痛みます。
こんな事態を引き起こした元凶の石原東京都知事は、記者会見で相変わらず、中国の国名を帝国主義時代の呼称の「支那」と呼んで憚(はばか)りません。予想外の発展に困惑して引っ込みがつかず、つっぱっているのなら国益を損なうだけですからもう幕を引いたら如何でしょう。
野田総理は、圧倒的多数で与党党首に再選されたのですから、一日も早く着地させる努力を最優先すべきです。 
 
『写真説明』 北京大学第2回特別講義、右は通訳の日本文学博士・トウグン北京大学教授。講師:安保政策研究会・浅野勝人理事長。次回、4回目講義は1018日予定。
(2012/9・22 記  浅野勝人
◎尖閣をあまく見るな!

久しぶりに北京在住の中国人の旧い友人に電話をしてみました。開口一番「日本政府は戦さでもするつもりか」と言われました。
今回の混乱は、日本のスーパーの略奪や工場の破壊、日本料理店への嫌がらせだけが被害ではありません。長い間に培われてきた日中間のさまざまな絆が手痛い打撃を被ったのが、何よりおおきな損失です。サッカーの日本代表元監督、岡田武史さんが率いる中国スーパーリーグ「杭州緑城」のゲームが延期されました。監督が日本人だからという理由です。
岡田さんは日中相互理解の深化をめざして、短時間のうちにさわやかなチームを作って勝ち進んでいます。内外から人間として尊敬され、中国国内で高く評価されています。誰が、岡チャンの努力を妨害しているのか明らかです。
私の知人の会社は、18日から幹部社員30人が中国研修旅行の手配を終えていました。全員で話し合った結果、中止しました。社員の中からキャンセル料200万円を石原慎太郎東京都知事に請求したらどうかという意見が出たそうです。
不信と混乱を招いた主因の石原知事は、14日の記者会見で「中国は気でも狂ったんじゃないか。海洋監視船は体当たりして追い出せ。経済利益を失うのはかまわない」と述べています。気が狂っているのは石原知事の方だという自覚がありません。
日中貿易の総量は、去年、日米を11兆5,000億円上回りました。
2007年、日中が日米を追い超して以来、年々、双方の格差は拡大しています。今や、中国は日本経済にとって死活的に重要な市場だという事実認識が石原知事にはないようです。
むしろ、石原知事の狙いは日中関係を徹底的に崩壊させることではないかと映ります。
いったい、石原知事の真意は何なんでしょうか?
巷間、伝えられている「核武装」のための世論作りが目的なら願い下げです。中国嫌いに核武装を重ねて利用されている日中関係は迷惑千万です。
日中平和友好条約の締結交渉の折、福田内閣の園田直外相と何度も会談した?小平副主席は、尖閣諸島・釣魚島の帰属をめぐる論争を避けて、条約締結を優先しました。これが「領有権の帰属論争棚上げ」です。
当時、NHK政治記者として人民大会堂で取材していた私は、争いの基となる領土の帰属論争を棚上げして、長期的視野に立って解決策を模索する知恵を「?小平路線」と呼んでいます。
ところが、ある時期から?小平路線に固執するのは、中国に対して弱腰の手ぬるい姿勢という指摘が日本国内の中道右派から台頭してきました。
この見解には、?小平路線を守ってきたのは日本政府だけではないこと。中国政府も堅持してきたという視点が欠けています。現状維持を前提とする?小平路線は、現に実効支配をしている日本政府より、中国政府にとってきつい実態に気付くべきです。だから、中国のデモが、日本批判と同時に中国政府の弱腰を突いているのです。
日本固有の領土が不法占拠されている北方4島および竹島とは、根本的に事情が異なります。    尖閣は、微妙にバランスを保たせてきた?小平路線を日本側から壊した以上、このまま放置しにくくなりました。
これが、石原知事の犯した最大の罪です。
日本政府が「領有権問題は存在しない」と繰り返しても、台湾を含めて日中の主張が真っ向から対立しているのですから現実の解決にはなりません。
平和友好条約締結から35年が経ちました。?小平が「20年でも30年でも放っておけばいい」と言ってから、その歳月も過ぎ去りました。このまま放置していては、日中双方の政治に知恵がなさ過ぎます。
もう、そろそろ、国益を踏まえながら、相手を尊重する立場に立って、「いい知恵」を絞り出すための話し合いのテーブルに着く時期が熟したのではないかと私は考えます。(2012/9/16 記)
写真説明
15年前の名古屋場所。総理代理で総理大臣杯を優勝力士の貴乃花に授与。重さ60キロ。
名古屋場所、杯の重さを 想い出す



安保ノート・柳沢協二

「普天間切り離し」でも漂流する日米同盟
安保政策研究会 常務理事 柳津 協二
 4月末、野田佳彦首相が訪米してオバマ大統領と首脳会談を行い、6年ぶり
となる日米共同声明「未来に向けた共通のビジョン」を発表した。多くのマス
コミは、普天間基地の固定化の懸念は残るが、軍事力で存在感を増す中国の戦
略を晩みながら、日米の同盟関係は深化したと報じた。そこでは、日米同盟が「ア
ジア太平洋地域における平和、安全保障、安定の礎(cornerstone)である」こ
とが確認され、鳩山政権以来「漂流」していた日米同盟をつなぎ留めたかに見え
る。
ビジョンの見えない「共通ビジョン」
 鳩山政権による同盟漂流の原因は、米海兵隊普天間基地の移設をめぐる混乱
だった。今回、首脳会談に先立って行われた外務・防衛閣僚による日米安全保
障協議委員会(2+2)では、米海兵隊のグアム移転と06年以来の懸案であ
った嘉手納基地以南の米軍施設の返還を、普天間移設問題と切り離して進める
「米軍再編見直し」に合意している(2+2共同発表)。
 その背景には、台頭する中国に対する軍事的優位を維持したい米国が、議会
に拒否されている海兵隊のグアム移転経費の復活を急ぎ、そのために、日本側
の負担を確定しなければならない事情があった。野田政権としても、消費税法
案の審議入りに向けて、日米同盟のこれ以上の不安定化は避けておかなければ
ならなかった。
 今回の合意によって、普天間をめぐって鯵着していた日米の戦略協議が動き
出すことになった。だが、問題の本質は、米軍の配置をどうするか、その前提
となる対中軍事戦略をいかにすり合わせるか、という点にある。その意味では、
今回の合意文書は、「共通のビジョン」という表題とは裏腹に、ビジョンの見え
ない暖昧なものにとどまっている。
防衛協力の政治指針を欠いた兵力配置
第1に、自衛隊と米軍の防衛協力を進めるための指針が暖昧である。
共同声明では、「日本の動的防衛力の構築と、米国がアジア太平洋を重視する
戦略を含め、それぞれのコミットメントを実行していく」としているが、両者が
どのように戦略的連携を図るかについては触れていない。
 アジア重視という意味で共通する1996年の日米安全保障共同宣言と比較
すれば、その違いは歴然だ。96年の共同宣言は、日米安保体制がアジア太平
洋地域の平和と安定に寄与するものと「再定義」したうえで、朝鮮半島有事を
念頭に置いたいわゆる「周辺事態」における協力のため、78年の「日米防衛
協力のための指針(ガイドライン)」の見直しに言及した。
 これを受け、97年の新ガイドラインでは、周辺事態における自衛隊による
情報協力や、作戦に従事する米軍への補給、来援する米軍への基地提供などの
「後方地域支援」が定められ、日米の活動範囲や機能における役割分担が明確
化されることになった。
 96年共同宣言は、日本防衛に限定されていた同盟のスコープを日本周辺地
域に拡大することによって、冷戦後の同盟漂流を食い止める役割を果たしたの
である。
 一方、今回の2+2文書では、中国を念頭に、「(日本による)動的防衛力の
発展及び南西諸島を含む地域における防衛態勢の強化が同盟の抑止力を強化す
る」と述べる一方、米軍については、「地理的により分散し、運用面でより抗堪
性があり、政治的により持続可能な」態勢を実現するとしている。
 これは、南西諸島防衛は第一義的に自衛隊の役割とするように読めるが、そ
れでは、「地理的に分散」した米軍が、日本有事に何をするのか分からない。
 また、地域協力の文脈では、「地域における動的防衛協力(dynamicdefense
cooperationintheregion)の促進」を目指し、グアムの拠点化の推進や北マ
リアナ諸島における訓練施設整備を盛り込んでいる。島喚防衛のための上陸作
戦の訓練が予定されているようだが、それは、日本防衛の訓練ではあっても、
地域の安定にどうつなげていくのかが分からない。
 そこに新たな意味を読み取るとすれば、防衛協力のスコープを「我が国周辺
における事態」から「アジア地域における事態」に拡大することを意図してい
るのかもしれない。そうだとすれば、ガイドラインの再改定が必要になるはず
であり、文民統制の原則から言えば、96年のように、その政治的意図が明示
されるべきではないか。
 同文書の末尾には、「より広い観点から、日米同盟における役割・任務・能力
(RMC;roles,missions,andcapabilities)を検証する」と述べているが、
米軍の兵力配置は、RMCが前提となって決まるのであり、その逆ではない。
仮にRMC検証作業の結果、不足と判断されれば改めて再々編する、というこ
となのだろうか。
 今回のアプローチは、少なくとも論理的手順が違う。それがまた、今回合意
の結論が説得力を欠く最大の原因となっている。
不透明な海兵隊の役割
 第2に、今回、沖縄に残留することとなった海兵隊の構成が変わったにもか
かわらず、その理由、役割が説明されていない。
 今回の米軍再編見直しでは、グアムやハワイに移転する兵力の数が変わった
だけでなく、06年の「米軍再編実施のためのロード・マップ」において移転
を予定していた第3海兵機動展開部隊(VMEF;MarineExpeditionaryForce)
司令部と実戦部隊である第31海兵機動展開隊(31ME U;Marine
ExpeditionaryUnit)が沖縄に残されることになった。これに伴い、全面返還
される予定だった牧港補給地区の本体部分(倉庫群)は、県内に代替施設を建
設した後に返還されることになった。
 司令部と補給施設を残すことは、有事における作戦の拠点となることを意味
している。一方、MEUは、戦争であれ災害であれ、事態に真っ先に即応する
部隊である。両者がともに残置されることは、沖縄をあらゆる事態に備える拠
点として固定化していく意味がある。
 31MEUは、おそらく、ローテーションを前提として、訓練と休養のため
に沖縄に本拠を置くものと思われるが、VMEF司令部が沖縄に残るのであれ
ば、「グアムの戦略拠点化」と、どのように整合するのか。
 また、米当局者が言う「ミサイル3発で沖縄の海兵隊はすべてやられてしま
う」(朝日新聞5月3日付『普天間棚上げ、対中シフト 日米首脳会談』)とい
う脆弱性を覚’悟したうえで、あえて沖縄にVMEF司令部を残すということは、
沖縄でなければ果たせない余程の役割があるはずだ。
 例えば、自衛隊が憲法上できない作戦の典型例として、「中国本土への奇襲上
陸」があるが、中国相手の上陸作戦など、米軍にとっても不可能だろう。

 あるいは、「中国を恐れて沖縄から逃げ出すという印象は避けたい」(上記記
事)という動機であれば、もはや「抑止力」として機能していないことを認め
るようなものだ。
 前述したように、今回の共同声明が「自衛隊の動的防衛力・南西諸島の防衛
態勢」と「米軍の新たな戦略」の連携にあえて触れていないのは、対中国の文
脈で海兵隊の役割を説明できないからではないか、とすら思えてくる。
 普天間を切り離すことと、普天間の県内移設を説得することとは別だ。県内
移設を説得することはすなわち、沖縄の海兵隊の存在意義を説得することにほ
かならない。ところが、共同声明にも2+2合意文書にも、それに関する言及
はないのである。
普天間移設は「政治的に実現可能」か?
 それと関連して第3に、米軍再編の核心である普天間を「切り離して」解決
しようとする政治姿勢そのものの矛盾を指摘しなければならない。
 首脳会談直前に、米議会上院の有力議員から「普天間の辺野古移設が唯一の
有効な解決策」とする2+2合意文書に対する異論が出され、修正を余儀なく
されたのも、辺野古移設に固執する日米両国政府への不満にほかならない。
 沖縄県の仲井真知事も、嘉手納基地以南の米軍施設の早期返還は歓迎しつつ
も、普天間の県内移設には反対の構えを崩していない。
 そもそも、今回の見直しは、普天間移設の停滞がすべての案件をストップさ
せていた現状を打破するため、全体の案件を「パッケージ」としてきた従来の
方針を修正するものであり、その結果、普天間移設と関連しない施設が返還さ
れたとしても、沖縄基地問題の解決を意味するものではない。
 今回、野田首相は、首脳会談において普天間問題が一切取り上げられなかっ
たことに安堵している由だが、それでは、鳩山由紀夫首相の「トラスト・ミー」
発言が招いた混乱を収拾したことにはならないし、沖縄へのメッセージにもな
らない。
 2+2文書は、普天間飛行場の移設について、「運用上有効であり、政治的に
実現可能であり、財政的に負担可能であって、戦略的に妥当である」ことを基
準に判断した結果、現行案が事実上の「唯一の解決策」であることを改めて確
認した。
 だが、復帰40周年を迎えた沖縄では、政府への不信感が高まっている。米
議会上院は、アジア太平洋における米軍配置の包括的計画を要求して、再びグ
アム移転経費の計上を拒否した。沖縄県議会議員選挙でも、民主党は惨敗した
が、自・公を含むすべての候補者が県内移設に反対している。
 こうした状況を見れば、「現行案」はおろか、今回の見直しも、すでに「政治
的に実現可能」ではなくなっていることは明らかだ。
 また、消費税増税が議論される中で、辺野古沖の大規模な埋め立てを伴う事
業が「財政的に負担可能」と言えるかどうかも疑わしい。

 さらに、「戦略的妥当性」については、米軍のアジア地域へのプレゼンスが「地
理的に分散」されるという、06年のロード・マップ当時にはなかった新たな
趨勢と、自衛隊の南西諸島防衛態勢が強化される中で、何故、沖縄海兵隊のみ
が固定化の方向を目指すのか、全く説明されていない。
 沖縄と米上院の反応も、「戦略論なき小手先の修正」に対する拒否感にほかな
らない。
構造的同盟漂流の時代
 「同盟漂流」は、今日始まったことではない。それは、主として、国際情勢が
変化し、米国の戦略が変化する中で日本の対応にタイム・ラグがあることに原
因があり、やがて日本の政策がそれにキャッチ・アップする形で収束されてき
た。
 例えば、冷戦後の同盟漂流は、上に述べた「橋本・クリントン共同宣言」の「安
保再定義」によって克服された。
 911に続く対テロ戦争の時代には、インド洋、イラクへの自衛隊派遣とい
う小泉政権のいち早い対応によって漂流は未然に防がれた。だが、07年に自
衛隊がイラクから撤収し、ブッシュ政権の重点がアフガニスタンに移行すると、
同盟の「紳」を象徴する自衛隊派遣のメニューが事実上消滅し、米国の不満と苛
立ちを招いた。ただ、その「危機」は、米国におけるオバマ政権の誕生に伴う対
テロ戦争からの撤退方針によって、現実化せずに済んでいた。
 今日、米国の戦略的焦点が再びアジアに回帰している。だが、アジア重視と
日本重視は同じではない。米国の戦略変化にキャッチ・アップしたくても、米
国の戦略や日本に対する期待は、未だ明確に定義されていない。冒頭に述べた
ように、今回の共同声明において日米連携の将来像が明確に語られていない理
由もそこにある。
 確かに、相手が最大の貿易・投資相手国の中国となると、「敵」や「脅威」と
いった明快な言葉で説明できない事情は理解できる。だが、それは、言葉の選
択の問題ではない。
 首脳会談の直後、米国は中国との戦略対話に臨み、一層の経済関係の深化に
合意した。米国経済の復活に向けた頼みの綱である中国を「脅威」として「封
じ込める」ことは政治的に不可能だ。軍事的に見ても、中国の海洋進出の趨勢
を止められない現実がある。その中で、米国の対中基本姿勢が「ヘッジ」なの
か「関与」なのか「期待と放任」なのか、一義的に決められないところに、米
国の戦略思想が暖昧にならざるを得ない最大の理由がある。
 日本にとっても、二者択一ではないとしても、中国とのF TAの利益の方が
米国とのTP Pのそれより大きい現実がある。
 対中戦略の暖昧さを突き詰めて行けば、やがて日米両国の戦略目標の詑離が
明らかになる可能性もある。中国の軍事力は、日本にとっては、領土問題を含
む離島(国士)防衛の問題である一方、米国にとっては、航行の自由を旗印と
する海洋における勢力均衡の問題であるからだ。
 それは、中国に焦点を当てることで軍事的には強化されるはずの日米同盟が、
同じ理由によって政治的には漂流の契機を芋むことになるパラドクスである。
仮に同盟をつなぎ留めたとしても、米国自身の対中国戦略が経済的依存と軍事
的覇権の間で揺れ動くならば、日本はつなぎ留めた同盟とともに漂流すること
になる。かつて小泉純一郎首相が言ったように「日米さえよければすべてうま
くいく」時代はすでに終わり、同盟は、構造的漂流が避けられない時代を迎え
ている。
柳津 協二(やなぎさわ きょうじ)
元内閣官房副長官補
元防衛庁官房長



北朝鮮ウオッチ・寺田輝介


北朝鮮情勢一金正恩政権の行方
はじめに
 金正日総書記の死去の後、金正恩政権の樹立は極めて順調に推移した。昨年
の12月30日、朝鮮労働党政治局会議により、金正恩は軍最高司令官に推戴
されると共に、本年に入ると4月11日に開かれた党代表会で正恩氏のため第
1書記を新設し「党の首班として代表し全党を領導する」と党規約が改正され、
第1書記に就任したのに加え、党中央軍事委員長にも就任した。更に4月13
日の最高人民会議で国防委員会第1委員長に任命された。この結果短期間のう
ちに、少なくとも肩書きの上では、「党」と「軍」を手中に収めることになった。
 この短期間で樹立された金正恩政権の命運を考えることが本稿の狙いである。
政権を支える基盤
 昨年12月28日に催された国葬における葬列は見事にその時点における金
正恩を支える中枢グループの存在を示した。霊枢車に寄り添う金正恩のすぐ後
ろに、張成沢・国防委副委員長、続いて金己男・党書記、崔泰福・最高人民会
議議長、反対側には李英鎬・軍総参謀長、金永春・人民武力相、金正角・朝鮮
人民軍大将、禹東則・国家安全保衛部第1副部長が葬列に参加した。この「7
人衆」が金正恩政権を支えるキイパーソンであると同時に、7機関を代表する。
すなわち、「7人衆」がそれぞれ「国防委員会」、「労働党」、「最高人民会議」そ
して人民軍の4機関(「総参謀部」、「人民武力省」、「総政治局」、「国家安全保衛
部」)を代表し、金正恩政権を支える基盤であることを世に示した。
李英錆総参謀長の解任とその背景
 こうして金正恩体制の基盤固めが出来たと思われたところ、朝鮮労働党は7
月15日、政治局会議を開き、李英鏑軍総参謀長について、病気を理由に政治
局常務委員など党の全役職の解任を決定した。李英鏑は、軍の最強硬派として
知られ、金正日の強い信頼を受け、金正日の主導する「先軍政治」の先兵であ
った。また、李英鏑は、2年前金正恩と共に党中央軍事委員会副委員長に抜擢
されたのに加え、政治局常務委員にも任命されるなど文字どおり正恩の軍事面
における後見人と目されていた。
 このような背景の中で、今回突然行われた解任劇をどう見るべきであろうか。
一つの見方は、軍を代表する李英鏑を排除することにより「先軍政治」により
失われた朝鮮労働党の復権を図るとの解釈である。金正日総書記は冷戦終結直
前のルーマニアの状況に衝撃を受け、人民裁判により処刑されたチヤウシェス
クの二の舞(この間軍は傍観するのみであった)を避けるべく、軍を完全に政
権側につけるため、「先軍政治」を始めたとされる。従ってこの見方は、金日成
時代の如く党が主導する統治体制に戻ることを予想するものである。
 7月12日付き朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の社説は、「党は軍事優先を掲
げる一方で、民生分野で多くの政策を打ち出した」と論じている。この社説は、
正恩政権は軍事優先路線を堅持しつつも、民生改善に取り組むことが政権の安
定につながるとの立場を示している。恐らく金正恩の戦略は、経済の再生によ
って民心をつかむ、この為には「先軍政治」の下で政治的発言力と経済的利権
を肥大化してきた軍部を抑え、国民に利益を還元することを狙うことであろう。
7月15日に李英鏑を解任し、18日には正恩氏自身が軍階級の最高位の「元
帥」に昇進することにより軍を掌握したことを内外に示した。今回の軍総参謀
長の突然の解任は単なる党の復権を狙うことに止まらず、経済改革をも視野に
入れた戦略の展開と見ることが出来る。
 北朝鮮経済は現在最悪の状況下にある。軍は「先軍政治」の下、自ら「第2
経済」を管理し、対外貿易で巨額の利益を上げるものの、国民経済(「第一経済」)
に寄与することはない。また軍は既得権を守る立場から経済改革には反対であ
る。北朝鮮は、核実験や長距離ミサイルの発射実験などで国際社会の厳しい経
済制裁を課されている上、慢性的な食糧不足に悩まされている。加えて本年前
半には厳しい干ばつに見舞われ、7月には豪雨による洪水の被害を受けたと報
じられており、食糧事情は一段と深刻になると見られる。この様な状態が放置
されれば国民の不満が高まり、正恩政権に矛先がむけられることは当然である。
従って李英鎬の突然の解任は、金正恩政権が経済の立て直しを焦眉の急と考え、
軍の既得権を抑える必要に迫られたことがその背景であると考えられる。因み
にこのような見方が広がっているとの指摘が7月21日付け朝日新聞の記事に
おいても見られる。
金正恩政権の命運
 最近出版された五味洋治氏の「父・金正日と私 金正男独占告白」の中で、
金正男は「37年間の絶対権力を、(後継者教育が)2年ほどの若い世襲後継者
がどう受け継いでいけるのか疑問です。若い後継者を象徴として存在させ、既
存のパワーグループが父上の後を引き継いでいくと見られます。」と発言したと
している。正男が言う「パワーグループ」の中核を占める人物は、間違いなく
金総書記の実妹の金敬姫と夫の張成沢であろう。この二人こそ金正恩のもっと
も頼りにする後見人である。
 今次李英鏑解任劇の仕掛け人は、張成沢であると推定される。張が金敬姫の
同意を得て、自分の子分とも言うべき窪竜海軍総政局長を使い実行・上演した
政治的解任劇と見られる。常識的に見て29歳とも言われる若輩金正恩が自ら
思いつき、実行するだけの政治的経験及び力を有しているとは考えにくい。張
成沢はかねてより経済改革推進派と知られ、軍と衝突していた経緯があったこ
とからも、正恩政権の誕生を契機に、経済改革に反対する軍の最大の実力者の
排除を企てたと解釈できよう。
 金正恩は最近、頻繁に自らの動静をメディアに露出させ、「親しみやすい指導
者」のイメージ作りに努めているようである。狙いは金正恩の世襲の正当化で
あろう。金正恩政権が今後長期にわたり存続できるか否かは、「イメージ」作り
の成否ではなく、苦境にある国民生活を改善すること、すなわち大胆な経済改
革を進められるかどうかである。金正日時代に試みられた「経済改革」と目さ
れた経済措置はことごとく失敗に終わった。金正恩が果たして経済改革の推進
に成功するか否か現時点ではまったく予断を許さない。
 最後に前掲の書より金正男の咳きを再度引用したい。著者の「北朝鮮は今後、
いずれの時点で経済の改革・開放をするでしょうか」との問いに対し、金正男
は「ジレンマに陥っていると思います。改革しなければ経済の破たんは目に見
えていますが、改革すれば体制の危機を招く。そうやって時間が経ってしまう
のではないでしょうか」と答えたとされている。金正恩政権の前途は多難であ
る。
2012.7 記
寺田 輝介 (てらだ てるすけ)
フオーリン・プレスセンター前理事長
元韓国駐在大使
元メキシコ駐在大

中南米ウオッチ・寺田輝
中南米ウオッチ          2012.10
寺田輝介

近年中南米において特に注目すべき諸点は、先ず米国の政治的影響力の後退が続いている一方、米国の戦略的空白を衝いて影響力の増大に努めてきたチャベス大統領の外交力にも本年10月7日の大統領選の勝利にも拘らず、翳りが見えてきた点である。次に経済面に目を投じると、新たな経済同盟の誕生、ブラジル,アルゼンチンの保護主義的政策等、経済的利害関係をもつ日本としても目が離せぬ動きが出てきた。以下これら注目すべき諸点について解説、分析を行う

1. 2001年の「9.11同時多発テロ」の発生を契機に、米外交の優先順位がイラク、アフガニスタンへとシフトしたことから、米国の対中南米政治的・外交的関心が急激に低下し、「米国の裏庭」と言われてきた中南米に大きな地政学的空白を生む結果となった。まさにこの間隙を突いて、チャべス・ベネズエラ大統領は石油を武器に反米陣営の結成を始めた。チャベスは、早くも2001年11月にALBA[米州ボリバル代替構想]を打ち出し、当時米国が積極的に推進してきたFTAA[米州自由貿易地域]に対抗、中南米諸国の協力・連帯・補完の原則に基づく統合構想を提唱した。ALBAは2004年に発足。キー-バ、ニカラグア、エクアドル、ボリビア等がこれに参加した。更に2005年チャベスはPETROCARIBEと称する「石油借款」協定を使い、カリブ海諸国を取り込むことに成功した。チャベスにとり万事順風に思えた反米外交の推進も,ALBAの拡大には結びつかず、2011年6月に行われたペルーの大統領選挙において、チャベス陣営に取り込んだと思われていたウマラ候補が、チャベスの対抗馬であった当時のルーラ・ブラジル大統領が推進する「ブラジル・モデル」に乗り換えて当選したことにより、大きな挫折を見た。加えてチャベスは、昨年6月キューバ訪問中に癌の治療を受けたと発表したが,爾後キューバにおいて頻繁に追加治療を受けており、チャベスの健康状態が足元の政権維持にとつても不安材料になっている。又最近ベネズエラの経済状況が思わしくないこともチャベスの対外「反米」行動に一段とブレーキが掛かっていると見られる。
2. 本年の8月「ウィキリークス」代表のアサンジュ容疑者の政治亡命をエクアドル政府が認めたことが一時内外メディアの関心を集めた。チャベス路線に忠実なエクアドルのコレア大統領は記者会見で、アサンジュ氏を米国に引き渡さないと保証すれば、同氏はスウェーデン当局の調べに応じる用意があると発言したと報じられているが、コレア大統領の政治的思惑については本邦紙の報道で触れられたところはない。この疑問に対し、8月20日付けInternational Herald Tribune 紙に投稿したHaverford CollegeのIssacs教授は、コレアの政治的狙いは、アサンジュ事件を使い反米的立場を内外に鮮明にした上で、来年の大統領選を有利に運ぶと共に中南米左翼陣営における指導権確保を目指すことにあると分析している。またThe Miami Herald 紙(8月22日付電子版)のOppenheimer記者は、米国に政治亡命中のエクアドル有力記者Palacio氏の発言として、コレアはフィデル・カストロとチャベスの退場(死去)は間近いことから、ALBA陣営の新指導者の地位を襲うことを狙っていると報じている。いずれにせよ、前記米紙の報道は、コレアの野望が明らかにされる程、チャベスの存在感が低下していることを示唆するものである。
3. 10月7日に行われた大統領選挙でチャベスは、55.15%の得票率で4選を果たしたが、主要野党統一候補のカプリレスは44.25%を獲得した。9日付「朝日」は「公務員の多くがチャベス氏への投票を求められ、対立候補への応援がはばかられるような状態だったことを考えると、票差以上の僅差の争いだった可能性がある」と現地から報じている。チャベスが1998年に初当選して以来、治安の悪化、インフレの昂進等が続いており、有権者の内政面での不満は一段と増大していると見られ、今回チャベスが得た投票率は過去3回の大統領選に比べて大きく低下した。この様にチャベスの国内基盤が揺らいできたのに加え、チャベスの健康状態が依然として疑問視されており、中南米のメディアではチャベスが6年の任期を全うできるか疑問視する声が出ている。一方チャベスは反米路線の継続を目指しているものと見られるが、チャベスの外交力の基盤をなす石油生産や外貨準備が減り続けており、もはや反米外交にはかっての勢いは見られない。
4. 米国の中南米における地位の低下を示す具体例は、2008年12月、米国抜きで地域統合を目指す、中南米・カリブ海諸国33ヵ国による初の首脳会議が開かれ、2011年12月には「中南米カリブ海諸国共同体」(CELAC)設立のための会合の開催に至ったことである。但し刻下の中南米の政治的・外交的空間は、力が衰えたとは言えチャベスが先導する反米陣営(キユーバ、ニカラグア、ボリビア、エクアドル等)、メキシコ、コロンビア、チリ等対米協調陣営、南米の盟主を自認するブラジルからなり、政治的、外交的、経済的差異が大きいが故、CELACが設立されても地域統合の完成は至難の業である。もつとも昨年12月に訪日したコスタリカのラウラ・チンチジヤ大統領は、「CELACは貴重な出会いの場であり、「対話」と「協調」の場であって、既存の米州機構を代替する機構ではない」とコメントしていた(2011年12月7日日本記者クラブにおける発言)。本年に入って米国の威信の陰りを改めて示したのは、オバマ大統領が出席した米州機構首脳会議(本年4月コロンビアで開催)でキューバ問題が紛糾し共同声明を採択出来なかつたことである。米国の力が圧倒的であった米州機構に於いて米外交が挫折したことは、米国の対中南米外交に暗影を投じた。今後米国が中南米に影響力を回復出来るかどうかについては次期政権の出方を見る必要がある。
5. 最近の中南米経済関係においては多くの動きが見られる。先ず注目すべき経済事象は、中南米で通商政策と経済体制の二極化が鮮明になってきたことである。自由貿易に積極的なメキシコ、コロンビア、チリ、ペルーの四ヵ国が本年6月経済共同体「太平洋同盟」を設立した。6月8日付「日経」は、「(太平洋同盟は)太平洋に面する地の利を生かして、高成長が見込めるアジアとの関係を重視する」と指摘している。なお、同紙によれば、6月6日チリで開催された太平洋同盟首脳会合及び太平洋同盟枠組み条約署名式に、カナダ、日本、豪州が招待されたとあるが、アジアより日本のみが招待されたとの経済外交的意義は特に重要である。一方南米南部共同市場(メルコスル)は、停滞気味であるのに止まらず、同共同市場の有力加盟国であるアルゼンチン、ブラジルの二ヵ国が近時保護主義的傾向を示すようになった。この様な傾向が放置されるならば,メルコスル経済圏の経済成長は余り期待出来ないことになる。因みに報道によれば、メルコスル加盟国間の交易量は、相互の保護主義的貿易障壁の為、近年減少しており、亜伯間の貿易は本年10%減少すると予想されている。この様に停滞しているメルコスルに本年新しい動きが見られた。即ち本年8月ブラジリアで開かれたメルコスル臨時首脳会合でベネズエラの加盟が正式に認められたことである。ベネズエラは2006年7月にメルコスル加盟の議定書に署名したが、チャベスへの拒否感が強いパラグアイの国会が承認手続を遅らせてきたところ、6月の前大統領罷免騒動をきっかけにメルコスルはパラグアイの参加資格の一時停止を決定。この政治的間隙を捉え、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイの3ヵ国はベネズエラの加盟を認めた。数字の上では、メルコスルは5ヵ国で人口は2億7千万人、国内総生産は3・3兆ドル規模で、世界5番目の経済圏となるが、「国有化政策を進めるベネズエラの加盟は、メルコスルの国際社会での信頼を損ないかねない」(8月6日付「朝日」)。もつとも域内貿易の観点から見れば、ブラジルとアルゼンチンの両国にとつては人口2000万のベネズエラの消費財市場はかなり魅力的な市場になろう。
6. 中国の南米諸国に対する経済外交は引き続き活発である。温家宝首相は、南米歴訪最終日の本年6月26日に、チリの国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会本部で演説し、その中で「南米との農業貿易額を現在の2倍の400億ドル超に引き上げたい」そのうえで「南米諸国と農業協力を深め、50万トンの緊急食糧備蓄を設けたい」と訴えたと報じられている(6月29日付「日経」)。中国の狙いは、明らかに、南米からの食糧調達枠組みを作り対米依存を下げることにある。中国は従来から南米の鉱物資源の確保に力を入れてきたが、加えて食糧確保に注力していることが窺われる。中国の動きについては、引き続き注意を要する。
                  (了)


政治ノート・宇治敏彦

「神風」頼みでは困る
核コントロールに国民の叡智を
安保政策研究会 理事 宇治 敏彦
 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故の原因を調べてきた
4つの調査委員会の報告書が出揃った。政府、国会、民間、東電の4事故調だ
が、事故原因についてはそれぞれ見解が微妙に違っていて、引き比べて読むと、
どれが本当の事故原因であったのか、逆に分からなくなってくる。すなわち@
大津波に対する東電の緊迫感、想像力が欠けていたことが深刻な原発事故を生
じさせた(政府事故調)A原子力規制当局が電力会社の虜(とりこ)になって
事前に対策を立てなかった「人災」だった(国会事故調)B津波による電源喪
失で機器が動かなくなった(民間事故調)C「想定外の大きな津波」が原因で、
津波の想定が甘かった(東電事故調)、といった具合で、「人災」ならば「誰(あ
るいは誰たち)の対応が大事故を招いたのか」をはっきりさせるべきだし、「想
定外」ならば「事故責任は直接問われない」ということなのか、などなどの疑
問が残った。
 以前、民間事故調査委員会の北沢宏一委員長(科学技術振興機構顧問)と個
人的に話していたとき、同氏から「それでも元定の役(蒙古来襲)と同じよう
に“神風',が吹いたのですよ」といわれた。2011年3月11日、東日本大
震災が発生した時、福島の東電第1原発付近では中通りから浜通り方面へと西
風が吹いていた。もし風向きが逆であったら、福島県内の放射能汚染は何倍も
ひどい状況であったろうというのである。
 「もう一つの神風もあったのです」と北沢氏はいった。「トモダチ作戦で救援
にやってきた米軍関係者が一番恐れていたのは、福島第1原発4号機建屋のプ
ールに保管されていた使用済み核燃料のことでした。大きな余震があれば、プ
ールが壊れ、燃料が丸裸になってメルトダウンが起きることが想定されたから
です。幸いプールが壊れるほどの余震はなかった」
 「風向き」と「余震の程度」。その2つの神風のお蔭で、より大きな放射能被
害を防げたというわけだが、このうち風向きは自然現象なので、まさに僕倖だ
ったかもしれないが、使用済み核燃料プールのほうは「神風まかせ」というわ
けでなく、地震や津波に耐えられるものにしておくことが東電の責任であった
はずだ。
 6月にトリニダード・トバゴで開催された世界新聞編集者協会(I PI)の
年次大会に参加したさい、現地で手塚義雄大使から中南米情勢を聞く機会があ
った。そのとき大使のレクチヤアで「これは難問」と思ったのが、日本のプル
トニウム計画に関連したMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)のヨーロ
ッパからの輸送問題だった。MOX燃料を既存の原子力発電所で燃やすプルサ
ーマル発電は九州電力玄海原発、四国電力伊方原発などで採用されたが、安全
性の観点から反対論が日本内外に根強い。特に2009年春、ヨーロッパから
海上輸送されたときには、当時まだ野党だった民主党の前原誠司、原口一博両
氏をはじめ社民党の福島みずほ、重野安正氏ら20人近くの衆参両院議員が国
土交通省に対して「電力会社は安全に対する注意を十分におこなっていない」
との理由で輸送を承認しないよう連名で申し入れた。輸送ルートの沿岸国も一
斉に輸送反対を表明した。こうした反対運動は1999年、2001年のMO
X輸送時にも起きている。フランスのアレバ社で製造されたMOX燃料は、英
国輸送会社の武装した船によって日本に運ばれるが、ルートとしては@喜望
峰・南太平洋回りA南米回りBパナマ運河経由一の3通りがある。
 手塚トリニダード・トバゴ大使によると、パナマ運河を通るルートにはトリ
ニも参加しているカリブ共同体(CARI COM)の25か国がこぞって反対
表明したという。南米回りコースにはブラジル、チリ、ウルグアイなど8か国
が反対、さらに喜望峰・南太平洋回りにもオーストラリア、ニュージーランド
など15か国が反対といった具合だ。
 プルサーマル計画に必要なMOX燃料を全てヨーロッパから運ぶとなると、
あと10回ぐらいの海上輸送が必要といわれている。使用済み核燃料の保有量
においては米国(約6万1000トン)、カナダ(約3万8000トン)につい
で日本が約1万9000トンと第3位につけている。そのわりには安全性に十
分配慮していないのではないか、という声が米国などから出ている。米原子力
規制委員会では「MOX燃料を本格的に使用する前に、原子炉内で燃料がどの
ように振る舞うか十分なデータを取る必要がある」としており、米国の学者の
中には「安全性に関する十分な事前調査と実験を行わないと人間が政府や電力
会社のモルモットになる」と警告を発する声もある。米国の民間調査機関「核
管理研究所」が以前、プルサーマル事故について、通常のウラン燃料使用時に
比べるとがん死者が2倍以上になるとの試算をまとめたことがある。
 日本政府の基準は「9m落下テスト」「800度30分の耐火テスト」「8時
間の耐水テスト」など一応、国際原子力機関(I AEA)の基準に基づいてい
るが、これはもともと陸上輸送を前提にしたもので、長距離海上輸送を想定し
たものではないという政府の「脱原発」への路線はまだ中途半端だが、急がなければならないのは、
「想定外」といった言い逃れができないように、最大限の安全性確保に向けて、叡智を絞ることではないだろうか。

宇治 敏彦(うじ としひこ)
東京新聞、中日新聞相談役
特任論説委員




永田町幹竹割り・杉浦正章(クリックすると掲示板へ)

◎自民「臨時国会解散」へデスマッチの態勢
          杉浦正章
 民主、自民両党党首選挙の動向と政局の展開は、相当頭を使わなければ解けない。あえて確実な輪郭だけを描けば、代表に選出された首相・野田佳彦が幹事長・輿石東を留任させてあわよくば解散先延ばしを狙って“仕掛け”をし始めたことだろう。これに対して自民党総裁候補らは23日ほぼ「先延ばし絶対阻止」で足並みを揃えた。ここに来て議員票を軸に俄然有利に展開している安倍晋太郎はもちろん、石原伸晃、石破茂の誰がなろうと、解散に追い込む姿勢は整っている。公明党代表・山口那津男も野田の姿勢を「墓穴を掘る」と警告している。結局は野田と自公両党のデスマッチへと移行する。一方で、全国紙は早期解散と引き替えに重要法案成立要求で足並みを揃えるだろう。朝日はその先頭を切って22日付社説で「何よりも、政権交代時のマニフェストを裏切る形で消費増税を決めた事実は重い。できるだけ早く国民の審判を仰ぐべきなのは当然のことだ」と主張している。こうした状況下で野田が臨時国会解散を逃げ切れるかどうかだが、まず逃げ切れまいと見る。
 “面従腹背”の輿石を野田がなぜ続投させるかだが、選挙敗北を覚悟した様子がうかがえる。なぜなら顔を見ただけで民主党への投票に拒絶反応が生ずる輿石を選挙の顔に使うと言うことは、選挙を投げている証拠だからだ。その代わりに優先しようとしているものは何かというと、党分裂の回避だ。選挙対策を最優先マターから外してまで、分裂を回避しなければならないという深刻な状況が民主党内に存在しているのだ。
 民主党はこれ以上の離党者が出れば不信任案が成立してしまうという瀬戸際に立たされている。「大阪維新の会」の新党に合流する3人を除くと、国民新党を加えても239人の過半数割れまで9人となっている。党内では原口一博を先頭になお10人前後が離党のタイミングを狙っているのだ。これを食い止めるために必死の人事を行おうとしているのが野田の姿だ。そこには「国」はなく「党」しかない。輿石は同日選挙論者で3党合意にもことごとく反対してきており、今度の続投は狡猾にもこれを“活用”しようというものだ。そして新体制で、できれば解散の先延ばしをしようというわけだが、解散をめぐる政局の構図を、一幹事長人事で急変させることは簡単ではない。
 野田は、自民党が問責決議を可決したことにより「近いうち解散」がチャラになったと言わんばかりの発言を繰り返し始めている。しかし首相が政治のキーポイントで行った“約束”がそう簡単にほごにできるかというと、甘いのだ。民主党内の分裂回避という全くの党内事情によって公党間の約束を撤回すれば、政党史上まれに見る「虚言首相」となる。党内からも疑問の声が上がり始めた。政調会長・前原誠司は23日のNHKで「麻生政権をみても、『先延ばしすればそれでいいのか』というと、それで議席を減らす場合もあるのでタイミングはあると思う。それ以上に赤字国債発行法案と衆議院の1票の格差の是正を与野党で議論し、結論を得ることが大事だ」と述べたのだ。明らかに赤字国債、定数是正の両法案と引き替えに解散へと進まざるを得ないという“憲政の常道”を述べたのだ。
 自民党は23日、誰がなっても早期解散を要求する態勢が整った。候補の中でこれまでただ一人石破が「解散権は首相の専権事項」などと野田が喜びそうな妥協の姿勢を見せていた。これは理屈に走る石破の悪い癖だ。さっそく党内あちこちから「全党が早期解散・総選挙に追い込もうと目の色を変えているときに評論家やってんじゃない」(党幹部)との反発が生じた。まずいと思ったか23日のNHKで石破は「自民党は政権を担わなければならず、どうやって早く解散させるかを考えるのは当たり前のことだ」と軌道を修正、早期解散要求に転じた。
 その石破は総裁選の第1回投票でトップになることは確実だが、国会議員の人望がなく、総裁に選出されるかどうかは全く混沌としている。候補の競り合いの結果、1回目の投票で石破が250票の過半数をとれる可能性は極めて少ない。多数派工作での石破の議員票が現在40票前後だから地方票で3分の2の210票以上を取らなければならないが、まず無理だ。そうなると2回目の議員だけによる決選投票に持ち込まれるが、56年ぶりの逆転の可能性が出てきているのだ。1956年の自民党総裁選挙で1位の岸信介が逆転敗北を喫したのと同じだ。上位2名による決選投票が 行われ、2,3位連合の密約が石橋湛山と石井光次郎の間で結ばれていた結果、2位だった石橋が逆転当選を果たしたのだ。安倍が2位となる公算が強まっている。その場合は3位の石原票が安倍に流れる可能性が高い。石原が2位の場合は安倍の票の大半は石原に向かうと見られる。したがって石破が逆転敗北の可能性が出てきているのだ。石破が勝つには地方票を大量に獲得して過半数を1回で制するか、過半数に迫って議員票に雪崩現象を起こすかだが、これも容易ではない。いずれにしても総裁選後は、新総裁が早期解散に向けて“突撃”する形となる。輿石では臨時国会は全く動かない。解散のないままでは通常国会も動かない。状況は野田が「近いうち解散」の言質を引きづり出された政権行き詰まりの構図といささかの変化もない

◎「衆愚の選択」で維新の大量進出を許すな
 この国ほど選挙の下手な有権者がいる先進国は少ない。ガバナビリティの基本がなっていない。毎回五割を超える浮動票が「風」を起こして、国の政治の基礎を作ってしまう。とりわけ小選挙区制になってからその傾向が著しい。民主党に308議席を与えた結果は3代にわたるポピュリズム志向の首相による政治の混迷である。その浮動票が今回は紛れもなく日本維新の会に向かおうとしている。政治への飽くなき野望を抱く大阪のポピュリストが大量の“維新ベビーズ”を登場させようとしている。新聞は発行部数への影響を考慮して書かないからあえて書こう。有権者は「衆愚の選択」をすべきではない。もっと熟慮の上の「知的な投票行動」に出るべきだ。
 世界有数の知的水準を誇る国にしては有権者の質が悪すぎるのだ。質の悪さは何が作り出すのかと言えば、政治への無関心だ。その無関心が“にわか勉強”で投票行動に出るのが浮動票の本質だ。そしてにわか勉強をする先生がみのもんたに象徴される低レベルの民放ニュース番組だ。司会者とコメンテーターの質が悪すぎる。ことあるごとに政治に「安易な駄目」を出す。問題なのはもんたが駄目を出すとコメンテーターらが付和雷同するのだ。事前の打ち合わせがある証拠だ。この民放テレビの「駄目出し」に、世界有数の知的水準にあるはずの有権者、大学を出たはずの家庭の主婦らが何の批判もなく乗ってしまうのだ。
 今の民放テレビによる“床屋談義”のはやりは「何も出来ない政治」だが、それほど駄目な政治だろうか。ホワイトハウス詰めの記者時代にパーティーで米政府高官から「日本は長寿国だが、長寿は政治の総合芸術だ」と褒められたことがある。たしかに日本は世界もうらやむ長寿国であり、原発がゼロになったり、馬鹿な指導者が戦争を起こしたりしない限りこれは継続するだろう。これは戦後の自民党政治がとやかく言われながらも、大局においてはかじ取りを誤っていないことを物語る。しかし、3年前からその傾向は変わった。民主党政権が虚飾のマニフェストを基に内政・外交に渡る失政を繰り返したのだ。失政の中でも最大かつ許しがたい失政は普天間ではない。3.11大震災復興の驚くほどの対応の遅れと、原発事故への判断ミスだ。民主党に投票した被災者は泣くに泣けない状況であろう。
 浮動票に流れがちの衆愚は、自民党政権の泥酔蔵相が象徴する政治の弛緩に嫌気をさして民主党を選んだが、3年かけてこれも大失敗であると気付いた。さて次は何処に投票するかと考えれば、大阪で威勢のいい政治家が旗を揚げた。政治の現状を批判して歯切れがいい。「こっちに投票してみるか。みのもんたも政治の現状を嘆いているし・・・」というレベルの錯覚が維新への雪崩現象を起こそうとしているのだ。世論調査の出方を分析すれば、確実に民主党が食われる流れとなって来ている。
 翻って大阪のポピュリスト橋下徹が、既成政党に取って代われるほど立派かと言えば、とんでもない食わせ者だと思う。まず、自分が立候補せずに党首となり、市長と兼務するという。国政を馬鹿にするにもほどがあるといいたい。「遊びに行く時間を削れば兼務できる」という程度の認識で国政に参与できると思っているのだ。タレントのタレントたるゆえんだろう。定数問題が国会で焦点になれば、いきなり「定数半減」を唱える。経費削減のためだというが、もとより実現は不可能だ。それよりも筆者に言わせれば維新の会が維新ベビーズを80人当選させたとしよう。国会議員は一人年間1億円の国費がかかる。歳費、立法調査費、文書通信交通滞在費、秘書給与、1人当たりの政党助成金などを合計すれば1億円余だ。党首が国政の場にいない烏合の衆の誕生は、80億円の無駄遣いになるのは必定だ。民主党に308議席取らせて、3年間で1000億の国費を使った。このうち小沢チルドレン約100人に300億円を使ったが、これに次ぐ無駄遣いになることは目に見えている。
 橋本は自民党総裁候補らからも袋叩きにされ始めたが、さすがに維新八策なる公約の欠陥は選挙に不利に働くと分かったとみえる。今度は矛先を取って付けたような政策批判に転じた。おそらくブレーンの堺屋太一らの入れ知恵だろう。「尖閣に警察常駐の機会を逸した」と先の中国人上陸への対処を批判したり、「なぜ柳条湖事件の時期に国有化したのか」と尖閣国有化批判を展開し始めた。「議席半減」は荒唐無稽(むけい)ではあるが何も知らない衆愚に対してはインパクトがある。しかし政策批判は常識的であり、共産党の批判と同じで誰も聞いていないし、聞いても感心しない。いずれにしても、再び「風」による選挙で我が国の政治は大きく揺らごうとしている。小沢チルドレンに代わって、維新ベビーズが大量に進出しかねない。この国難のときに2度にわたる衆愚による国政へのパンチは、相当の効き目となって現れるだろう。政治の混乱と不信を頂点に至らしめるだろう。浮動層よいいかげんに目を覚ませと言いたい。
 


◎野田、原発支持・反対両派の支持を喪失:閣議決定回避
 ぺらぺらとかんなくずが燃えるようによくしゃべるー首相・野田佳彦の「原発ゼロ」閣議決定撤回の言い訳を聞いてそう思った。レームダック化した野田には何を言ってももう発進力がないのだ。あの「最低でも県外」を撤回した首相・鳩山由紀夫とそっくりになってきた。エネルギー政策という国の命運を分ける重要問題を選挙対策に活用しようとして、失敗したのだ。これで国論を2分した「原発ゼロ」問題は、なりふり構わず「ゼロ推進」にまい進する朝日新聞が落胆した分だけ、国家にとってプラスの要素になった。参考文書扱いでは、そのうちに「ゼロ」は忘却の彼方へと消える。
 哀れをとどめたのは国家戦略相・古河元久だ。方向音痴にも「ゼロ」に向かって突撃、最後にはしごを外された。閣議決定を当然のことと公言していただけに、みっともなさも度を超えた。「過去にも閣議決定しなかった問題はある」だけが精一杯の言い訳だが、言い訳になっていない。閣議決定するかどうかで重要度が決まる問題で、しなかったと言うことは致命的でもある。何が背景にあったかというと想定外の経団連会長・米倉弘昌の国家戦略会議議員辞任の動きだ。もちろん福井、青森両県の反発や、米国からの強い圧力もあったが、直接的には「ゼロ」で怒り心頭に発した米倉が辞任をほのめかしたことにある。米倉辞任となれば新聞テレビはトップ扱いだ。代表選挙を前に野田は何をやっているのかということになる。
 このため急きょ方針を転換して、野田周辺が米倉をなだめに回ったのだ。米倉が記者会見で「いちおうは原発ゼロ方針を回避できたのかなと思う」と発言したのは、マスコミの報道だけによるものではない。官邸筋の“慰撫工作”があったのだ。政治に邪(よこしま)な思惑が入ると、まず最終的には失敗するものだが、野田の選挙対策の思惑は完全に外れた。国論2分の原発問題で当初野田は福井原発の再稼働を実施して、原発推進論の国民の支持を取り付けた。ところがあの邪の頂点を行く前首相・菅直人と接近した頃から方向が変わった。こともあろうに菅の忠告を取り入れてデモ隊代表と会談したり、原発ゼロの課題の検討を指示したりし始めたのだ。
 なぜ野田が菅に接近し始めたかというと、菅一派の離党を食い止めて衆院の過半数を維持することと、代表選の票が目当てだ。国家のエネルギー対策という問題を、卑近な自らの政治的な目的達成のために使おうとしたのだ。しかし「米倉辞任」がこれを食い止めた。「原発ゼロ」の閣議決定が見送られて、野田はゼロ派の国民の支持まで喪失する結果を招いてしまったのだ。国民の推進派と反対派双方の支持を失うというあぶはち取らずの結果を招いたことになる。まさに貧すれば鈍するを地で行ってしまったのだ。はしごを外されたのは原発ゼロにまい進してきた朝日も同じだ。20日付の社説で「まことに情けない」とおいおい泣いている。戦後の政治史は60年安保反対以来「朝日のキャンペーン」の逆を行くことが「国の繁栄」の源であった。御同慶の至りである。
 野田は21日の代表選挙で再選が確実となったが、選挙期間中の野田と他の候補との対立はまるで水と油のような傾向を見せた。とりわけ原口一博は「今回の代表選は政界再編のステップ。むりむり民主党をまとめるためではなく、変わってしまった民主党にサヨナラを告げる覚悟を決めている」と述べ、代表選の結果次第で離党を検討する考えを示した。選挙に出て負けたから離党するというのはあきれ果てた暴挙だが、民主党はしょせんその程度の政治家集団であったのだ。衆院で13人が離党すれば民主党は過半数を割る。退場必至の政権政党の代表選挙などは全く面白くもないが、面白いのはこの一点に尽きる。さらなる分裂となるかどうかが焦点だ。過半数を割れば臨時国会冒頭で不信任案が成立する。野田は否応なしに解散に追い込まれるからだ。
 野田は19日も「近いうち解散」の約束について「言ったことは事実で、言葉は重たい」としながらも、「野党として行政府に対する異議申し立ての一番の手段は内閣不信任案と問責だ。その武装解除をするという話があった中での会話だ」と強調した。まるで「近いうち」を見直すかのような発言だ。しかし3党合意の実態を曲げてはいけない。不信任や問責を出さない代わりに野田が「近いうち」を約束したという構図には全くなっていなかった。野田が「消費税を成立させるためには解散でも何でもするからお願い」と言うのが3党合意の構図だ。今になって問責が出たから解散の約束を反故というのは全く理屈が通らないし、首相たるべきものがこじつけの方便を使ってはいけない。いずれにしても臨時国会で解散に追い込まれる運命には変わりはないだろう。やはり論語の「巧言令色鮮(すくな)し仁」の教えは、人間の特性を看破したものであるとつくづく思う。

◎「原発ゼロ」で尖閣が中国領になる理由
 どこまでこの民主党政権は愚かでピントが狂っているのだろうか。今度は「30年代に原発ゼロ」を国際公約にしてしまった。国際原子力機関(IAEA)総会に外務副大臣・山根隆治を派遣して「ゼロ方針」を表明させたのだ。それも「原発に依存しない社会への道筋は必ずしも一本道ではない」などと矛盾する態度を表明したのだ。さすがにIAEA事務局長・天野之弥が「東京電力福島第一原発事故から18か月を経て、原子力が多くの国の間で引き続き重要なエネルギーの選択肢であるのは明らか」「各国が自国への影響を考えている」と異例の懸念を表明したほどだ。このままでは野田は、今月下旬の国連総会でも得々と原発ゼロを強調するだろう。ほくそ笑むのは、経済、外交両面で日本“蹴落とし”を狙っている中国と韓国だけだ。中国代表は総会で日本とは真逆の原発増設推進の方針を表明した。総会の空気は原発推進を確認した形だ。問題の核心は首相・野田佳彦に「レームダック政権は国家の重要政策で選挙目当てだけの政策をとってはならない」ことが分かっていない点だ。政権交代すれば、自民党は直ちに方針転換することだろう。国際公約化は日本自身の信頼喪失に直結するのだ。
 歴史のイロハを知らなければならない。エジプト、ギリシャ、ローマ、中国など大国も東南アジアの小国も国家興亡の歴史をたどれば、指導者や国民が軍事安保も経済安保も「天から降ってくる」と平和ぼけした時点から始まる。平和ぼけによって虎視眈々と狙う外国新興勢力から領土を蚕食され、その土台を食い荒らされて、朽ち木のように倒れるのだ。欧州の帝国主義勢力に蚕食され、日本にとどめを刺された清朝が倒れたのは117年前だ。李朝が日本に併合されたのは100年前だ。いずれも国家国民の疲弊が原因であることは歴史が証明している。日本が北方領土を国家疲弊の極致の中でソ連に取られたのは67年前だ。
 国家百年の計で展望すれば「原発ゼロ」で日本は国力が減退して、尖閣諸島などはもちろん中国の手に落ちる。国土などは隣国の蹂躙(じゅうりん)されるがままとなる。国家・国民は疲弊の極致に陥り、失業者が街に溢れ、無気力、無抵抗のまま日本は老衰状態に陥る。原発推進で興隆する中国、韓国が先進国となり、日本は指をくわえる気力も失せて、戦争直後にマッカーサーが指摘したとおりの4流国家に転落する。中国、韓国の援助にすがり、その目の色をうかがって、こそこそと生きる小動物のような国になるのだ。国家というのは興亡の歴史だ。原発ゼロは「亡国」の始まりなのだ。
 日本のよすがとしている超精密産業が電力の安定供給なしに維持できるのか。現在ですら化石燃料の輸入などで年間3兆もの国富が流出している。30年代に原発をゼロにするための投資は120兆円が必要である。コスト、技術の両面で代替実現の可能性が薄い自然エネルギーの導入などまだ海の物とも山の物とも付かないのである。あやふやなものに国家の命運をかけることは責任ある政権の決してやってはいけないタブーなのだ。
 国民生活への影響も甚大となる。国民生活を守るべき政府が「原発ゼロ」を奇貨として「欲しがりません勝つまでは」と、“窮乏政策”を強いるからだ。電気料金が2倍となれば消費増税に匹敵する増税に国民はあえぐのだ。かすかす切り詰めて2万円払っている所帯が4万円を支払うことを受容できるのか。消費税増税に加えての実質増税である。中小企業も生存権を脅かされる。廃業、倒産が続出して、生き残りをかけて企業の日本脱出が展開される。国内総生産は15兆円も減少する。失業者は300万人以上に達して街に溢れる。企業はストライキの続出で社会不安はその頂点に達する。
 ところが首相・野田佳彦はそうなってもいいと発言しているのだ。なぜなら新エネルギー政策について「将来的な原発の稼働ゼロは国民の覚悟だ」と強調しているのだ。電気料金が倍増しようが、亭主が失業しようが、戦前戦後の1時期のように、裸電球の下のちゃぶ台に親子仲良く爪に灯を点すような生活をする覚悟があると判断しているのだ。いくら強靱な精神力と気力を持った国民でも、政府のこの“棄民政策”には敗れる。やる気をなくす。そうして亡国の道を日本はたどることになるのだ。そうなって初めて尖閣諸島は中国の手に落ちるのだ。竹島を日本が奪還することが不可能なように、国家が健康体であれば領土を奪われることはないのだ。
 財界も激怒の頂点にあり、内外のあまりの反発の強さに首相・野田佳彦はその「革新的エネルギー・環境戦略」の閣議決定を避ける方針だという。となれば政府は「ゼロだ。ゼロだ」と叫ぶだけのオオカミ少年ということになる。方針はもともと法的なバックアップがなく、ゆるやかなものであったが、ますます“いいかげん”なものとなった。この大ぶれの象徴するものは野田政権には国家からエネルギーの根幹を除去したらどうなるかと言う視点などゼロだったということである。そこにはただひたすら目先の選挙しか考えない大衆迎合路線だけがある。
 幸いにも自民党総裁候補・石破茂が米国の上院議員ジェイムズ・ポール・クラークの発言を引用して「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の時代のことを考える」と「原発ゼロ」を批判している。他の総裁候補も全員が批判している。すべてのマスコミが野田の方針を「選挙対策」と看破している。小手先細工では民主党凋落の構図は変わらないと断言しておく。有権者は亡国の政策を推進する戦後最悪の政権にきっぱりと見極めをつけ、軽薄なる大阪のポピュリズムにも惑わされず、自民党中心の政権を選択するべきだ。それしか地獄への道を回避する方策は無いと肝に銘ずるべきだ。


◎中国に尖閣で“軍事衝突の度胸”はない
「尖閣諸島についてのアメリカの政策は明確で、当然ながら条約義務を我々は遂行する」と表明した。17日の米国防長官レオン・パネッタによる尖閣への安保条約順守発言は、むしろ中国政府に向けたものだ。「軍事行動に出るなよ」と強くけん制しているのだ。中国は国内のデモを容認し、漁船1000隻を尖閣周辺に押しかけさせ、露骨な対日圧力を展開しているが、これを日米相手の武力衝突にまで発展させる度胸はない。したがって18日のデモを潮時に10月半ばの政権交代の共産党大会に向けて事態の収拾・沈静化を図るだろう。日本政府も国民も過剰反応する必要はない。中国政府の国内対策の“お手並み”と、かえって政権が自分で自分の首を絞め窮地に陥らないかどうかを“望見”すればよい。
 パネッタは訪中を前に日米安保条約上の義務を果たす方針を表明すると同時に「主権が対立する紛争ではどちらか一方の肩を持たない」とも表明した。当事者同士の紛争解決が基本だというのであり、これは仲介者の立場だ。米国にしてみれば中国をけん制しつつも、米中戦争に発展させる意図はない。あくまで日本、沖縄、尖閣諸島、台湾、フィリピンと続く第1列島線で中国の進出を抑止する基本戦略を維持し続けるのだ。安保は天から降ると考える一部のマスコミと国民は尖閣防衛と対中抑止力のためのオスプレイ配備に反対しているが、いいかげんに国際関係の厳しさを認識し直せと言いたい。
 政権交代期でかってなく政治的な動揺を来している中国共産党政権は、とりあえず野田の尖閣国有化閣議決定をチャンスととらえ政治混乱のエネルギーを尖閣問題に転じさせようとしている。国家主席・胡錦濤は9日の野田との立ち話し会談で尖閣国有化に強く警告したといわれている。それにもかかわらず11日に野田が国有化を閣議決定をして、国内的には面目丸つぶれとなった。それがデモ容認と、かつて南沙諸島で成功した1000隻漁船団による対日脅迫戦術の展開に直結しているのである。1000隻も“出撃”させれば、なかには“暴発船”も出る事が予想されるが、日本側の対応を見極めて“政治介入”の隙を作ろうとしているのだ。狡猾と言えば狡猾だが、見え透いていると言えば見え透いているのだ。
 中国政府内部は政権移行期であり、裏舞台での政争は激化の一途をたどっている。国家副主席・習近平が15日まで2週間にわたり姿をくらませるという異常事態まで発生している。パネッタは18日に国防相・梁光烈、19日には習近平と会談する予定だ。18日は、くしくも満州事変の発端となった柳条湖事件当日であり、バネッタは半ば官製デモの旋風が吹き荒れる事態を目の当たりにすることになる。当然尖閣問題での中国側の自制を求めることになろう。パネッタは日中双方に沈静化を促す事実上の仲介者となることが確実だ。こうした状況下において中国側が尖閣を政治利用することはあっても軍事行動に出ることはまずあり得ない。
 中国政府にとって何より困るのは、共産党政権への不満となって跳ね返ることだ。デモをあおり続ければ貧富の格差を起点とする国内暴動に発展しかねない。デモ隊が毛沢東の写真を掲げ始めたのは昔の平等社会から現在の不平等社会への不満が驚くほど広がっていることを物語っている。官製デモもコントロールできているうちはいいが、できなければ共産党1党独裁批判へと向かうのだ。まさに政府によるデモ扇動は両刃の剣に他ならない。共産党大会に向けて中国政府は収拾を図らざるを得ないであろう。
 日本政府はひるむべきではない。領海内侵犯は阻止することはもちろん先鋭化した“活動家漁民”の上陸も一切許してはならない。短慮で馬鹿丸出しの核武装論者・石原慎太郎が火をつけた尖閣国有化路線に乗った以上、政府はここで1歩も引き下がることはできなくなった。日本政府は南沙諸島のケースは対日戦略では通用しないことをはっきり示すべきだ。野田は国連演説で尖閣問題を主張し、中国の理不尽な行動を国際社会に訴えることに及び腰だが、どうせすぐに政権を去るのだ。最後くらいは国のためになることをすべきだ。中国は勝手に定めた領海基線の海図などを国連に提出、国連も受理している。中国は国連の場でも尖閣諸島の領有権を主張する外交攻勢に出るものとみられる。それにもかかわらず野田は国連演説で反論も、主張も、宣伝もしないというのでは首相たる資格はない。考え直すべきだ。


理事長 浅野勝人
                 ご挨拶 
私どもの一般社団法人「安保政策研究会」がホーム・ページを開設することといたしました。安保研は、去年7月に発足したばかりの研究グループです。定款の3条・「目的」は、アジア・太平洋地域を主な対象とする世界各国および国際間の平和に寄与することを目的に、安全保障政策全般についての調査、研究、分析する役割を掲げています.
発足以来、概ね月1回のペースで、メンバー(理事)が集って研究会を開いてきました。形式は、報告者による約1時間のブリーフィングを基に約1時間の自由討議です。例えば、「外交とインテリジェンス」「米軍安保政策シフトの転換が意味するもの」「24年度防衛関係予算と問題点」などをテーマに議論をしてまいりました。もちろん、外交は内政の延長線上にあるという原則を基本に「政局の情報、分析、見通し」を重視しております。
メンバーに、かつてメキシコ大使としてペルー日本大使館占拠事件の解決に貢献した元韓国駐在大使・寺田輝介氏や日本政府のイラク政策を担当して、自衛隊イラク派遣を無事故で終了させた安保政策の第一人者・柳沢協二氏らがいます。また、折に触れ、適宜、現役の方々を講師に招いて最新の情報にも接する努力をしています。従って、毎回、貴重な討論を続けているのですが、言いっぱなしに終わっているのが実情です。
そこで、この事態を少しでも解消するため、近く「安保研リポート」を発行することにしています。そんな中、毎朝(月 〜 金)「今朝のニュース解説」を送信し、今や100万件を超えるアクセスの実績をもつ杉浦正章氏から、直近の理事会で、安保研のホーム・ページを立ち上げて、「いい情報、的確な分析」を提供してはどうかという提案がありました。全員が賛成。これが、今日をむかえた経緯(いきさつ)です。


安保研メンバー
理事長   浅野勝人
      元内閣官房副長官・元外務副大臣・元防衛政務次官・
元NHK解説委員
副理事長  王 倹中
      中国人民対外友好協会 理事、企画委員長
常務理事  寺田輝介
      元メキシコ 及び 韓国駐在特命全権大使
      前フォーリン・プレスセンター理事長
常務理事  柳沢協二  
      元防衛庁官房長・元内閣官房副長官補

理 事   宇治敏彦
      東京新聞相談役・元東京新聞論説主幹
理 事   杉浦正章
      政治評論家・元時事通信編集局長
      ニューヨーク及びワシントン元特派員
監 事   石井 満
      古銭研究家・元外務省大臣官房報道課
理事(研修生) 高柳淳子  元愛知県議会議員
理事(研修生) 中村竜彦  豊橋市議会議員
理事(研修生) 北角嘉幸  衆議院選挙候補者 

 


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