パルスオキシメータ:SpO2高所での目安

Q 高いところでの基準値はあるの?

A. 高度を上げていくと、外界の酸素レベルも体の中の酸素レベルも下がってきます。  (「トレッカーの皆さんへ:急性高山病について」の最初の方を参照。)

   当然SpO2は低下します。
もう一度確認しますが、平地ではSpO2≒100%でした。これが例えば80%に下がるとすると、それはあなたの動脈に含まれる酸素が、平地での静脈レベルに近くなっていることを意味します。
   高所での下がり方の程度は、高度の稼ぎ方によって違いますし、個人差(もともとの呼吸機能や馴化の違い)も大きいものです。

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 実際はどの程度でしょうか。例えば富士山山頂ではどれくらいなのでしょうか?
 面白いデータがあります。いまはもう閉鎖されてしまった、富士山頂測候所の方からご提供いただいたものです。下から歩いてあがってきた登山者の頂上での測定値です。

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 理論的にいえば、富士山頂くらいの標高の場合、SpO2は馴化ゼロの時で70%をきる程度、うまく馴化きれば90%ちょっと、と予想されます。上の図で見るように、実際にも60%台から90%台にバラバラに分布します。90%台後半の方は意識して過換気を行っているのでしょう。
 で示したのは前夜8合目で前泊した登山者です。が当日下から上がってきた登山者。どうも前泊の効果ははっきりしませんね。特に高齢者では(75歳の方を除くと)SpO2が低めになっています。また年齢での差もはっきりしません。ここには示しませんが性差もありません。
 全体の平均で、SpO2は81%くらいです。ばらつきが大きく、標準偏差は8.2%もあります。高所でのSpO2の目安はこういうデータを積み上げていくしか方法がありません。


     エベレストのトレッキングではどうか?
 下図に、エベレストのクンブー谷のトレッキングを例にして示します。以下に示す図表は、日本の代表的なトレッキング会社各社と高所医学の専門家などで構成されている「高所低酸素血症研究会」がその各社主催ツアーに参加された方々のご協力を得て作成したものです。酸素を吸ったり途中で動けなかったりした方のデータは除いてあります。つまり普通に動けた方々だけが対象です。
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 下界ではSpO2が90%を割ると酸素吸入も考える、80%を下回ると危ない、と考えるのが普通ですから、エベレスト街道のトレッカーはおどろくべき低酸素状態で行動していることがわかります。

 上の図は酸素を吸うことなく、目的地まで行けた人たちのデータのみを集計しているので、各標高において平均値より低い人でも、実際は問題なく登れていたはずです。平均値よりどれくらい低い数値までよしとするかが問題ですが、「標準偏差の2倍まで」としましょう。各高度で平均値から標準偏差の2倍を下回っている方は馴化が追いついていないと考えられます。危険値として示した値、図で緑の線で示したのがそれです。これを下回るようだと標準的とはいえません。
  これをもとに、「高所低酸素血症研究会」は以下のような高所トレッキングでのSpO2の目安を勧告しています。参考にしてください。
  
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 もちろんSpO2でわかるのは、どれだけ体に酸素が取り入れられているかであって、体調のすべてを代表しているわけではありません。自覚症状や他覚症状も合わせて体調を判断しなくてはなりません。

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